2006年11/12月

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1.国際会議

 さる10月〜11月に、以下の国際会議が開催された、

有限責任中間法人オゾン層・気候保護産業協議会の大川事務局次長から参加報告書を頂いたのでご紹介する。

1.1 第18回モントリオール議定書締約国会合

 第18回モントリオール議定書締約国会合が10月30日から11月3日までインドのニューデリーで開催された(注1)。インド門が霞んで見えず、人の多さと貧困を痛感しながら会場の首相会議場へと向かう毎日であった。会議では、先進国の全廃後の不可欠用途問題、途上国での2010年の全廃を前にした問題等で議論が行われた。特に先進国のCFC-MDIと臭化メチルの不可欠用途申請の数量に関して交渉が続き、終了したのが最終日の22時であった。今回の会議では、発言の中にHCFCの単語がこれまでになく多く飛び交う印象を受けた。モントリオール議定書は来年20周年を迎えるが、次の10年でのオゾン層関係の挑戦的な姿(テーマ、組織等)は何かを議論する議題が、先の公開作業部会でカナダから提案され、今回も議論した結果、2日間のワークショップ開催が決まった。以下、結果を概略する。

(1)不可欠用途申請

    CFC-MDI  米国とEUの申請が認められた。(日本はこの用途は全廃しており申請していない)

    ロシアからは宇宙航空用部品洗浄CFC-113の申があり例外的に認められ、2008年以降分は来年再度評価される。

    臭化メチルでは日本の申請量が認められた。

(2)途上国の全廃に伴う問題

    CFC-MDIの必要量を確保すれば遵守問題が生じ、対応するCFC不足となる問題→継続検討

・遵守に関連する在庫の扱い破壊、原料用途、輸出入などのケースでデータを基に評価

    途上国用CFC全廃の前倒し→意見まとまらず

(3)IPCC/TEAP特別報告書

    削減対策の更なる検討とHCFCの需給見通し、代替化の可能性についてTEAPに報告を求める

(4) n-PB

    EUから最近量が増えているとして、状況を次回報告するようにSAPとTEAPに求めた。公開作業部会でのTEAP報告では次の様に報告されている。EU;1,500t  日本;1,300t  米国;1,300t  中国;1,000t

(5)ワークショップ

開催日:2007年6月2日(土)〜3日(日)

◇場 所:ケニア/ナイロビ

◇テーマ:@オゾン層の将来の評価、解析

     AHCFC全廃への挑戦

     B不法貿易と遵守

     Cその他のODSの規制、全廃

     D2010年以降のモントリオール基金

     Eその他(管理、組織、他の環境条約)

(6)来年の会議予定

・第27回公開作業部会 6月4日〜8日 ナイロビ

・第19回締約国会合  9月17日〜21日 モント

 リオール

1.2 COP12 & COP/MOP2

気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)及び京都議定書第2回会合(COP/MOP2)が11月6日〜17日までケニアのナイロビで行われた(注2)。世界三大花木の一つである「ジャカランダ」の咲き誇る自然豊かな景色を見ながら、日本では見かけないほどの古い車の渋滞による排気ガスの中を町外れにある国連事務所の会場へと通う毎日であった。会議では2012年以降の枠組みをどのようにするのかの話し合いが出来るかが注目されたが、2008年に京都議定書の見直しをすることで合意し、前進が見られた。また、全般的に炭素回収・貯留について緩和手段として期待する発言が多く、又アフリカ開催もあって、特にCDMの地域バランスを求める声も多かった。HFC等3ガス関係は2つの議題があったが、明確な結論もなく終わってしまった。会議の関連する内容を簡単に紹介する。

(1)将来枠組み

 このテーマは2つの条項が関係している

@議定書3.9条 先進国の次の削減目標と期間

A議定書9条  議定書の見直し

 途上国は@を楯に先進国のみの約束を主張し、先進国はAの見直しで途上国を入れようとして平行線が継続している。@については今年から特別作業部会(AWG)を設け対話を続けていて、今回もワークショップを含め1日半の会議が行われた。会議では次の結論を得た。

    AWGを2007年2回開催する。

    議定書の2回目見直しを2008年に実施する。

  2007年にはその範囲と内容について検討する。

(2)CDM関係

 昨年IPCCがCO2の回収・貯留(CCS)の報告書を出して以降、緩和手段としてCCSに期待する発言が多く、今回も強かった。その期待の先はCDMの利用でその可否が問われたが、CDM利用を進めることで合意し2008年にガイダンスを採択することになった。CCSの推進に関しては日本を含め概ね賛成であるが、途上国の一部が漏れの不安、環境への影響等で早期の推進に反対している他、EUは海洋貯留に関しては懸念を表明している。

(3)HFC等3ガス関係 

この会議ではHFC等3ガス関係の議題が2つ(@HCFC-22新設備に対するCDM活動、AIPCC/TEAP特別   報告書の扱い)が継続議題として審議された。両方の議題ともモントリオール議定書第18回会合の結果が紹介され、その後非公式協議が行われた結果次の様な結論となった。


@結論がでなかったことが了承された。

A2007年12月の会議に於いて、non-CO2のワークショップを開催することを確認、またモントリオール議定書側と連携を深めること

(4)IPCCからの報告

    2006年IPCCインベントリが完成し本に成った

    第4次報告書(AR4)の作成が最終段階にある。

  2007年11月の総会で承認、12月COP-13に提出

  第三次報告書を下回る安定化目標を

(5)来年のCOP-13の開催日と場所

 2007年12月3日〜14日

  インドネシアが立候補、事務局の審査が始まる

注1)「第18回モントリオール議定書締結国会合」

    主催:UNEP

    期日:2006年10月30日(月)〜11月3日(金)

    場所:インド/ニューデリー

2) 「気候変動条約第12回締約国会議(COPー12)及び京都議定書第2回締約国会合(COP/MOP2)」

    主催:UNFCCC

期日:2006年11月6日(月)〜17日(金)

・場所:ケニア/ナイロビ

<参考資料>

1) 日本政府代表団:「気候変動枠組条約第12回締結(COP12)及び京都議定書第2回締結国会合(COP/MOP2)」(2006.11.8)


<写真>COP12&COP2の会場

 

 

 

 



2.京都議定書目標達成計画の見直し

 京都議定書が定める温室効果ガスの削減目標は、日本の場合、第一約束期間である2008年〜2012年に90年比で6%とされている。この第一約束期間の開始が2年後に迫っているが、2005年度の温室効果ガスの排出量は90年比8%増であり、現状の対策では達成が困難な状況であるとされている。その目標の達成計画を見直す作業が政府の審議会関係組織で開始された。

2.1.京都議定書目標達成計画の策定

日本は2004年6月に京都議定書を批准したが、京都議定書発効(2005年2月16日)を受けて、「京都議定書目標達成計画」を2005年4月28日に閣議決定した。この計画は、京都議定書で義務付けられた温室効果ガスの削減目標達成に向けて政府が策定する計画であり、「地球温暖化の対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」の基づくものである。

2.2 計画見直しの検討

京都議定書目標達成計画においては、その実効性を確保するため、「2007年度に本計画の定量的な評価・見直しを行い、第一約束期間(2008年度〜2012年度)において必要な対策・施策を2008年度から講ずる」ものとされている。上記のような厳しい状況の中、第一約束期間開始を間近に控え、同計画の見直しは非常に重要となり、経済産業省及び環境省の関係審議会はその検討を開始した。

2.3    産業構造審議会における京都議定書目標達成計画の見直し

 産業構造審議会における京都議定書目標達成計画の見直しは、2006年10月25日に開催された「産業構造審議会環境部会第31回地球環境小委員会」で始まった(注1)。同会合では、見直しの背景、意義、検討内容・ポイント、検討体制等について、以下のように説明された。

(1) 検討の背景

・京都議定書の約束達成に向けて、政府は、「地球温暖化防止に関する基本方針」(1998年)、「地球温暖化対策推進大綱」(1998年、2002年)を策定し、地球温暖化対策を推進してきた。

・2005年には、「地球温暖化対策推進大綱」を評価・見直しを行った成果として、「京都議定書目標達成計画」が閣議決定された。同計画に基づき、現在、関係省庁が中心となって対策が進められている(図1)。

・他方、我が国の最近の温室効果ガス排出実績を見ると、2004年度が基準年比+7.4%、2005年度が基準年比+8.1%と、6%削減目標の達成は容易ではない状況にある。

・京都議定書目標達成計画においては、その実効性を確保するため、“2007年度に本計画の定量的な評価・見直しを行い、第一約束期間(2008年度〜2012年度)において必要な対策・施策を2008年度から講ずる”ものとされている。

・このような厳しい状況の中、第一約束期間開始を間近に控え、2007年度に如何なる評価・見直しを行うかは、今後の我が国の温暖化対策の在り方を示す観点から、非常に重要なものとなる。

(2) 目標達成計画見直しの意義

    2007年度における計画の評価・見直しについて、国民各層の理解を得つつ、6%削減目標を確実に達成する内容を持つものにするためには、如何にして経済や国民生活の活力を過度に制約することなく、実効性を有する温暖化対策を実現していくかとの視点が重要となる。

・このような問題意識の下、本小委員会において、2007年度の目標達成計画評価・見直しに向けた検討を行う。小委員会においては、如何にして「環境と経済の両立」を図るか、という観点から、実効性ある対策の在り方を検討する。

(3) 温室効果ガスの排出実態

・我が国の温室効果ガス排出量の排出実態を見ると、温室効果ガスの種類ごとに排出量増減の傾向やその要因が異なっている。

・我が国の排出量の8割以上を占めるエネルギー起源CO2の排出実態については、家庭、業務、運輸、産業等の排出源ごとに排出量の傾向等に特徴がある(表1)。

(4) 検討内容・ポイント

    このような状況に鑑み、本小委員会においては、2007年度の目標達成計画評価・見直しに向けても、例えば、以下のように、部門ごとにきめ細かな検討を進めていくことが必要である。

@家庭:

    冷房・暖房・給湯・動力等のエネルギーの用途別

    機器(家電)、住宅(建築物、システム)の別

A業務:

・事務所ビル・流通等の業態別

・業務用機器、建築物の別

B運輸:

・貨物・旅客の目的別

・自動車・鉄道等輸送形態別

C産業・エネルギー転換:

・業種別

・技術開発、規制等の政策対応別

D代替フロン等3ガス等(エネルギー起源CO2以

外の温室効果ガス):

・半導体製造時・ガス製造時等の排出量形態別

・排出削減のための設備別

(5) 具体的検討の進め方

@関連統計の分析、有識者・関係業界からのヒアリ

  ング

    実態調査等を通じた、部門ごとの排出量増減の実態についての把握、その要因の検証

    蒸気の区分を参考に、業種別・施設別等の可能な限り細分化された部門ごとに検討を進める。

    また、活動量、エネルギー原単位、CO2排出原単位といった要素ごとに定量的な検討を行っていく(例えば、機器の省エネ化がどの程度排出抑制に寄与しているか、産業の生産量増加がどの程度排増加につながっているか等)

A現行目標達成計画に規定されている約60の温

 暖化対策についての足下までの進捗状況の把握及

 び今後の見通しについての検証

B有識者・関係業界からのヒアリング等を通じた、

 追加対策の洗い出し及びその実効性の検討

    追加対策の検討に当たっては、@の実態把握の結果を基に、部門ごと、個々の機器・設備等ごとに実効性ある対策を審議する。

・また、各部門におけるベストプラクティス(先進的な取組)を明らかにし、それらの取組を広 範囲に展開・普及することができないかという視点に立って審議を進める。

(6) 検討体制

@中央環境審議会との合同開催

・温暖化対策に係る国民各界各層の異見を総合的に検討し、意見の集約を図るとの観点から、地球環境小委員会の審議については、原則、中央環境審議会地球環境部会との合同開催とする。その他関連審議会との連携も図る(図2)。

A自主行動計画フォローアップ委員会との連携・産業部門、業務部門の審議については、産業界の自主行動計画をチェックする「産構審・総合 ネギー調査会自主行動計画合同フォローアップ委員

 会」と、密接に連携・協力しつつ進めることとする。

2.4 政府の関係審議会における検討スケジュール

(1)産業構造審議会

経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会では、環境部会地球環境小委員会において、以下のスケジュールで検討を開始した(図3)。

・06年10月25日:第31回会合

・06年11月14日:産構審環境部会第32回地球環境小委員会・中環審第38回地球環境部会・合同会議(第1回)、今後の進め方等について審議(注2)

・06年11月〜07年春(フェーズ1):各分野の排出実態把握・分析、現行施策の進捗状況評価、追加施 策の検討を行う。部門毎の主査を中心に、有識者・関係業界からのヒアリング等を実施

・07年春〜12月頃(フェーズ2):追加施策を引き続き検討し、とりまとめる

・08年3月:「京都議定書目標達成計画」改訂

(2)中央環境審議会

環境大臣の諮問機関である中央環境審議会では、その地球環境部会において以下のようなスケジュールで検討を行う予定である。

・06年10月27日:第37回会合を第1回として、評価・見直し作業を開始(注3)

・06年11月14日:中環審第38回地球環境 部会・産構審環境部会第32回地球環境小委員会・合同会議(第1回)、今後の進め方等について審議(注2)

・06年11月下旬〜07年春:実態把握、進捗状況の評価、関連業界等へのヒアリング、対策・施策の見直しの検討

・〜07年6月:評価・見直しに係る中間報告のとりまとめ

・〜07年12月:評価・見直しに係る最終報告のとりまとめ

・08年3月:新・目標達成計画の閣議決定

 

注1)審議会環境部会(第31回)地球環境小委員会」 

・窓口:産業技術環境局環境政策課環境経済室

日時:06年10月25日(水)15:00-17:00       

・場所:経済産業省本館

・議題:(1)京都議定書目標達成計画の評価・見直しについて

(2)その他

・配布資料:

<資料1>議事次第

<資料2>委員名簿

<資料3>産業構造審議会環境部会地球環境小委員会における温暖化対策の検討について

<資料4>我が国の温室効果ガス排出量の実体及び京都議定書目標達成計画について

<資料5>地球温暖化に関し今後の取組が期待される先進事例等

注2)「中央環境審議会第38回地球環境部会/産業構造審議会環境部会第32回地球環境小委員会合同部会(第1回)」

・窓口:環境省総合環境政策局環境経済課/地球環境局地球温暖化対策課

日時:2006年11月14日(火)15:30-17:30

場所:全電通労働会館全電通ホール

・議題:  (1)京都議定書目標達成計画の評価・見直しについて

       (2)その他

・配布資料:

<資料1>京都議定書目標達成計画の評価・見直しに係わる検討の進め方について(案)

<資料2>我が国の温室効果ガス排出量の要因分析

<資料3>気候変動枠組条約第12回締結(COP12)及び京都議定書第2回締結国会合(COP/MOP2) について

<資料4>スターン・レビュー−気候変動と経済:概要

注3)「中央環境審議会地球環境部会(第37回)」

・窓口:環境省総合環境政策局環境経済課/地球環境局地球温暖化対策課

日時:2006年10月27日(金)14:00〜16:00

・場所:ホテルフロラシオン青山

・議題:(1)京都議定書目標達成計画の評価・見直しについて

(2)その他(報告事項)

・配布資料:

<資料1−1>京都議定書目標達成計画の評価・見直しに係わる検討の進め方について(案)

<資料1−2>京都議定書目標達成計画の概要

<資料1−3>地球温暖化対策推進大綱の評価・見直し(2004〜2005年)の際の審議スケジュール

<資料2−1>2005年度(平成17年度)の温室効   

果ガス排出量速報値について

<資料2−2>温室効果ガス排出量速報値について(参考)

<資料3> 「公益信託地球環境保全フロン対策基金」の運用状況について

<参考文献>

1)「京都議定書目標達成計画」(2005.4.28)

2) 経済産業省技術環境局環境政策課編:「京都議定書目標達成計画の策定= 産業構造審議会環境部会地球環境小委員会とりまとめ=」(財)経済産業調査会 (2006.2)

 

3.化学物質管理制度の見直し

 経済産業省は、現在、化学物質管理の今後のあり方についての検討を行っているが、年内に「今後の化学物質政策のあり方」についての中間報告をまとめる予定である。

 この検討は、産業構造審議会の化学・バイオ部会で行うため、新しい組織を「化学・バイオ部会政策基本問題小委員会」として発足させて開始された。

同小委員会は、第1回会合を2006年5月25日に開催し、11月22日に第7回を開催した。

 第1回会合では、新しい委員会の設置の趣旨を以下のように説明している。

3.1 目的

 われわれの社会・暮らしに不可欠な「化学物質」の安全・安心の確保と、国内外の経済社会の持続可能な発展を目的に、更なる安全・安心の追求、国際的制度調和への対応、合理的な規制体系の追求、新規化学物質開発に係るイノベーションの加速化等の観点から、産業構造審議会・化学バイオ部会に、新たに「化学・バイオ部会政策基本問題小委員会」を設置し、化学物質政策の今後の在るべき姿についての論点を整理する。

3.2 背景

昭和48年に制定された化学物質審査規制法は、新たに開発された化学物質の市場導入前の安全審査や有害物質の製造規制等を目的とした世界最初の化学物質規制法であり、米、EU等諸外国において同趣旨の規制法の整備が行われる契機となった。

その後、我が国においては、累次に亘る制度の見直しや新たな制度の制定等により、化学物質審査規制法に基づく市場導入前の事前審査規制等の高度化や、化学物質排出把握管理促進法に基づく排出把握管理等の自主管理の促進等が進められているものの、化学物質を巡る近年の環境変化に鑑み、改めて、直面している様々な課題への対応の在り方について整理を行うことが必要となっている。

3.3 中間報告の内容

中間報告の骨子では、@安全性情報の収集・把握、A情報基盤の整備、Bリスク評価体制、C安全性情報の伝達、Dリスク管理体制、E国際動向への対応、などの化学物質政策に関する各項目の現状認識、および今後の方向性が示されている。

注1)「産業構造審議会 化学・バイオ部会第6回化学物質政策基本問題小委員会」

・窓口:経済産業省製造産業局化学物質管理課

日時:2006年10月20日(水)16:00-18:00

・場所:経済産業省本館

・議題:(1)前回の議論を踏まえた論点整理

    (2)基盤整備、国際対応について

        (3)その他

・配布資料:

<資料1>議事次第

<資料2>委員名簿

<資料3>第5回議事録案(概要及び詳細版)

<資料4>今後の検討事項・議論の進め方について

<資料5>これまでの議論の整理(論点別の整理)

<資料6>第5回委員会における指摘事項への回答等

<資料7>第6回委員会における論点(案)について

<資料8>基盤整備、国際対応について

<資料9>略語集

注2)「産業構造審議会 化学・バイオ部会第7回化学物質政策基本問題小委員会」

・窓口:経済産業省製造産業局化学物質管理課

日時:2006年11月22日(水)10:00-12:00

・場所:虎の門パストラル

・議題:   (1) 前回の議論を踏まえた論点整理

(2) リスクコミュニケーション、人材育成

       等について

(3)  化学物質政策基本問題小委員会中間

    取りまとめ骨子(案)について

・配布資料:

<資料1>    議事次第

<資料2>    委員名簿

<資料3>    第6回議事録案(概要及び詳細版)

<資料4>    今後の検討事項・議論の進め方について

<資料5>    これまでの議論の整理(論点別の整理)

<資料6>    第7回委員会における論点(案)につ

          いて

<資料7>    リスクコミュニケーション、人材育成

          等について

<資料8>    略語集

<資料9>    化学物質政策基本問題小委員会中間取

          りまとめ骨子(案)について

 

図2 検討体制


2006年9/10月

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. 今年の南極オゾンホール

気象庁は、南極オゾンホールの状況を、毎年、昭和基地上空の観測結果の基づいて発表している。気象庁は、10月5日に、“今年の南極オゾンホールは最大級に達し、昭和基地上空のオゾン全量が過去最小を記録した”と報道陣に発表した。

以下にその資料を紹介する。

1.1 オゾンホールの状況

47次南極地域観測隊による昭和基地での観測によると、基地上空のオゾン全量は10月3日に117m atm-cmと過去最小を記録し(昨年までの最小値は1995年10月6日の128m atm-cm)、オゾンホールが現れる前の1980年以前と比べて、半分以下の値とな

っている(図1)。

また、米国航空宇宙局(NASA)の衛星観測によれば、今年のオゾンホールは、9月24日にその面積及び欠損量が次の通りとなり、最大級に発達した(図2、図3)。

・面 積: 2,930万km2 (2000年に次いで第2位)

・欠損量: 10,500万トン(2003年に次いで第2位)

1.2 最大級となった理由

オゾンホール形成の大きな要因はオゾン層破壊物質と気象条件である。大気中のオゾン層破壊物質の濃度が1990年代後半のピーク後も高い状態が持続している中で、今年はオゾン破壊の促進に関係する南極域成層圏の低温域(-78℃以下)の面積が過去10年間の最大レベルで推移した。このため、オゾンホールが最大級に発達したものと考えられる。

1.3 南極昭和基地におけるオゾン全量年最小値の変化

図1は、南極昭和基地におけるオゾン全量年最小値の変化(2006年10月3日現在)を示している。10月3日に過去最小の117 m atm-cmを観測した(昨年までの最小値は1995年10月6日に観測した128 mtm-cm)。

1.4 南半球オゾン全量分布

図2は、2006年9月29日の南半球オゾン全量分布を

示す。オゾンホール(220m atm-cm以下の領域)が南極大陸のほとんどを覆っている。なお、南極大陸中央部の空白の領域は、太陽光があたらないため観測できない領域である(NASA提供の衛星データをもとに気象庁で作成。)

1.5 オゾンホールの最大面積の推移

図3は、各年のオゾンホールの面積の年間最大値

を示す。青線は南極大陸の面積(約1,400万km2)である(NASA提供の衛星データをもとに気象庁で作成)。

1.6 2006年のオゾンホール規模の推移

オゾンホールの規模の指標として、オゾンホールの面積とオゾン欠損量(破壊量)の2006年の推移を示す(図4,図5)。

オゾンホールの面積は9月24日に2,930万km2(速報値)となり、極値としては過去2位の広さとなった(1位は2000年9月8日の3,030万km2)。

オゾン欠損量も9月24日に10,500万トン(速報値)となり、極値として過去2位の規模となった(1位は2003年9月25日の10,700万トン)。NASA提供の衛星データをもとに気象庁で作成(9月30日現在)。

1.7 南極昭和基地のオゾンの状況

南極昭和基地における2006年のオゾン全量は、8月下旬から過去最小値に近い水準で推移し、10月3日に過去最小の117 matm-cmを観測した(昨年までの最小値は1995年10月6日に観測した128 m atm-cm)(図6)。図中の黒線は1961年の観測開始以降の最大値及び最小値、●印は2006年の値、青線はオゾンホールの目安である220m atm-cmの値を示す。

なお、9月の月平均値は172m atm-cmであり、1998年、2001年と並び過去2位だった(1位は2003年の165m atm-cm)。

オゾンの高度分布を見ると。高度14〜21kmにかけては、オゾンがほとんど観測されなかった(図7)。

昭和基地におけるオゾンゾンデ観測によるオゾンの高度分布。黒線はオゾンホールが現れる以前(1968〜1980年)の9月の月平均オゾン高度分布。赤線は2006年9月26日の観測結果を示している。

1.8 2006年の南極域上空の気温の状況

図8は、南緯60度以南の30hPa(高度約23km)面における-78℃以下(極域成層圏雲出現の目安)の領域の面積の推移を示す。

低温域面積は6月の後半から9月まで、1995年以降最大のレベルで推移している。●は2006年の値、黒太線は1995〜2005年の平均値、青細線は同期間の最大、最小値を示す(気象庁の全球解析値を基に作成)。

<参考資料>

気象庁:「(報道発表資料)昭和基地上空のオゾン全量が過去最小を記録」(2006.10.5)

 

2.GHSについて

GHSとは、“Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals”の略語であり、“化学品の分類および表示に関する世界調和システム”と訳されている。このシステムは、化学物質の危険有害性について、化学物質を取り扱う人たちに対して、ラベル表示や安全データシートなどによって、その情報を伝える指針である。

 同じ化学物質が、世界中に流通している場合、危険有害性の情報の表示が国によって異なるのでは、化学物質の安全な使用・輸送・廃棄は困難である。

 このような状況から、化学物質の分類、表示方法が世界各国共通のものに統一される必要性が議論されるようになった。この議論は10年以上の長期間にわたって行われ、2003年7月に、国際連合の理事会において、GHS文書が採択された。その後改訂作業が行われ、改訂初版が2005年に国際連合より発表されている1)。

日本では、GHSに基づいて、労働安全衛生法が改正され、現在関係法令の準備が進められており、関係機関より各種の情報が公開されている2)。

2.1 GHSの目的

 現在の社会生活では、色々な場面で化学物質を使用している。化学物質は私たちの生活の利便性を高めてくれるが、その性質によっては、危険性や有害性があり、取り扱うにあたって注意を要する場合がある。ある国では、ラベル表示や安全データシートで、様々な化学物質の危険有害性や取扱上の注意事項等の情報を化学物質を取り扱う人たちに伝える手続きやルールがあるが、その内容は各国において様々で相違点が大きく、同じ化学物質であるのに異なる情報を表示している場合がある。一方では、そのような手続きやルールを持っていない国も多いのが実態である。化学物質が世界的に流通しているなか、このように国によって表示内容が異なれば、化学物質を安全に製造、使用、輸送、処理、廃棄することが困難となる。

 このような観点から、国際的に調和された化学物質の分類及び表示方法が必要であると認識されるようになり、長年の検討を経て、まとまったのがGHSである。

 2.2 GHSの基本的考え方

 GHSの基本的な考え方は以下の通りである。

@     全ての化学品を対象とし、危険有害性(ハザー ド)に基づいて分類する

 GHSは、全ての化学品(純粋な化学物質、その希釈溶液、化学物質の混合物)に適用される。ただし、いわゆる成形品中に含まれる化学成分は対象にならない。また、医薬品、微量の食品添加物や農薬を含む可能性のある食品など、ラベル表示の対象にならないものもある。

A     情報提供の対象は、労働者、消費者、輸送関係 者、救急対応者

 化学品を扱うすべての人たちが、危険有害性に関する情報提供を受ける対象となる。

B     新たな試験方法を求めるものではなく、入手可 能なデータを用いて分類する

 GHSにおける危険有害性の特定には、国際的に認められた科学的原則に従って実施された試験の結果を利用し、そのデータに基づいて分類することを前提としている。分類のために新たに試験を行うことは必ずしも求められていない。

C     実施については各国の状況や利用目的に応じて、 部分的に導入することが可能

 GHSはそれぞれの国の状況に応じて部分的に選択して適用することも可能である。しかし、GHSを適用し実施する場合には、その適用範囲においては分類や表示制度に一貫性を持たせるべきであるとされている。

2.3 GHSにおけるラベル表示

GHSの定義では、ラベルとは化学品の危険有害性に関する情報がまとめられて記載されている書面、印刷またはグラフィックであり、危険有害性のある物質の容器に直接、またはその外部梱包に貼られたり、印刷されたりするものをいう。

 ラベル表示には次の要素が必要とされている

(1)注意喚起語(signal word)

利用者に対して、潜在的な危険有害性を警告するために使用されると同時に、危険有害性の程度を知らせる語句である。「危険(danger)」と「警告(warning)」の2種類がある。

・「危険」:重大な危険有害性がある場合

・「警告」:「危険」の場合よりは重大性の低い危険有害性がある場合

(2)絵表示(pictogram)

危険有害性の内容を簡潔に示すことで、化学品の使用者等に危険有害性を即座に知らせるための図案である。赤いひし形の枠の中で白い背景の中に、どくろマーク、感嘆符や炎マーク等を黒く表示している(後の“危険有害性の区分とその絵表示”を参照)。

(3)危険有害性情報(hazard statement)

該当製品の危険有害性の性質と、その危険有害性の程度について記載される。具体的な文言は、危険有害性の程度に応じてGHSのテキストの中にそれぞれ定められている。

(4)注意書き(precautionary statement)

危険有害性をもつ製品への暴露、その不適切な貯蔵や取り扱いから生じる被害を防止・最小化するために、その化学品の使用者等が取るべき措置について記載される。「GHS附属書3」において注意書きの使用に関する手引きが提供されている。

(5)製品の名称および供給者の特定

製品を特定するものとして、製品の名称や物質の化学的特定名が記載される。また、供給者または製造業者の名前、住所が記載される。

2.4 SDS

SDS(Safety Data Sheet、安全データシート)とは、化学品の安全な取り扱いを確保するために、化学品の危険有害性等に関する情報を記載した資料のことで、事業者間の化学品の取引時に添付し、化学品の危険有害性や適切な取り扱い方法に関する情報を提供者側の事業者から受け取り側の事業者に提供するためのものである。実際に当該化学品を使用して作業をする労働省等にとっても非常に有益な情報伝達ツールとなる。

日本では、一般にMSDS(Material Safety Data Sheet、化学物質等安全データシート)と呼ばれている。GHSにおいては、SDSの情報は次の16項目の情報をこの順番で記載することになっている。

(1)化学物質等及び会社情報

(2)危険有害性の要約

(3)組成、成分情報

(4)応急措置

(5)火災時の措置

(6)漏出時の措置

(7)取扱い及び保管上の注意

(8)暴露防止及び保護措置

(9)物理的及び化学的性質

(10)安定性及び反応性

(11)有害性情報

(12)環境影響情報

(13)廃棄上の注意

(14)輸送上の注意

(15)適用法令

(16)その他の情報

2.5 日本におけるGHGの実施状況

GHSへの日本の対応は、現在以下のように進められている。

(1) MSDS及びラベルの様式についての規格の制定

GHSに対応して従来のMSDS作成のJISが改訂され4)、同時にGHSによる分類と表示に関するJISが新たに制定された5)。

(2) 化学物質の分類

日本におけるMSDS作成の義務づけは、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法、及び化学物質排出把握管理促進法の3つの法律で行われている。その規制対象となる約1500の化学物質について、経済産業省、厚生労働省、環境省等関係各省が連携して分類実施の作業を行っている。この分類結果は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページで公開されている。

(3) 分類作業マニュアル

関係各省による約1500物質の分類作業に当たって、分類作業を統一的に行うためのマニュアルが作成されており、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページで公開されている6)。

(4) 関係省庁連絡会議の設置

2001年、国連GHS小委員会の発足とほぼ同時期に、GHSに関する情報の共有、GHS小委員会への対応等を目的とした関係省庁連絡会議「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)関係省庁連絡会議」(略称:GHS関係省庁連絡会議)を設置した。この会議のメンバーは、厚生労働省、経済産業省、環境省、総務省、農林水産省、国土交通省、外務省、GHS小委員会委員で構成され、(社)日本化学工業協会がオブザーバーとして参加している。

同会議では、現在、日本国内でのGHS実施に関するさまざまな活動(GHSの邦訳、既存法制度との整合作業に関する情報交換、法規制対象物質の分類、GHS小委員会での対処方針の決定など)を行っている。

(5) 英文GHSテキストの邦訳

英文のGHSテキスト(改訂初版)の邦訳は、城内博氏(国連GHS専門家小委員会委員、日本大学教授)を中心としたGHS関係省庁連絡会議によって行われ、厚生労働省、経済産業省、環境省のホームページで公開されているが、対訳版が化学工業日報社より出版されている6) 。

(6) 既存法制度とGHSとの整合化

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保すること等を目的とする法律で、一定の化学物質を譲渡・提供する者に表示・MSDS交付を義務づけている。同法は、GHS対応の制度を導入するよう2005年11月に改正された7)。

 同改正法の施行は2006年12月からであり、そのための関連法令の改正が準備されていたが、それらは去る10月20日に公布された8-10)。

<参考文献>

1)     United Nations:「Globally Harmonized    System of Classification and Labelling of   Chemicals(1st. Revised Edition)」 (2004.12)

2)     経済産業省:「(パンフレット)GHS - 化学品の分類および表示に関する世界調和システム」 (2006.3)

3)     経済産業省のウェブサイト

       http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kokusai/GHS/definition.html

4)     JIS Z7250:2005 「化学物質等安全データシー ト(MSDS)ー第1部:内容及び項目の順序」 (制定2000.2.20、改正2005.12.20)

5)     JIS Z7251:2006 「GHSに基づく化学物質等 の表示」(制定2006.3.25)

6)     GHS関係省庁連絡会議訳:「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS) 改訂初版」化学工業日報社(2006.8)

7)     労働安全衛生法(1972.6.8 法律第57号)の一 部を改正する法律(2005.11.2公布)

8)     対象とする危険物を定める政令改正:

       「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令 (平成18年政令第331号)(2006.10.20)」

9)     表示すべき化学物質、文書交付に係る化学物 質の濃度範囲を定める省令改正:

       「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成18年厚生労働省令第185号)

       (2006.10.20)」

10) 絵表示の内容を定める告示:

       「労働安全衛生法第五十七条第一項第二号の規定に基づき厚生労働大臣が定める標章(平成18年厚生労働省告示第619号)(2006.10.20)」

 

3.「2006洗浄総合展」における「VOC対策ゾーン」

 本年度の洗浄展示会「2006洗浄総合展」は、10月11〜13日に東京ビッグサイト[有明・東京国際展示場]において開催され、入場者は、3日間合計40,075名であった(「土壌・地下水環境展」の入場者は、別にカウントして30,539名)。

 今年は特別企画として、「VOC対策ゾーン」を設け、経済産業省、環境省、東京都によるVOC関連の施策をパネルにて展示した。次ページより、経済産業省と東京都のパネルを紹介する。


<写真>展示会における「VOC対策ゾーン」>


図1 南極昭和基地におけるオゾン全量年最小値の変化(2006年10月3日現在)


図2 南半球オゾン全量分布図


図3 オゾンホールの最大面積の推移


図4 オゾンホールの面積


図6 南極昭和基地におけるオゾン全量の変化(10月3日現在)


図7 南極昭和基地におけるオゾンの高度分布


図8 南極域上空の低温域の面積の推移(10月2日現在)







2006年7/8月

★これまでの掲載分へ

1.「第3次環境基本計画」

政府は、環境基本法に基づき、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、中央環境審議会の答申を踏まえ、第三次計画となる新しい環境基本計画を4月7日(金)に閣議決定した1)

1.1 環境基本計画と環境基本法

 環境基本計画は、環境基本法に基づくものであるが、環境基本法の“第2章 環境の保全に関する基本的施策、第2節 環境基本計画、第15条”として、以下のように説明されている。

 “政府は、環境の保全に関する総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱

(2) 前号にかかげるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

 1 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。”

 最初の環境基本計画は、1994年12月16日に決定されたが4。5年後程度を目途に見直しを行うこととされている(“内外の社会経済の変化に柔軟かつ適切に対応して、環境基本計画の見直しを行うこととし、見直しの時期は、5年程度を目途とします”)。

 最初の見直しは、「(第2次)環境基本計画=環境の世紀への道しるべ=」として、2000年12月22日に閣議決定された3)

 この第2次環境基本計画の見直しについては、2005年2月に環境大臣から中央環境審議会に対し諮問が行われ、これを受けて中央環境審議会総合政策部会において約1年間にわたり審議され、2006年3月30日(木)に中央環境審議会から環境大臣に対して答申が行われることとなった。これが第三次環境基本計画であり、“環境から拓く新たなゆたかさへの道”と副題が付されている。

ちなみに、環境基本法は、環境問題についての国の政策に基本的な方向を示すものとして、1993年に制定され、過去何回か改正されている。この法律の基となるものは、1967年6月に制定された公害対策基本法である。

1.2 第三次環境基本計画の策定経緯

 第三次環境基本計画は、以下のような経緯を経て策定された。

(1) 環境大臣から中央環境審議会への諮問

 (2005214日)環境大臣から中央環境審議会に対して、「環境基本計画について」の諮問が行われた。

 


<写真>「パンフレット・環境基本計画」の表紙2)



(注)中央環境審議会:環境大臣の諮問機関として、環境基本法第41条に基づき、2001年1月6日に設置された。所掌事務としては、環境基本計画案の作成に関する審議や、環境大臣または関係大臣の諮問に応じて環境保全に関する重要事項を調査審議すること、自然公園法など他の法令の規定によって権限に属された事項を処理することなどとされている。

 同審議会は、30名の委員で構成され、委員長は鈴木基之氏(放送大学教授・国際連合大学特別学術顧問)で、傘下に13の部会が組織されている。

(2) 中間とりまとめの公表・パブリックコメント

 (2005年7月19日)「第三次環境基本計画策定に向けた考え方(計画策定に向けた中間とりまとめ)」を公表するとともに、新しい環境基本計画のあり方について広く国民からの意見を募集し、26件の意見などが寄せられた。

(3) 各種団体との意見交換会の開催

 (2005年8月24日〜10月7日)民間、業界、学界、地方公共団体、関係官庁などから計63団体を招き、中央環境審議会総合政策部会委員との間で意見交換を13回行った。

(4) 重点分野ごとの検討

 (2005年8月24日〜11月18日)10の重点分野ごとに、平均すると3回程度の会合を開催して集中的な検討が行われた。そのほか、中央環境審議会の関係する部会においても検討が行われた。

(5) 第三次環境基本計画(案)の公表・パブリックコメント

 (2006年2月3日)中央環境審議会総合政策部会がまとめた第三次環境基本計画(案)を公表し、パブリックコメントを行った。これに対し657件の意見などが寄せられた。

(6) 地方ブロック別ヒアリングの開催

 (2006年2月27日〜3月9日)7つのブロックで、パブリックコメントにかけた案について公募による意見発表者から発表などをしていただき、会場での傍聴者からも意見を頂いた。

(7) 第三次環境基本計画(案)の答申

 (2006年3月30日)午前に開催された中央環境審議会政策部会において答申案が議決され、同日の午後、中央環境審議会の鈴木基之会長より江田康幸環境副大臣に答申が手交された。

(8) 閣議決定

 (2006年4月7日)閣議において第三次となる環境基本計画が決定された。

(9) 官報告示

 (2006417日)) 

1.3 第三次環境基本計画の特徴

 第三次環境基本計画の内容は、環境省のホームページに掲載されているように、閣議資料と参考資料を合わせると220ページを超える1aー1e)。本文は、“第1部:環境の現状と環境政策の展開の方向”、“第2部:今四半世紀における環境政策の具体的な展開”、“第3部:計画の効果的実施”からなり、その概要は以下のごとくである(表12))。

第1部では、今後の環境政策の展開の方向として環境と経済の好循環に加えて、社会的な側面も一体的な向上を目指す、「環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上」等、今後の環境政策の展開の方向を明らかにしている。

第2部では、当面具体的に取り組むべき施策を解説している。充填分野政策プログラムとしては、事象別の分野で「地球温暖化問題に対する取組」等5分野、および事象横断的な分野で「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」等5分野、併せて10分野を取り上げている。

以下に、その中の「5.化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」を紹介する。

1.4 第5節 化学物質の環境リスクの低減に向けた取組

(1) 現状と課題

@ 化学物質の問題の背景

    我々の暮らしは、多くの種類の化学物質を様々な用途に使うことによって成り立っています。化学物質には、合成により製造されるもの、天然に存在するもの、燃焼などにより非意図的に生成するものがあります。

    合成により人為的に作られる化学物質には、成型加工して工業製品や日用品として使用されるものと、製造された状態のまま、または複数の化学物質と混ぜ合わせて配合品として使用されるものがあります。化学物質の製造量・存在量には多寡があり、環境への排出や環境中の残留状況も異なります。また、有害性、環境残留性、生物蓄積性、長距離移動性等の性質も様々です。

    このような化学物質の適切な管理には、化学物質に固有の有害性の程度と人や生物へのばく露のレベルを考慮し、環境を通じて人や生態系に悪影響を及ぼす可能性(環境リスク)をできるだけ少なくすることが基本となります。しかし、その環境リスクは科学的に完全には解明されてはおらず、管理に際して不確実性の中での意思決定が必要となることがあります。

A これまでの対策の推移

    化学物質の「環境リスク」の概念を打ち出したのは、第一次環境基本計画(平成6 年)でした。第二次環境基本計画(平成12 年)において、有害性とばく露を考慮し、規制に加え自主的取組等の多様な対策手法を用いて環境リスクを低減するという方向が明示され、その後、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化学物質審査規制法」とします。)に基づく規制にばく露の観点や動植物の保護の観点が導入されたほか、大気汚染防止法に事業者の自主的取組が位置付けられるなど、取組が進められました。その結果、有害大気汚染物質やダイオキシン類の対策等は大きな成果を挙げました。

    しかし、化学物質の環境リスクの低減のためには、なお多種多様な課題が残されています。また、今後5 年程度を見渡せば、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化学物質排出把握管理促進法」とします。)については平成19 年以降、化学物質審査規制法については平成21 年以降にそれぞれ法律の施行状況について検討を加え、結果に応じて必要な措置を講ずることとされています。

B 有害性、ばく露、リスクに関する情報の不足

    市場に流通している化学物質について有害性やばく露、環境残留性に関する情報が不足していることが課題として挙げられます。我が国では、化学物質審査規制法に基づいて、新規に製造・輸入が行われる化学物質については事業者が事前に国に届け出る仕組みが整備されています。同法の公布時(昭和48 年)に既に製造又は輸入が行われていた約2 万種の既存化学物質については、これまで国が安全性の点検を実施してきました。平成16 年度までの調査済み又は調査着手済みの既存化学物質の数は、分解性・蓄積性が1455 物質、人毒性が275物質、生態毒性が438 物質となっています。

    また、OECD 高生産量化学物質プログラムにおいて、我が国の政府及び化学業界も積極的に参加して安全性点検を進めています。今後、産業界と国が連携して、安全性点検をさらに加速化することが必要になっています。また、化学物質の特性には、免疫系や神経系への影響、他の物質との複合影響、次世代への影響の懸念や、食物連鎖を通じた蓄積性、地球規模での長距離移動性等、科学的なメカニズムが十分に解明されておらず、多様なリスクを評価するための実用性の高い試験・評価方法を研究開発することが課題となっているものもあります。

    ばく露に関する情報も不足しています。製造・輸入量や用途、環境への排出量については、化学物質審査規制法や化学物質排出把握管理促進法に基づき、

    一部が把握されているのみです。環境中の残留量についても一部の物質がモニタリングされているにすぎず、環境中で検出されてもその発生源や排出経路、

    人や動植物へのばく露経路の特定が困難な場合があります。

    ばく露の把握に当たっては、排出源や排出経路の多様さ、天然由来の化学物質の存在に起因する地域特性についても、十分な考慮が必要です。さらに、製品中に含まれている化学物質の種類・量や、製品の廃棄に伴う排出量も必ずしも十分に把握されていません。

    化学物質の有害性やばく露に関する情報は、製造事業者や使用事業者が把握していることもありますが、その情報の関係者間での共有が必ずしも十分ではありません。最終製品に含まれる化学物質についてどのような情報を消費者に提供していくべきかについても課題となっています。

C 化学物質の特性等に応じた様々な対策手法の必要性

    化学物質は、多様な用途に用いられ、製造・輸入から使用、リサイクル、廃棄に至るライフサイクルの各過程で環境に排出される可能性があり、その有害性や環境中での挙動も一様でないことから、化学物質の特性に応じてライフサイクルの各段階で様々な対策手法を組み合わせて用いる必要があります。

    事業者の自主的取組と行政によるチェック、情報公開、基盤整備を組み合わせた柔軟な手法から、製造、使用、排出等の規制に至る様々な手法を駆使し、消費者、事業者等の各主体がリスク低減に向けた行動を取るようにすることが課題となっています。

    生態系保全に関する化学物質対策は、第二次環境基本計画以降、化学物質審査規制法における規制の導入、農薬の評価手法の見直し、水質環境基準の設定等で進展を見ましたが、評価の対象となっている特定の生物への影響と生態系保全の関係についての考え方、水域以外の生態系の保全のための影響評価の手法、用途・使用形態に応じた管理の考え方等が必ずしも十分に確立しておらず、その発展が必要です。

    さらに、アスベスト問題等の経験を踏まえ、国際的な動向の把握や関連情報の共有を通じ、環境リスクを見逃さないような対策を講ずるとともに、情報公開の徹底により、国民の信頼を確保することが重要です。

D「安全」と「安心」のギャップ

    化学物質の環境リスクの低減を通じてより安全な社会を実現することに加え、化学物質の安全性についての国民の理解が進み、国民が安心できる社会を実現することも重要な課題です。

    例えばダイオキシン類や内分泌かく乱作用の問題

    では、最新の科学的知見に基づいて想定される環境リスクについての情報提供が十分でなく、国民が不安に感じるリスクとの間に、大きな乖離が見られたことがありました。化学物質による環境リスクを完全になくすことは不可能であり、環境リスクに関する情報・知識を関係者が共有し、情報に関する共通の理解と信頼の上に立って、社会的に許容されるリスクについての合意形成を図る必要があります。

E 国際的な課題に対する我が国からの情報発信

    近年、化学物質対策は国際的な要素が強くなっています。東アジア地域等の中進国では化学物質の製造・使用量が急激に増加しており、適切な化学物質管理手法を確立することが急務となっています。また、国際貿易を通じて世界経済が一体化していく中で、他国における化学物質規制が、化学物質やそれを含む製品を輸出する我が国に及ぼす影響が大きくなってきています。

    例えば、欧州における製品中の有害物質規制や、事業者による化学物質の安全性評価の義務化等の検討が、我が国の企業の化学物質管理にも大きな影響を与えるようになっています。さらに、地球規模での、又は国境を越える問題の解決に向け、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等、国際的な対策の枠組みの整備が進んでいます。また、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の導入も国際的に合意されています。

    こうしたグローバル化の流れの中で、他国の動向に受動的に対応するだけでなく、我が国の化学物質管理制度、事業者や国民の取組等の情報発信を積極的に行うとともに、共通の課題への国際協調の下での対応を通じ、国際的な調和が図られた化学物質管理の確立に向けて、国際貢献を進める必要があります。

(2) 中長期的な目標

以上のような背景を踏まえ、2025 年頃の社会において以下の事項が達成されることを目標として、各種の取組を進めていきます。

化学物質の環境リスクの最小化が図られていることが確認できるよう、主要な物質の有害性・ばく露に関する必要な知見が、秘密情報に留意しつつ、化学物質のライフサイクルを通じてできる限り共有され、その情報に基づいて科学的な手法で環境リスクが評価されていること。

深刻な影響又は不可逆的な影響が懸念される問題については、完全な科学的確実性が欠如していることを環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由とせず、必要に応じて機動的に対応し、迅速にリスク評価を実施し、その結果が適切に対策に反映されていること。

消費者、事業者、民間団体、行政等の様々な主体が、化学物質の環境リスクについての理解と相互の信頼を深め、自らの役割を自覚しながら、リスク低減のための行動を取っていること。

化学物質管理に関する国際協調が進み、事業者の技術開発インセンティブがさらに高まっていること。また、我が国が化学物質の安全性の確保のための国際的な取組に多大な貢献を行っていること。

(3) 施策の基本的方向

上記の中長期的な目標の達成に向け、以下に示す基本的な方向に沿って対策を進めていきます。

@ 環境リスク低減対策の基礎として、科学的な環境リスク評価を進めます。このため、我が国独自のデータを取得することを含め、化学物質の有害性に関するデータの収集、化学物質の製造量、用途、排出量、排出経路、廃棄方法等の基礎情報の整備、環境残留状況の把握等に積極的に取り組みます。これらの情報を、製造事業者、ユーザー企業、消費者、廃棄物処理事業者等の関係者でできる限り共有します。その際、新しくより安全な代替製品及び工程の開発の革新を推進するため、商業的、産業的な秘密の情報や知識を国の法令等に基づき保護します。しかしながら人の健康と安全及び環境に関する情報は、秘密とはみなされないことに留意します。産学官の研究機関と連携し、研究者の育成を図りつつ、リスク評価、新たなリスク発見のための手法の開発を進めます。

A 科学的なリスク評価、化学物質が国民生活に与える利益及び予防的取組方法の考え方を考慮した上で、化学物質のライフサイクルにわたる環境リスクを最小化し、人の健康及び生態系への被害を未然防止するための取組を進めます。重大な環境リスクが見逃されることのないよう、国内外の新たな知見ないし情報に常に注意を払いながら、多様な問題に応じた様々な対策手法を組み合わせた取組を推進します。総合的な観点から、関係省庁の緊密な連携の下、地方公共団体や事業者、民間団体等と協力し、化学物質管理を推進します。過去の汚染の蓄積等の負の遺産の適正処理を進めます。

B  消費者、事業者、民間団体、行政等の様々な主体が、各々の活動を通じて環境リスクが低減した社会を協力しながら作り上げていくことが可能となるよう、環境リスクの現状やリスク管理の取組についての理解を関係者が共有し、信頼関係を高め、関係者が自ら環境リスクに関する判断をするための基盤を整備します。リスク評価・管理の各段階で情報公開を進め、環境教育、人材育成の取組を進めます。

C  平成18 年に合意された国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って、国際的な観点に立った化学物質管理に取り組みます。

    先進国としての責任を踏まえながら、国際協調に基づく環境リスクの評価、化学物質の適正な管理や地球規模での環境リスクの低減対策に貢献します。化学物質管理のための国際的な枠組・国際標準の構築に向け、我が国の経験と技術を踏まえた積極的な情報発信、国際共同作業、開発途上国への技術支援を進めます。

(4)重点的取組事項

@ 各主体に期待される役割

主体毎に次のような役割が期待されます。

ア 事業者

    化学物質の製造、輸入、販売、使用、廃棄等を行う際に、関係法令を遵守するだけでなく、自主的な化学物質の環境リスクの評価・管理、情報提供、地域住民との対話等に取り組むことが期待されます。特に、化学物質や製品を安全に使用するために必要な健康及び環境への影響などに関する情報が、関係者に入手可能となるよう、積極的に取り組むことが期待されます。

イ 国民

    化学物質の環境リスクに関する的確な情報の入手と理解に努め、自らの生活で使用する化学物質に関する環境への負荷の低減に取り組むことが期待されます。

ウ 国及び地方公共団体

    人材育成、社会資本整備や各種の支援策を通じて事業者・国民の取組の基盤を整備するとともに、環境リスク低減のための制度の構築・運用に取り組みます。

A科学的な環境リスク評価の推進

    平成20 年(2008 年)の目標年度に向けて、既存化学物質の安全性情報を収集・発信する官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(通称

    JAPAN チャレンジプログラム)を推進します。平成20年4月以降に進捗状況及び成果を踏まえ、同プログラムの中間評価を行います。また持続可能な開発に関する世界首脳会議における目標を踏まえ、平成32 年(2020 年)までに有害化学物質によるリスクの最小化を図るべく、構造活性相関等の簡易・迅速な化学物質の安全性評価手法を開発し、人の健康及び生態系に与える影響について科学的知見に基づき評価を行い、適切な管理を促進します。

    規制や事業者による自主管理等の対策の有効性評価に資するため、大気、水質、底質、土壌及び生物のモニタリングを進めます。その際、代表的な地点での測定によるスクリーニングから、一般環境や発生源周辺等の濃度分布を経時的に把握するための環境監視等、多段階のモニタリングを必要に応じて計画的に進めます。また、個人情報の保護、試料提供に係る倫理面等に十分配慮しながら、生体試料中の化学物質残留状況を調査します。遡及的な環境分析ができるよう、試料の長期保存を進めます。

    ばく露の把握に必要な製造量、使用量、用途等に関する情報は、現状では一部の物質について収集されているのみですが、ばく露量が多いと見込まれる物質の環境リスク評価に必要な情報を把握することができる方策を検討します。化学物質の製造・使用から、リサイクル、廃棄後の環境への排出、土壌や底質への蓄積も含め、人や動植物へのばく露を引き起こす過程(ばく露シナリオ)に応じたばく露量の推計手法を整備し、上記の環境モニタリング結果と合わせて、ばく露評価を進めます。重要な環境への排出源、排出経路が見落とされないよう、2020 年までに、主要な化学物質の製造・輸入から使用・消費・廃棄に至るまでのトータルな流れを把握します。

    有害性及びばく露に関する情報を、秘密情報の保護に留意しながら関係者間で幅広く共有し、環境リスクの評価に役立てます。環境リスク評価は、不確実な部分も念頭においたスクリーニング評価に始まり、必要に応じ、リスク管理を視野に入れつつ詳細なリスク評価を行います。

    リスク評価を進めるための手法の開発を行います。まず、化学物質による生態系への影響について、水域のみならず、陸域等も含めた生態系の望ましい保

    全の在り方について検討を進め、天然由来の化学物質も考慮して、評価方法を開発します。また、生態系への影響を早期に発見するため、野生生物の観察等の取組を進めます。

    化学物質による人の健康への影響について、評価手法が確立していない免疫系や神経系への影響、内分泌かく乱作用を通じた影響等の様々な有害性を評価するための手法の開発を進めます。また、複数の化学物質による低濃度ばく露の総合的な影響、同一化学物質の多媒体経由のばく露による影響、妊婦や胎児等の感受性の高い集団への影響、発生源周辺等のばく露量の高い集団への影響等、評価手法が確立していない分野について、評価手法の開発のための研究を進めます。中長期的には、評価手法が確立した分野についての評価をリスク評価・管理に統合します。

    現在の有害性評価手法・測定技術では十分把握できないリスクを特定し解明するための調査研究、トキシコゲノミクス(化学物質による遺伝子レベルでの毒性発現メカニズムの解明や毒性予測を行う法)等の新たな手法を用いた効率的な有害性評価手法の開発を推進します。

B効果的・効率的なリスク管理の推進

    既存の排出規制や製造・使用規制等の法制度を確実に履行し、環境基準や指針値が設定されている物質については、発生源周辺の居住地域も含めてそれらが維持・達成されることを目指すとともに、最新の科学的知見の収集に努め、必要に応じ基準・指針値の見直しを行います。残留性有機汚染物質等、重大なリスクが懸念される物質については、環境負荷の低減のため、利用可能な最良の技術(BAT:Best Available Techniques)又は環境のための最良の慣行(BEP:Best Environmental Practices)を用いた対策を推進します。大気、水、土壌等の異なる環境媒体への排出を総合的に削減するための取組について検討します。

    また、排出規制、化学物質の種類毎に行われる製造・使用管理等の異なる制度間で、情報の共用等の連携を強化します。科学的根拠に基づき、必要に応じ、有害性が類似した物質について包括的な排出削減等の対策を講ずるアプローチの導入を目指します。

    国内外のリスク評価の結果等、入手可能な情報を最大限活用し、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれのある物質について、製造、使用、排出の制限や自主管理、公的主体による社会資本整備等、多様な手法を駆使したベストミックスによる対策を推進します。

    その際、化学物質のライフサイクルにわたる環境リスクの低減や予防的取組方法の観点に立つとともに、代替物質の環境リスクも考慮し、様々なばく露・影響の可能性に配慮した総合的な対策を講じます。   

    例えば、閉鎖系で使用され通常は環境への排出がない物質、製造工程で使用され工場から排出される物質、開放系で使用される物質等ではばく露の状況は大きく異なるため、物質の使用方法等に応じた環境リスク管理を進めます。

    有害化学物質の使用・排出抑制、より安全な代替物質への転換等の事業者の自主的な取組を支援します。このため、取組の参考となる指針の策定、先進的な取組を促進するための環境整備、情報公開・提供による消費・投資行動の誘導等、社会的なインセンティブを付与するための方策を導入します。

    ダイオキシン類等の残留性有機汚染物質、水銀等の有害な重金属、各種の発がん物質等、特に懸念すべき物質については、国民の健康の保護だけでなく、

    地球規模での汚染の低減に資する観点も含め、できる限り環境への排出を抑制します。

    過去に製造された有害化学物質や、汚染された土壌等の負の遺産については、汚染者負担の原則を踏まえつつ、土壌汚染対策法等の関係法令による適正な処理等の対応を進めていきます。特に、ダイオキシン類による土壌汚染については、発生源対策が進展した現在も、なお汚染の判明する箇所があることから、早急かつ的確な対策の実施を推進していきます。また、負の遺産を処理するためには大きな費用が必要となることから、土壌汚染対策基金の活用等により、費用負担がネックとならないようにしつつ、対策を推進していきます。

Cリスクコミュニケーションの推進

    環境リスクに関する情報に対する国民の理解と信頼を向上させる観点から、企業等は、自主的に環境についての活動の成果を公表し、社会との対話を実施しているレスポンシブル・ケア等の取組をさらに進める必要があります。これに加えて、化学物質の有害性や製造、使用、排出等の情報が、秘密情報の保護に配慮しながら最大限入手可能なものとなり、第三者による情報の評価や双方向のリスクコミュニケーションが行われるよう支援します。このために、情報提供のための指針の作成、データベースの構築、人材の育成、リスクコミュニケーションの場の提供、国民が知りたい疑問に適切に対応するための必要な研究者を含むネットワークの構築等の取組を進めます。

    個々の消費者が商品の選択、使用、廃棄等において、化学物質による環境リスクの低減に役立つ取組を行うことができるよう、商品における化学物質の使用、有害性、環境への配慮についての情報を、表示やデータベースを通じての提供等により、わかりやすい形で入手可能なものとなるよう、条件整備を進めます。

    国民が、消費者として、また地域住民として、化学物質の環境リスクに関する情報や対話の場をさらに活用できるようになることを目指し、環境教育を推進します。

D 国際的な協調の下での国際的責務の履行と積極的対応

    東アジア地域をはじめとする諸外国において化学物質が適正に管理されるようになることは、長距離移動や不適正な輸入を通じた有害化学物質の流入を防ぐ観点から、我が国における環境保全にも資することを踏まえ、開発途上国を中心とした国際協力・国際協調の取組を進めます。

    具体的には、我が国における環境モニタリング等の経験と技術をいかし、東アジア地域の国々と共同して、広範囲の環境中での化学物質の状況を把握するためのモニタリング、コンピュータモデルによる予測等の国際的な協調を進めます。

    また、ダイオキシン類の大幅な削減等の経験と技術をいかし、東アジア地域の国々への技術支援等を通じて、国際的な環境リスクの削減を図ります。我が国における化学物質管理の経験と技術をいかし、開発途上国における化学物質管理システム構築への技術的支援を進めます。

    化学物質は様々な国で製造・使用されるため、一国の規制・対策が貿易を通じて他国にも影響を及ぼすことを踏まえ、化学物質の評価・管理手法の国際的な調和に向けて貢献します。その際、環境リスクの低減を基本とした我が国の規制・対策の経験がいかせるよう、我が国からの積極的な情報発信を進めます。また、我が国の規制・対策の見直しに当たっては、各国の規制・対策の体系・内容と比較するとともに、国際機関の動向を踏まえ、参考となる点は必要に応じて取り入れます。

    有害性情報の収集、リスク評価、試験法の開発等に関する国際的なプログラムに対し、重要なプロジェクトの主導や国際会議の開催等により積極的に貢献しつつ、国際分担による作業を進めます。残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等の国際条約を着実に履行するとともに、国際的なモニタリングの主導、対象物質の追加の提案等、条約に基づく活動に積極的に取り組みます。地球規模での有害金属対策等の分野で、我が国の経験をいかし、国際的な化学物質管理の枠組みづくりに寄与します。

    また、化学品の分類及び表示に関する世界調和システムの2008 年の実施に向けた取組を進めます。

(5)取組推進に向けた指標及び具体的な目標

   いくつかの有害化学物質については、環境基準や、環境保全の上で参考となる指針値が設定されています。これらの基準・指針値の達成は、化学物質による環境汚染を防止する上で基礎的な目標です。本計画でも、例えば大気環境と水環境の両方で環境基準・指針値が設定されている物質に着目し、これらすべてに係る達成状況を指標の一つとして各種取組の進行管理を図ります。

   また、化学物質の有害性情報の収集及びリスク評価の実施は、情報の収集・評価済み物質数等で取組の進捗状況を測ることができます。既存化学物質については、安全性点検実施状況を把握して、取組の進行管理を図ります。

    リスク評価については、製造・使用・廃棄の流れの把握を含め、リスク評価の取組が進行し、又は終了している物質数を取組の進捗を測る指標として活用します。

    さらに、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量登録)データ等を用いた化学物質の環境への排出状況は、環境リスク低減のための指標として有意義に活用することができます。現状では、PRTR 制度によりすべての排出源からの排出量や排出経路が正確に把握できているとは言えない状況にあり、また多種類の物質の排出量を総合化する手法等、指標化の手法も確立されていません。PRTR 対象物質のうち、環境基準・指針値が設定されている物質等の環境への排出量を指標とするとともに、今後、PRTR データ等を用いた排出インベントリの構築及び総合的な政策指標の検討に取り組みます。

<参考資料>

1) 第三次環境基本計画:環境省ホームページ

http://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/

thirdplan01.html

  (1a)閣議決定

 (1b)本文

 (1c)構成

 (1d)概要版

 (1e)総合的環境指標について

2) 環境省:「(パンフレット)環境基本計画= 環境から拓く新たなゆたかさへの道=のあらまし」(2006.6)

3) 環境庁編:「環境基本計画」大蔵省印刷局

(1994.12)

4) 境環省編:「環境基本計画=環境の世紀への道しるべ =」(株)ぎょうせい (2001.3)

 

2.審議会関係

2006年7〜8月に開催された主要な審議会、各種委員会は下記の通りである。        2.1 産業構造審議会 化学・バイオ部会第3回化学物  

質政策基本問題小委員会

・窓口:経済産業省製造産業局化学物質管理課   

日時:7月20日(月) 14:00〜16:00

・場所:三田共用会議所 大会議室

・議題:(1)前回の議論を踏まえた論点整理

    (2)リスク評価体制等

        (3)その他

・配布資料:

<資料1>議事次第

<資料2>委員名簿

<資料3>第2回議事録案(概要及び詳細版)

<資料4>今後の検討事項・議論の進め方について

<資料5>これまでの議論の整理(論点別の整理)

<資料6>第2回委員会における指摘事項への回答

<資料7>第3回委員会における論点(案)につい

<資料8>リスク評価体制等について

<資料9>略語集

<参考資料>化学物質の初期リスク評価書の例(ジクロロメタン)

2.2    第3回化学物質排出把握管理促進法に関する懇談会

・窓口:環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課

日時:7月27日(木)9:30〜12:30

・場所:主婦会館プラザエフ7F「カトレア」

・議題:(1)有識者からのヒヤリング

    (2)化管法の運用状況について

(3)その他

・配布資料:

<資料1>第2回懇談会議事録

<資料2ー1>化学物質に関する法規制の状況

<資料2−2>過去4年間の届出排出量の増減について

<資料2−3>PRTRデータとモニタリングデータの比較

<資料2−4>PRTR排出量の算出方法について

<資料2−5>小規模事業者及び少量取扱事業者による排出量の寄与について(東京都条例届出データより)

<資料2−6>法令に基づく製品の成分表示について

<資料2−7>平成17年度PRTRデータ評価・活用方策検討調査報告書(委員より)

<資料3−1>村田幸雄氏(WWFジャパン)プレゼンテーション資料

<資料3−2>蔵本成洋氏(福山市)プレゼンテーション資料

<資料3−3>堀井一雄氏(新潟県)プレゼンテーション資料

<資料3−4>亀屋隆志氏(横浜国立大学)プレゼンテーション資料

<資料3−5>中西準子氏((独)産業技術総合研究所)プレゼンテーション資料

2.3    第4回化学物質排出把握管理促進法に関する懇談会

・窓口:環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課

日時:8月3日(木)13:00〜16:00

・場所:アイビーホール青年会館2F「ミルスト」

・議題:(1)有識者からのヒヤリング

    (2)化管法見直しに向けた論点について

・配布資料:

<資料1−1>藤原寿和氏(化学物質問題市民研究会)プレゼンテーション資料

<資料1−2>小澤義一氏(社団法人日本電機工業会)プレゼンテーション資料

<資料1−3>武田光史氏(全国鍍金工業組合連合会)プレゼンテーション資料

<資料1−4>丸山昭洋氏(ウレタンフォーム連合会)プレゼンテーション資料

<資料1−5>酒井幹彦氏(名古屋市公害対策部)プレゼンテーション資料

<資料2>化管法に関する懇談会第1回〜第3回会合で出された主な意見

 

 

 

 

 

 

 

 

 


これまでの掲載分:   
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2000年: 1月 2月 3月 4月 5月 6月
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2006年: 7/8月 9/10月 11/12月
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