技術情報誌「産業洗浄」特集のサマリー

第2号 特集“エレクトロニクス産業における洗浄”

総論

キャノン株式会社   基盤技術開発本部 材料技術開発センター 分析技術開発部

分析技術第二研究室 室長

  中嶋 生朗 Nakajima Ikuo

日本の自動車産業とエレクトロニクス産業の構造上の相違点を指摘し、苦戦するエレクトロニ クス産業の復活への提言を総論として記している。その手段のひとつは、これまでディスクローズして きた製造技術をブラックボックス化することであり、特に洗浄技術に注目すると特許による権利と 低環境負荷の洗浄技術が「キラーテクノロジー」になるとしている。

(技術論文)

局所クリーン化洗浄技術

株式会社 独立行政法人 産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門 主任研究員

  原 史朗 Hara Shiro

コスト,競争力強化、地球環境負荷低減を目的とする、ミニマルマニュファクチャアリングの代表 例として、新規のシステム技術である局所クリーン化生産方式を紹介する。 特に産業技術総合 研究所が開発したハイパーミニプロセスシステムの概要と、局所クリーン化洗浄技術の技術的な意義、実験手順、実験結果およびその効果をSiデバイスを具体例に解説している。

次世代半導体デバイスにおける超精密洗浄技術

ソニー株式会社 半導体事業部 セミコンダクタテクノロジー開発部門プロセス技術部 

FEOL&WET技術担当部長

  岩元 勇人 Iwamoto Hayato

次世代半導体デバイスにおける超精密洗浄技術の課題とそれらを解決するための技術例をテーマ別に紹介する。すなわち「微細パターン対応洗浄技術」「アッシングレジスト剥離技術」「物理洗浄の有効活用」「ウェハーベベルのケア」の四つのテーマについて、各技術の現状、技術課題、解決策および効果を実例を挙げて解説している。

液晶基板の洗浄技術

芝浦メカトロニクス株式会社 技術本部 研究開発グループ 技監

  廣瀬 治道 Hirose Harumichi

成膜前や各種処理後のガラス基板上の異物や有害膜を除去するため、紫外線照射によっ て有機汚染膜を分解除去した後、高密度ブラシ、キャビテーションジェット、メガソニック洗浄を順 次行なってサブミクロンまでの微粒子を徹底的に除去している。  最近の大型化した基板では純水使用量を削減できる高圧ジェットや高圧ミストジェットツールが 導入され、また金属汚染を嫌うTFT工程では機能水のスピン洗浄が採用されている。  新しく製品化した環境調和をコンセプトにした縦型洗浄装置・剥離装置についても紹介した。

フリップチップ実装における最新洗浄技術

荒川化学工業株式会社 機能材料事業部 企画グループ グループリーダー

  前野 純一 Maeno Jyunichi

半導体の大容量化、高周波化でフリップチップ実装の狭ピッチ、狭隙間化が進み、はんだの 鉛フリー化により生成するスズ塩の洗浄除去が困難になっている。また、ウェーハや基板の薄型 化によりバッファーコート剤、フィラー材質が変わり、洗浄剤のケミカルアタックを受けやすくなってき た。 素材にマイルドでかつスズ塩を溶解除去できる新洗浄剤と、薄型化、狭間隙化に対応した 洗浄装置を紹介する。

電子部品の洗浄および乾燥へのフッ素系特殊溶剤バートレルの適用

三井デュポン フロロケミカル株式会社 技術サービスグループ 主査

  菊池秀明 Kikuchi Hideaki

フッ素系溶剤の持つ高密度、低表面張力、低粘度などの特性は電子部品の精密洗浄に有効 であるばかりでなく、安全性やリサイクル性にも優れている。それらの有利性を生かした適用例とし て、微粒子除去とフラックス洗浄について述べている。また低動粘度から流れの境界層が薄く、高 密度のため粒子への衝突力が大きく、水やIPAなどより微小粒子の除去に有利である。 フラックスの溶解力を持つグリコールエーテルとのコソルベントシステムは、プロセスの不燃性、速乾 性、洗浄液の再生性に大きな利点が得られる。