No.62 |
(社)産業環境管理協会環境技術センター主査 遠藤 小太郎 氏 経済産業省の委託事業として(社)産業環境管理協会(日本産業洗浄協議会等協力)がまとめた「VOC排出抑制の手引き」およびその「参考資料」などの配布資料により、改正大気汚染防止法として平成18年4月から実施されているVOC排出抑制についての講演である。産業洗浄に関わりの深い実施内容は次の如くである; 1.“VOC”とは “VOC”は“Volatile Organic Compound”の略で、わが国では「排出口から大気中に排出され、また飛散した時に気体である揮発性有機化合物」(改正大気汚染防止法)と定義されている。 2.VOCの排出抑制 VOCが大気に存在すると、空気中の塵埃などを核とした浮遊粒子状物質(SPM,Suspended Particlate Matter)となって光化学スモッグや光化学オキシダントなどの大気汚染の原因となることが知られている。これら物質は健康や地球環境に著しい害を与えることから、世界的にVOCの排出抑制に取り組んでいる。 環境省の調査によれば、国内のVOC総排出量は、2000年度で約185万トン/年と推計されており、このうち工場等の固定発生源が約150万トン/年で、その約9%(約13.5トン)が産業洗浄剤分野とされている。但し、この総排出量は過大推計との指摘があるので、現在見直しが行われている。総排出量の残りの約20%は自動車などの移動発生源である。 この総排出量を、2000年度を100として、2010年度までに約30%削減するのがわが国の方針である。洗浄分野では約4トンの削減が目標である。 3.わが国のVOC排出抑制指針 VOC排出抑制の上記した約30%の削減は、"法規制"で10%、"自主的取組"で20%を達成しようとしている。洗浄分野について述べれば、 (1)法規制対象 VOCが空気に接する面の面積が5u以上の洗浄施設などでは、排出量の上限が400ppmCに制限され、その排出記録を毎年所轄自治体に届けることが義務付けられている。ここで、「ppmC」とは、VOC化合物の炭素数に排出濃度を乗じた値が40ppmCを超えてはならない。また、VOCが複数成分から成る場合は、それぞれのVOC濃度比で計算し加算した値となる。届け出義務違反並びに排出抑制勧告に従わない場合は罰則規定がある。 (2)自主的取組 法規制対象施設は排出量が多い施設に大網をかけようとするものであるが、それに該当しない施設が多いのが実態である。そこで、非該当施設でも法規制内容を自主的に厳守してもらうのが"自主的取組"である。これの実施マニュアルの作成が現在行われている。 なお、法規制に適合する施設の新設や改造などには、低利融資制度や優遇税制が設けられている。 4.VOC排出抑制に関する情報 VOC排出抑制の重点業界は、現在の排出量が多い順に、塗料、給油・給槽所、洗浄剤、化学製品、接着剤、インキ、クリーニング、ゴム製品が挙げられており、VOC排出抑制に関する情報はこれら工業会等を通じて逐次周知徹底されている。日本産業洗浄協議会では産業洗浄に関して対応している。 冊子としては、次の資料が役に立つ; ・ 経産省:「VOC排出抑制の手引きー自主的取組の普及・促進に向けてー(第2版)」(平成18年5月) ・ 経産省:「VOC排出抑制の手引きー参考資料ー」(平成18年5月) |
(これは、「第27回JICC洗浄技術セミナー(平成18年11月17日開催)より、事業推進委員会セミナー担当文責でまとめた講演概要です。)