環境負荷低減型化学洗浄

(株)EME 冠木 公明

 21世紀の重要課題の一つである地球環境を護るための努力があらゆる産業分野で取り組まれている。産業洗浄においても、たゆまない日進月歩の洗浄技術によりこの問題解決に努力している。

 ここでは、産業洗浄として、従来より汎用的に広範囲に利用されている化学洗浄(湿式洗浄)について、環境負荷低減を指向する社会環境を踏まえた洗浄へのアプローチを、演者のユーザにおける洗浄実践事例を交えて述べた。

1. 環境負荷低減を指向する社会環境

 社会環境の整備は、実行する各企業に負うところが基本であるが、それを国内、さらには地球規模レベルで大輪を咲かせるためには、大枠のガイドラインを設けて協調して実践することが肝要である。そのために、行政指導によりさまざまな規制が従前より実施されている。

 産業洗浄に関わる最近の国内の規制動向としては、環境基本法の中に化学物質審査規制法、水質環境基準、PRTR制度、廃棄物処理法、資源有効利用促進法、グリーン購入法等が見られる。また、審議中の環境対策であるEVABAT(Economically Viable Application of Best Available Technology/経済的に実行可能な最良利用可能技術)やVOC(Volatile Organic Compound/揮発性有機化合物)等も今後の産業洗浄に大きな影響をもたらすことが予測されている。

2.環境負荷低減型化学洗浄にアプローチする基本姿勢

 産業洗浄を環境に整合させるためには、基本的には次の2点について、出来るだけ定量的に把握して生産現場に活かしていく姿勢が望まれる;

(1) 洗浄の必要性並びに洗浄品質(清浄度)の把握

(2) 洗浄に関わりの深い法規性等の順守

 これらを踏まえて、最適な洗浄工程や洗浄剤を選定する。

3. 環境負荷の少ない洗浄剤の選択

 最適な洗浄剤の選択は経験に負うところが多いが、表に示すような手順によって着実に進めるのが効果的である。このためには、洗浄剤に関する物性や安全性等をドキュメントファイルにして、内容を更新しながらいつでも利用出来るようにしておくことが肝要であることを実践例を以って述べた。

4. 洗浄実践例

 現在生産現場で実践されている環境負荷低減型化学洗浄について、次の諸事例を解説した;

・レーザビームプリンター(LBP)部品

・ハードディスク駆動(HDD)部品

・ハイブリットIC部品

・GTRモジュール部品

・リードフレーム

・実装基板

・磁気ヘッド部品

・精密アルミ部品

(これは、「第19回JICC洗浄技術セミナー(平成15年11月21日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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