- -


省エネルギーを徹底追求した
最新の液晶パネル新工場

セイコーエプソン株式会社 豊科事業所
D環境技術開発部
主任 望月 申治

中小型カラーLCDの携帯情報機器向け需要急拡大に対し、当社最大級の新工場を建設したが、工場設計では、機械の使用用力を電力換算して省エネ設計を実施するとともに工場全体のエネルギー消費を予め計算した。建設時は、消費電力と同時に各用力消費量をも測定する手段を準備・施工して稼動後の設計検証に備えた。立上げ時には、目標値に用力調節し、単位生産数当りのエネルギーを当社従来比40%以上の削減を達成した。

新工場建設に当たっては、これまであまり試みてこられなかった建物・基礎設備(用力供給)・プロセスの生産機械を含む工場全てを一つのシステムとして捉えた設計手法にチャレンジするとともに、消費エネルギーの事前の予測と完成後の検証にも取り組み、今後の当社の工場建設のモデルとなることを目指した。

(1) 現状の分析

 用力に係る設備(ポンプ、冷凍機、ボイラなど)を用力毎に系統分けを行い、それら設備で消費するエネルギーを作り出している用力の単位量当りで評価して、用力の電力換算値を出した。

 生産機械で消費している各用力量を元にして、これをこの電力換算値で電力として把握し生産機械の電力消費量と合算して、機械の総エネルギー消費量を算出した。

 一般的に、電気エネルギー消費量のみの観点で生産機械装置のエネルギー消費を把握した場合、熱処理設備(オーブンやアニール炉など)や真空機器(薄膜成膜装置、プラズマエッチング装置、真空蒸着機など)が消費の大きい設備として上位に来ることが多い。

 用力の電力換算値を元に、用力と電力とを合算して生産機械の総エネルギー消費とした場合の工程別エネルギー消費量を比較した。この分析から、C/D(フォト工程レジスト塗布装置・現像装置)とWET(洗浄装置)が、SP(スパッタ成膜装置)やANL(アニール炉)を抜いて上位に来ていることが明らかになった。

 従って、工場を一つのシステムとして捉えた場合、C/DやWETが、SPやANLよりもエネルギー消費に与える影響が大きいということになる。整理してみると以下のようになる。

1.省エネルギーを優先的に進める生産機械として、C/DやWETを、SPやANLと同様に考え取り組む必要がある。

2.生産機械によっては、電力よりも他の用力使用量を削減した方が工場全体のエネルギー消費に与える影響が大きい場合がある。また、電力以外の着眼点で生産機械の省エネ設計が可能となる。

(2) エネルギーシミュレーションとエネルギー測定

 本件の省エネ活動において、省エネ設計に劣らないくらい重要な活動が、エネルギーの測定であると考えた。プロジェクト推進の早い時期から、各用力の測定方法と測定機器を検討し、工場稼動後に、それぞれの用力値をサプライサイド(用力の送り出し点)とユースポイント(個々の生産機械へのつなぎ込み点)の両方において測定することを目指した。その結果、基礎設備設計値(仕様)と生産機械設計値(仕様)とを測定結果と比較検証し、問題点の存在箇所を具体的に明らかにするとともに、工場立上げ時の調整と稼動後の更なる省エネ活動への展開を容易にしようというものである。

 また我々は、本件の一連の省エネ活動をまとめることで、工場やプロセスを企画した段階でエネルギーを算出し、実際に工場や生産機械を設計する前に仮想省エネルギー活動を展開できるような、製造工場全体とプロセス別のエネルギーシミュレーション技術の構築に貢献することができた。

(これは、「第18回洗浄技術セミナー(平成15年6月13日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)


今後のフッ素系溶剤の展望

旭硝子株式会社 化学品カンパニー
事業統括本部 CS推進グループ
花田 毅

 旭硝子では、1960年代中頃より溶剤の製造を開始し、現在では、塩素系溶剤として塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンを、フッ素系溶剤としてアサヒクリンAK-225(HCFC-225)、フッ素アルコール等を生産している。中でもアサヒクリンAK-225は、選択的な溶解力があり、乾燥性が高い、浸透性が高い、不燃性、材料への影響が低い、熱的・化学的に安定、取扱い時の法規制が非該当などの特長を有し、精密部品の洗浄・乾燥用途を中心にお客様より高い支持を頂いている。また、アサヒクリンAK-225は、洗浄用途以外にも、溶媒や熱媒体などの用途にも使われている。

 昨今、お客様ではISO-14000を中心とした環境に配慮した企業活動が活発になってきている。しかし、アサヒクリンAK-225は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロではなくPRTR法に該当することより、PRTR法に該当しない次世代の溶剤の提案を求めるお客様の声が高まってきている。これに対し、弊社では、PRTR法に非該当である代替物質として、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)に焦点を当てて開発を進めてきた。そして、HFEとしてアサヒクリンAE-3000シリーズ、HFCとしてアサヒクリンAC-2000シリーズ、AC-4000シリーズの3種類の溶剤を候補物質として選定した。これら3種類の溶剤は、沸点、表面張力、蒸発潜熱、引火点がない等の物性はアサヒクリンAK-225に近いものの、洗浄力の指標であるKB値(カウリブタノール値)は20以下であり、アサヒクリンAK-225に比べると汎用性は低くなる。このため、主な用途としては、水切り後の乾燥、すすぎ乾燥などの乾燥用途や熱媒体用途を中心に想定している。

 3種類の溶剤を比較した場合、AE-3000は、沸点がAK-225に近い、環境負荷、価格、AC-2000はアルコールとの共沸組成物におけるアルコールの添加濃度が高い、材料への影響が小さい、AC-4000は相溶性が高い、材料への影響が小さい、と特長が異なる。そして、お客様の要望に対しては、これまでの溶剤事業やAK-225の開発、お客様への技術対応を通して得られたノウハウを活かし、特長の異なる溶剤の中から溶剤を選定する、言わばカスタムメイドでの対応を考えている。そして、弊社では、マーケティング・商品開発・製造プロセス開発が一体になって対応できる体制を作り、さらにお客様に魅力的な商品をお届けできる様な活動を継続していく所存である。

(これは、「第18回洗浄技術セミナー(平成15年6月13日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

元に戻る