「新しいフッ素系溶剤とその洗浄プロセス」要旨

島田理化工業(株)
産機事業本部
島田製作所
滝下 和弘

日本産業洗浄協議会(JICC)の会員会社である 島田理化工業鰍ヘ、JICCからの委託業務として、()地球環境産業技術研究機構(RITE)が開発した新規フッ素系洗浄剤の洗浄性能評価を平成10年度〜平成13年度の4年間に亘り行ってきた。

この洗浄剤は、RITEが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「エネルギー使用合理化新規冷媒等研究開発」事業の委託を受けて開発した新規フッ素系化合物であるヒドロフルオロエーテル(HFE)類の1種であり、洗浄剤用途に適したHFE-347pc-fである。

ここでは、これらの成果を紹介した第6回JICC洗浄技術フォーラムの要旨を基にHFE-347pc-fの特長,洗浄性評価について簡単に報告する。

HFE-347pc-fの主な特長>

1)オゾン層破壊係数がほぼゼロで、大気寿命が短く地球温暖化影響が小さい。

2)不燃性で引火、爆発の危険性が無い。

3)化学的、物理的に安定性に優れる。

4)毒性が低く安全性が高い。

5)低粘度、低表面張力であるため、被洗浄物への浸透力が大きい。

6)アルコールを添加した組成物は、水切り乾燥性に優れる。

7)適度な沸点を持ち、蒸発潜熱が小さい事より蒸気洗浄にも適する。

HFE-347pc-fの洗浄性能評価>

HFE類は、他のフッ素系のフロン代替洗浄剤と同様に単独では、油脂類をほとんど溶解することができないが、低表面張力、低蒸発潜熱、低毒性、不燃性等の特長を持ち、蒸気洗浄や水切り乾燥用の溶剤として優れた性能があることがわかった。

1)HFE-347pc-fを蒸気乾燥に使用した場合、従来のIPAによる蒸気乾燥と比較して乾燥時間を大幅に短縮することができた。また、清浄性も良好であった。

2)図1に示すような洗浄システムの乾燥工程にHFE-347pc-fの蒸気乾燥を組み込んで実用的な洗浄物(金属部品、プリント基板、レンズなど)を処理した結果、洗浄性、乾燥性において非常に良好な結果が得られた。

3)図2に示すような水切り乾燥システムの水切り工程にHFE-347pc-fとアルコールからなる水切り剤、蒸気乾燥工程にHFE-347pc-fを用いて評価を行った結果、洗浄性、乾燥性に優れた結果が得られた。このようなシステムは、水系で洗浄を行いたいが短時間で乾燥したい、清浄度が高く、シミ無乾燥を行いたいというニーズに最適なシステムである。

また、現在もHFE-347pc-fと界面活性剤からなる水切り剤の研究を行っている。

(これは、「第6回JICC洗浄技術フォーラム(平成13年9月13日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)


「排水の処理と回収技術について」 要旨

神綱パンテツク(株)
環境装置事業部
水処理本部
担当次長 知福 博行

1.排水処理への取り組み

 最近ではISO14001に取組む企業が増えており、排水処理設備も省エネルギー・廃棄物削減・ゼロエミッションといったキーワードで見直されています。

このような背景より、設備の効率化や排水の回収再利用・廃棄物の再資源化などが重要なテーマとなっています。

2.循環型社会の形成

 ゴミの場合と同様に@排水を「出さない」ことA出た排水は「出来るだけ資源として使うこと」Bどうしても再利用できない排水は「きちんと処分すること」の3つが大切です。

このためには製造プロセスでの工夫による排水量・排水負荷の削減や、濃度・排水の種類による分別排出が必要です。排水処理においてはエネルギー使用量が少なく、汚泥などの二次的な廃棄物の発生が少ないプロセスや機器の選定が必要となります。

3.水リサイクルシステム例

 排水は無機系と有機系に分別し、さらに有害物を含む系統を分離しておきます。また、有機系ではBODで1000mg/L程度を境に分別排水しておくと、嫌気処理の適用も可能となり経済的なプロセスが設計できます。

4.排水処理の計画

 健康項目と生活環境項目について全国一律の排水基準が定められていますが、生活環境項目では各自治体などでより厳しい上乗せ排水基準が定められる場合があります。この上乗せ排水基準は、その公共水域の汚染状態や、利水目的などによって決められています。 

 汚濁成分はその種類と形態より適用できる処理法が異なります。濁質が固形物の場合には固液分離が有効です。有機系の溶解性物質については酸化分解・還元分解・吸着などにより除去し、無機系の溶解性物質では中和・酸化・還元などにより不溶性物に変えた後、固液分離で除去します。イオン類はイオン交換樹脂・透析膜・逆浸透膜などで分離します。

5.排水処理技術

 水処理の方式は物理化学処理と生物処理に分けられます。これらはさらに次のような要素技術に分けられます。

スクリーン、凝集 沈殿装置・浮上装置、砂ろ過装置、膜ろ過装置、活性炭吸着装置、オゾン酸化装置、逆浸透膜装置、生物処理装置(好気性処理・嫌気性処理)

嫌気性処理ではメタンガスを含むバイオガスが得られるため、省エネルギーの処理が

可能となります。

6.排水の回収再利用技術の紹介

液晶での洗浄剤であるDMSOを含むリンス排水(TOC140mg/L)をBCF生物膜ろ過

と膜分離装置、逆浸透膜装置を使用したシステムで水道水質以上まで処理し、純水装置の原水として使用している例を紹介します。

7.環境負荷低減技術の紹介

超臨界水酸化装置(SCWO):省廃棄物

 好熱性微生物による汚泥可溶化装置(S−TE):省廃棄物

 高効率曝気装置(PABIO FlexPABIO Mix):省エネルギー  

 機能性洗浄水 :省薬品、省廃棄物

 超臨界二酸化炭素洗浄装置 :省薬品、省廃棄物

8.まとめ

(1) 効率的・経済的な排水処理・回収を行うためには、製造プロセスとの連携が必要です。

(2) 経済的で地球に優しいプロセス(省エネルギー、省廃棄物、省薬品)の選定が大切です。

(これは、「第14回洗浄技術セミナー(平成14年2月22日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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