総論
- 日本産業洗浄協議会 企画委員会 副委員長
- 森合精機株式会社 常務取締役 森合 主税
自動車産業の大きな発展がある一方で環境関連の課題も多い。一つは排ガスの問題でその削減に業界各社は真剣に取り組んでいる。第2の課題に、鉱物資源の埋蔵量枯渇の恐れに対処する自動車のリサイクル・リビルトルートの充実があり、そこでは使用済み部品の洗浄の効率化が重要になる。第3の課題は自動車生産工程で行われる洗浄におけるVOC排出抑制の実施である。また新たな傾向として、従来は重量測定で済んでいた汚れが大きさや個数まで管理の対象になってきた。
技術論文
- 株式会社 デンソー 生産技術開発部 主任部員
- 柳川 敬太
自動車部品は小型、精密化が進み、洗浄の重要性が高まりつつある。洗浄と地球環境との関わりも深く、洗浄工程を設計するには「品質」「コスト」に加え「環境」に優しい洗浄方法を選択しなければならない。そのためには洗浄に要求される品質を定量的に見極めることが重要である。特に湿式洗浄では省エネやVOC対策などの環境負荷低減の取り組みが必要とされ、自動車部品の製造工程に導入した環境に優しい洗浄事例や考え方を示した。
- ユケン工業株式会社 技術部 部長
- 武田 龍一
鍍金(めっき)前処理洗浄は鍍金に適するように処理物物表面を洗浄(清浄化)し、活性化することを目的とする。その前処理は水系が主流であり、洗浄薬剤による化学作用と超音波などの物理作用を効果的に組み合わせる。付着汚れは有機系汚れの油のほか溶接部に発生する半焼け油や研磨材と金属粉が混ざり合ったバフカスも対象となる。また、各種合金の種類別に適正な薬剤や工法を施す必要があり、その処理条件や留意点について解説した。
- アルファ・ラバル株式会社 湘南センター プロセス機器営業部 課長
- 青木 裕
デイスク型遠心分離機は、高遠心力によりエマルジョン相もオイルと水に分けられ、1ミクロン以下の微粒子も除去できるものである。本稿ではその歴史、概要を述べた後、水系・アルカリ系洗浄液のリサイクルに応用した事例として、基板メーカーでは3日毎に交換していた洗浄液が6年間そのまま使用できた例や、自動車メーカーでは洗浄液中の油分や固形分濃度が顕著に減少し、長期間安定な洗浄が可能になった例などを紹介した。最後にアルファ・ラバル洗浄液用遠心分離システムについて説明した。
- みずほ情報総研株式会社 環境・資源エネルギー部 シニアコンサルタント
- 和田 宇生
使用済み自動車の部品再利用は、地球環境への配慮や資源の有効利用にとって重要であり、今後の国内市場拡大が期待される。 部品には多様な汚れが付着しており、特にアルミ材の変色防止、洗浄時間の短縮、固着カーボンの除去などが課題となっている。これらの課題に対して、高圧ジェット洗浄、バクテリア洗浄による解決の可能性を検討した。 今後は、洗浄技術の向上、技術情報の普及などが望まれる。
- 株式会社 パーカーコーポレーション 化学品本部 技師長
- 関輪 政弘
パーツユニットは自動車メーカーの他、各パーツメーカーで分業化されているが、本稿では自動車メーカーで生産されている部品を主にその生産過程における洗浄について解説した。 自動車の生産ラインでは、様々な箇所で洗浄が行われている。その代表的な洗浄ポイント、洗浄剤の種類と使用条件について、中間洗浄、最終洗浄、熱処理前後、溶接前後、塗装前の洗浄の各工程に分けて適用事例を明らかにした。また、洗浄剤ごとの性状、適用材質、洗浄方式、特徴などを詳細なリストとしてまとめた。