1.日本ゼオン、次世代のフッ素系の化合物の開発と実用化でダブル受賞

 日本ゼオン(社長 中野克彦)は、通産省工業技術院物質工学工業技術研究所(久保田正明 所長)と共同開発した新規フッ素系化合物2品、即ち、一品は化学名:ヘプタフルオロシクロぺンタン(商品名:ゼオローラH)、もう一品は化学名:オクタフルオロシクロぺンテン(商品名:ゼオローラZFL-58)の開発と実用化の実績に対し、本年5月25日に日本化学工業協会から第32回日本化学工業協会技術賞を、また本年5月28日に化学・バイオつくば財団から第8回化学・バイオつくば賞をそれぞれ授与された。

 受賞理由は、地球環境問題を強く意識した研究を推進し、オゾン層を破壊する恐れが無く地球温暖化への影響が極めて小さいという、従来には無い地球環境にやさしい材料(溶剤と半導体製造用ドライエッチング剤)を開発し、更にその工業的製造技術を開発すると共に、各工業分野での性能、有用性を明らかにして実用化にまで結び付けた実績が高く評価されることである。

 実際に、ゼオローラZFL-58は、高集積度DRAM、システムLSI、ロジック、フラッシュメモリーなど先端的半導体製造用ドライエッチング・ガスとして、エッチング装置の世界的な大手メーカーである東京エレクトロン社から同社装置用戦略ガスとして推奨を受けている。さらに同品は、日米韓台の大手DRAMメーカーからダマシンプロセスなど新しい製造プロセスへの優れた適合性と64メガ以降の微細加工における高性能が認められ、既に採用決定社数は世界大手半導体メーカー10社以上を数え、その中の数社においては新設工場での量産使用が開始されている。同品は、今後の64メガ以降の半導体製造におけるエッチング・ガスの本命と目されるようになってきており、現在各社が新増設中の新鋭工場が完成した暁には、更なる量産使用の拡大が期待される。

 また、ゼオローラHは、米国環境保護庁から'98年・成層圏オゾン層保護賞を受賞している。同賞は世界中を対象に成層圏オゾン層保護に貢献した者に授与されている。

2.ゼオローラについて

 ゼオローラには、ゼオローラHとゼオローラZFL-58の2品がある。同品とも、オゾン層を破壊する恐れがなく、大気寿命が短いので地球温暖化に与える影響も極めて少なく、且つ不燃性・非爆発性という優れた特長を持っている。

(1)ゼオローラH:大気寿命が従来使われているパーフルオロカーボン(PFC)の1000分の1以下と短く、PFCを置き換えると地球温暖化ガス削減率97%、また従来のHFCと置き換えても削減率が80%以上に相当するという、オゾン層及び地球環境保護に有効な化合物である。また、毒性が低く、優れた安定性を有し、不燃性であり、種々の物質の溶解性も大きく、溶剤、洗浄剤、乾燥剤として最適である。

(2)ゼオローラZFL-58:大気寿命が1.0年(実測値)と短く、地球温暖化係数が小さい。シリコン酸化膜とシリコン窒化膜あるいはレジスト、シリコンとのエッチング選択比が極めて大きいのが特長。半導体の64メガ以降の次世代DRAMや、新しいコストダウン・プロセスである銅配線技術を使用したパターンのエッチングに特異的な高性能を示す。