総論
Fine Bubble Technology-Principle and Applications of Cleaning
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所 イノベーション推進本部 イノベーションコーディネータ(国際標準化機構 第281 専門委員会 国際幹事)
- 綾 信博 Aya Nobuhiro
気泡は古くから利用されてきた技術であるが、そのサイズが小さくなることにより、さまざまな特性が表れる。これを活用するのがファインバブル技術である。ここ数年、測定法の開発が進み、サブマイクロメートルの大きさの気泡が(準)安定的に存在することが確認され、また測定の活用により発生装置の急速な改良が進み、改めて産業界で注目されている。本稿ではファインバブル技術とその洗浄を中心とする応用について、概括的に紹介する。
技術論文
Application of Cleaning Technology using Microbubble
- 三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 研究員
- 高田 誠 Takata Makoto
当社では、マイクロバブルといわれる直径0.1 mm 以下の微細な気泡を用いた環境配慮型の洗浄技術を開発し、実用化した。本稿では、その技術概要および当社製品への適用例について概説する。社内洗浄工程への導入事例では、当社独自のマイクロバブルの高密度化について、三菱エコキュートの配管自動洗浄機能への適用事例では、マイクロバブルの洗浄力向上による機能強化と洗浄力の見える化について説明する。
Generation / Measurement of Ultrafine Bubbles and their Applicationto the Field of Industrial Cleaning
- IDEC 株式会社 技術戦略部 先端技術推進グループ 推進リーダー
- 前田 重雄 Maeda Shigeoi
年ファインバブル技術の国際標準化が推進されており100μm 以下のサイズの気泡をファインバブル、また1μm 未満のサイズの気泡を特にウルトラファインバブルと呼称し、バブル発生技術と計測技術が連動した形で技術革新が進み、多くの知見が得られるようになってきた。本稿では、バブルの発生原理を紹介し、計測に関する最近の結果を述べるとともにウルトラファインバブルの産業洗浄分野への応用事例と可能性を紹介する。
Precision Cleanings of Metal Plates by employing Sonicationscombined with Ozone Microbubbles in Water
- 元 三重県工業研究所 主幹研究員 工学博士
- 男成 妥夫 Onari Yasuo
金属材料の洗浄には、一般的に界面活性剤、酸、アルカリ、酸化剤などの薬液を組み合わせて用いる水系洗浄、有機溶剤を用いる洗浄、乾式洗浄などの方法がある。しかし、これらの方法では、洗浄工程が複雑であったり、洗浄効果や洗浄コストなどの点で課題を抱えていることが多い。そこで、オゾンマイクロバブルと超音波を併用する方法による精密洗浄を試みたところ、良好な洗浄結果が得られたので、その概要を紹介する。
Development of Cleaning utilizing Fine Bubbles―Cleaning technology that combined fine bubbles with ozone or alkali solution―
- 茨城県工業技術センター 産業連携室
- 石川 洋明 Ishikawa Hiroaki
近年の情報通信機器の小型化により、半導体にはナノレベルの微細加工が求められている。そのため、半導体の信頼性や歩留りに影響する汚染物質の除去を目的とした半導体洗浄工程の役割は重要性を増している。しかしながら、それに伴って、洗浄回数や薬剤の使用量が増加しており、その排液処理が大きな問題となっている。そこで、これらの課題を解決するため、ファインバブルの洗浄力を活用した、薬剤を使用しない、もしくは微量に抑えた洗浄技術の確立を目指して本研究開発を行った。
Application to Agricultural Products cleaning and Industrial Cleaning using the Fine Bubble
- 高知工業高等専門学校・物質工学科 准教授 博士(工学)
- 秦 隆志 Hata Takashi
- 高知工業高等専門学校・電気情報工学科 准教授 博士(工学)
- 西内 悠祐 Nishiuchi Yusuke
- 株式会社坂本技研 代表取締役
- 坂本 正興 Sakamoto Masaoki
ファインバブルを用いた農産物洗浄として高知県の主幹農産物である「生姜」での洗浄実例を紹介し、そこから確認された洗浄効果について他の産業洗浄への応用やその可能性を検証した。ファインバブルは第一次産業における洗浄の他、大きな疎水性相互作用場の形成や濡れ性の向上から油などの疎水性物質の除去、あるいは、噴射洗浄によって衝突・破壊で生じる衝撃力を用いた洗浄などに極めて効果的であり、洗浄分野に広く貢献できる革新的な技術になりうる。