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環境保護情報

環境保護情報(2005年5/6月)

1.PRTR制度に基づく化学物質排出量等の自主管理マニュアル

 経済産業省は、社団法人化学工学会に委託して、PRTR制度に基づく化学物質排出量等の自主的管理に役立つマニュアル作成のガイドブックを作成し、去る3月に発表した(「平成16年度化学物質国際規制対策推進等調査報告書~化学物質排出量等管理マニュアル」)。

 同書編集に当たって、当協議会は協力を依頼され、「化学物質排出量等管理マニュアルWG」の委員に当協議会会員を推薦その編集に協力した。同書の内容の一部を以下に紹介する。
1.1 自主的管理の重要性

  PRTR制度は、企業の化学物質排出に関する情報を公表することにより、地域全体で化学物質による環境リスクを減らしていくことを目指している。この制度には、報告を義務付けられた企業ばかりでなく、国、地方自治体、NGO、市民がそれぞれの立場で役割をもっており、それらの関係は、図1のごとく表されている。ここで、企業の役割として、“排出・移動量の確実な届出と自主的な情報提供”ばかりではなく、“自主的管理の促進”が求められているのである。

 

<図1>PRTR制度におけるそれぞれの役割

 

  PRTR制度によって届出を義務付けられる企業(以下“事業者”)は、業種、従業員、取扱量について以下のように法律(化学物質排出把握管理促進法)で規定されている。

①対象業種:23業種(製造業、金属鉱業、電気 業、ガス業等)

②常用雇用者数:21人以上

③年間取扱量:第一種指定化学物質の年間取扱量 が1トン以上(特定第一種指定化学物質は0.5 トン以上)

 企業は、届出と同時に、化学物質の適正な管理を自主的に促進することが求められており、そのために、「化学物質管理指針」が定められている。

  この指針は、PRTR制度と異なり、対象事業者には、業種、取扱量、従業員数の制限はなく、特定化学物質を取扱う事業者は全てが対象である。

1.2 化学物質管理指針

  化学物質管理指針については、同法律で、以下のように規定されている。

 “<第3条>・・・事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止するため、化学物質の物理的化学的性状についての科学的知見及び化学物質の製造、使用その他の取扱い等に関する技術の動向を勘案し、・・・指定化学物質等の管理に係る措置に関する指針(以下「化学物質管理指針」という。)を定めるものとする。 ”

 この第3条の規定に基づき、2000年3月30日に「環境省通告1」が公表された(「指定化学物質等取扱事業者が講ずべき第一種指定化学物質等及び第二種指定化学物質等の管理に係る措置に関する指針」)。これが「化学物質管理指針」である。

 化学物質管理指針では、事業者は化学物質の管理及び環境の保全に関する関係法令を遵守することはもとより、本指針に留意して、事業所における指定化学物質等の取扱い実態に即した方法により、指定化学物質等の取扱いに関する管理を実施するよう努めることとしている。

p class=MsoNormal>  同通告による「化学物質管理指針」の要求事項は、図2のようにまとめられている。

 

 

<図2>化学物質管理指針の要求事項


 

1.3 化学物質の管理の体系化

  図2において、「化学物質の管理の体系化」が主要な課題として挙げられている。指定化学物質を取り扱う事業者は、化学物質の環境への排出量の削減を図ることにより環境に対する負荷の低減を図るなど化学物質の適正な管理が求められる。この管理作業を実効をあげながら実施するためには、

 ・化学物質管理の方針を定め

 ・それに基づいた管理計画を定め

 ・管理計画を実施し

 ・管理状況の評価を行い

 ・化学物質管理の方針・管理計画を見直す

ことを、継続的に行うことが重要である。すなわち、環境マネジメントシステムにおけるPDCAサイクルによって、図3のように一連の手続きによって勧めることが実効性のある化学物質の管理である。

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<図3>管理体系図


 

 

 この観点から見ると、化学物質管理指針が求めている事項は、化学物質の管理に焦点が当てられているものの、本質的には環境マネジメントシステムISO-14000の要求事項と大きな相違はない。

1.4 管理計画の策定

  化学物質管理指針によると、指定化学物質取扱事業者は、“化学物質管理の方針を定め、その方針に即して、指定化学物質等の管理の改善を行うための具体的目標を設定するとともに、これを達成する時期及び具体的方策を定めた管理計画を策定すること”とされている。

 管理計画の策定と、その実施と再検討の一連のサイクルは、図4のごとく示される。

 

<図4>管理計画の策定と見直し


 

 この管理改善を具体的に実施するために、先ず管理計画書を作成する。そのために、製造工程の現状を把握するための内部情報としては、操業データ、品質管理データ、事故・トラブルに関する情報が必要である。

 化学物質そのものの情報としては、MSDS(化学物質等安全データシート)、化学物質のメーカー及び顧客の情報が必要である。さらに、周辺の情報として、法規制の動向、最新技術の動向、市民からの情報が必要で、これらの情報を活用して、環境負荷を適正に把握する。把握した環境負荷の現状を分析して、原材料の購入段階、保管段階、使用・製造段階、リサイクル、廃棄段階の全工程に関する利用可能な最良の技術(BAT)と実施コストを勘案して、実施可能な改善方策を検討する。

 管理計画書作成にあたって、検討委員会を組織し、①収集した情報の分析、②問題点の摘出、③改善方法の立案、④改善コストの算出などを行う。 自社の現状把握には、以下の事項が必須である。

①事業所における化学物質等の管理状況の把握

・各工程において使用している原材料の種類、量                  

・指定化学物質等の保管状況(保管場所、化学物質等の種類・量、保管方法)

・指定化学物質等の使用状況(種類毎の使用工程・量)                 

     排出状況(漏洩・発散による排出、排気・排水への排出、廃棄物の量) 

②特定化学物質等の管理体制の現状

 ・管理責任者・担当者の配置状況

・管理責任者・担当者の権限と責任の付与状況 

・事故等の緊急時に備えた体制の現状

     連絡・調整担当の配置又は指名

問題点の摘出には、以下の事項が重要である。

①原材料受入より最終製品の仕上がり出荷まで、 各工程における指定化学物質等の取り扱い、排出、移動、漏洩等を把握し、管理のポイントを 明確にする。

②改善すべき課題を明確にし、管理計画に盛り込む。

③管理方針に反映する。           

1.5 管理体制の整備

化学物質管理指針によると、指定化学物質取扱事業者は、“管理計画を確実かつ円滑に実施するため、指定化学物質等を取り扱う事業所において、管理計画の実施に明確な責任を持ち、管理計画に盛り込まれた措置の実施の権限が与えられた責任者及び担当者を指名すること等により、全ての関係する部門において計画に盛り込まれた措置が確実に実施される体制を整備すること”とされている。 指定化学物質等取扱事業者は、ISO-14000の要求事項におけるように指定化学物質等の取扱いに関する管理計画に対して責任と権限を付与した管理責任者を指名する。また、管理責任者の支持により管理計画を着実に実施し、管理責任者に進捗状況を報告する管理担当者を指名する。

 管理責任者は、管理計画の進捗状況を勘案し、経営トップに管理計画の見直し等を進言し、経営トップは本社機能における経営・環境会議等の場で管理計画の進捗状況の評価を行い、必要に応じて管理方針、管理計画を見直す。

 製造現場においては、承認された、指定化学物質の管理の規定を織り込んだ作業要領に基づき作業を実施する。

 指定化学物質等取扱事業者は、環境保全の問題を生じさせないよう、従業員に対して管理方針、管理計画及び作業要領を周知させ、必要な教育・訓練を実施する。図5は、このような化学物質管理体制のイメージ図である。        

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<図5>化学物質管理体制のイメージ図


<参考資料>

1) 環境省環境保健部環境安全課発行、社団法人環境情報科学センター編集:「PRTRデータを読 み解くための市民ガイドブック~化学物質によ る環境リスクを減らすために~(平成15年度 集計結果から)」(2005.3)

2) 社団法人化学工学会:「平成16年度化学物質 国際規制対策推進等調査報告書~化学物質排出量 

等管理マニュアル~」82005.3)

2.「環境リスクの低い産業洗浄装置等に関する調査研究報告書」

  「環境リスクの低い産業洗浄装置等に関する調査研究報告書」が本年3月に発表された。同報告書は、有限責任中間法人オゾン層・気候保護産業協議会が財団法人機械振興協会経済研究所より平成16年度委託事業として受託し実施したものである。当協議会は、同事業のために設置された委員会へ委員を推薦し、委員会運営の事務局に参加して報告書作成に協力した。

 本報告書の中のいくつかの話題を以下に紹介する。

2.1 環境リスク低減化へ向けた産業洗浄装置等に関する現状の把握

 環境リスク低減化のための産業洗浄の潮流を把握し、環境リスクが低く、事業所等で適用可能な(事業所規模、予算に見合うコストで対応が可能な)産業洗浄装置・洗浄剤を整理し、産業洗浄における環境リスク削減技術および産業洗浄装置・洗浄剤の開発ニーズを含め現状を把握することを目的として、以下の3項目に分けて調査を行っている。

(1)産業洗浄装置の動向の整理

  産業洗浄装置(超音波系、スプレー系、溶剤浸漬・蒸気系)、洗浄周辺付帯設備について、現在市場で入手可能なものの動向を調査し、その特徴、問題点等を分析している。

(2)洗浄剤の動向の整理

  洗浄剤(水系、準水系、炭化水素系、塩素系、フッ素系、臭素系)について、現在市場で入手可能なものの動向を調査し、その特徴、問題点等を分析している。

(3)国内産業洗浄の実態調査

  国内産業洗浄の実態調査として、産業洗浄技術の供給者、利用者の双方を対象にし、アンケート調査とヒアリング調査を行い、洗浄業界全体における現在の洗浄装置・洗浄剤の特徴、課題点、および環境リスク対策の方向性を明らかにしている。 主な調査内容は、国内の洗浄装置で流通・使用されている産業洗浄装置・洗浄剤の種類、使用分野、対象汚れ、環境関連法等への関心度、環境リスク低減のためのニーズ、課題などである。

2.2 産業洗浄技術マップ

  産業洗浄を利用するユーザー企業は、それぞれの洗浄現場で個別の課題を有している。ユーザーが、利用可能な市場の産業洗浄技術から自分の現場に最も適合したものを選択するときに参考になるよう、洗浄作業を安全に確実・適正に実施できる見取り図「産業洗浄技術マップ」を提案している。

  産業洗浄技術のユーザーが、自社の洗浄工程で利用する洗浄剤、洗浄装置等の選択を検討する場合に、その判断基準として、まず、汚れへの適応性、環境特性、経済性等を評価することが重要であることが示されている。

  洗浄装置、洗浄剤等の選択において、産業洗浄がどのような特徴を持ち、どのような環境リスクにさらされているかなどを認識することは、採用後の洗浄現場管理を適切に行う上で欠かせない視点である。

 その「産業洗浄技術マップ」は、以下の4つの表から構成されている。

・マップ1:産業洗浄技術マップ本表(表1)

・マップ2:洗浄剤特徴詳細説明表(表2)

・マップ3:洗浄剤の取り扱い上の注意点表(表3)

・マップ4:洗浄剤の問題点をカバーする装置/システムでの対応表(表4)

2.3 産業洗浄技術戦略の策定

 現在の産業洗浄が持つ課題に解決策を与える開発の方向を示し、その開発で生まれる新規技術を産業洗浄のビジネスにつなげる道筋を探るために、「環境リスク低減化に向けた洗浄技術戦略」が提案されている。

  産業洗浄が目指す方向は、人体や生態系に対して安全性が高く環境破壊の少ない洗浄剤で、より早く、より安く、よりきれいに洗浄を行い、洗浄装置を改良して、装置価格やランニングコストの低減化を図ることである。また、産業洗浄における課題を総合的に克服し、産業洗浄の管理システムを高度化して、環境リスクを制御・コントロールすることができる産業洗浄システムを実現することであるとされている。

この産業洗浄技術戦略として、以下の6項目が提示されている。

(1)洗浄剤等を系外へ排出しない技術

①洗浄剤等を外へ出さない既存の技術:装置の密閉化、蒸留装置や排ガス装置などの洗浄剤回収システムなど、既存の技術を低コスト化,コンパクト化,長寿命化する開発が必要である。

②完全クローズド洗浄システム: 洗浄装置から排出される排気、排液、廃棄物を一切出さないようにする技術の進展を図るべきである。

③超臨界流体洗浄技術:二酸化炭素等の超臨界に近い状態の流体を用いた洗浄方法で、洗浄後、汚れと流体の完全分離と流体回収ができ、汚れた排ガスや排液を環境へ排出しない技術の進展を図るべきである。

(2)安全性がより高い洗浄剤を利用する技術

①機能水洗浄システム:電解イオン水やガス溶解水など水を活性化させて洗浄剤とし、かつ物理的洗浄要素を用いて必要な洗浄力を持たせた洗浄システム。水系洗浄剤に比べ環境負荷が著しく削減される。万能ではないが、かなりの用途で使用できる。

②生分解性の良い界面活性剤の利用

③超臨界流体洗浄技術

(3)乾式洗浄システムの部分的な導入

 以下の乾式洗浄システム技術の進展を図るべきである。

・ブラスト洗浄:コーン粒子、氷粒子、ドライアイス

・プラズマ洗浄:イオン照射、真空プラズマ、大気圧プラズマ

・ガス洗浄:蒸気吹付け、ハロゲンガス

・光洗浄:レーザ洗浄、UV-オゾン

(4)環境リスク低減化洗浄システムを普及させる技術

 産業洗浄のユーザーの生の声として、以下のようようなものがある。

・洗浄装置をコンパクト化したい

・乾燥時間を短縮したい

・密閉型洗浄装置が高くて導入できない

・排ガス回収装置の小型のものがない

・洗浄剤を簡単に交換したい

・洗浄から乾燥まで一貫して無人で作業できる装置がほしい

・洗浄工程で出る廃棄物を減らしたい

・ヒータ、真空ポンプなどの使用でエネルギー消費がアップしている

これらの洗浄ユーザーのニーズに対応した装置、システム上の開発が進むことが必要である。

(5)洗浄性能の評価技術の確立と標準化

  洗浄性能の評価技術を確立して標準化することは、産業洗浄における洗浄効率の向上と環境リスクの低減化の双方に貢献する。

 産業洗浄のユーザーの声として、環境リスクを低減化させるために努力をして洗浄システムを転換したが、洗浄の清浄度や洗浄効率はむしろ下がったという意見も多くある。環境リスク低減と洗浄効果がトレードオフの関係になることは望ましくない。

 洗浄性能の評価技術は、最終的にはユーザーが洗浄システムを自己評価するために有効となるものである。評価技術の確立のために必要な取り組みの例として、下記のものが考えられる。

①「経済的に実行可能な最良利用可能技術(EV ABAT)」の採用・取り込み

  洗浄剤は、多種多様な洗浄現場の全てに適用できる万能なものは、オゾン層保護対策以後存在せず、今後も開発の見込みが立たない。また、化学物質のリスク削減に対応するため、現場の特殊性に対応した化学物質、洗浄装置、作業方法の最適な組合せを選択する必要に迫られている。特に、中小企業の洗浄現場では、スペースの制限、経済性の制約、作業者の現場管理能力等の諸条件を踏まえて、「経済的に実行可能な最良利用可能技術」を多くの選択肢の中から選定する必要性がある。

 そのために、中小企業でも利用可能な自社の現場に適用可能な技術の選定のソフトウェアの開発が求められる。

②洗浄性評価法および評価基準の策定

  洗浄性能の評価および清浄度の判定は、これまで各産業界の洗浄工程、被洗浄物の要求特性、最終製品の品質等に適応するよう、様々な方法で行われてきた。しかし、標準化された評価方法と判定尺度が定まっていないため、定量的な判断が難しいことから、過剰な洗浄性能を洗浄作業に求められるきらいがあった。清浄度の判定にそれらの計測法についてはっきりした基準を設けることは、清浄度を客観的に判断でき、低エネルギーな洗浄プロセスを選択でき、産業洗浄における環境リスクの低減化も可能にするものである。

③洗浄技術科学の体系化した知識のデータバンクの構築

  産業洗浄の技術は、洗浄剤、洗浄装置、周辺装置の複合した技術であり、それを利用する産業界は、多種多様な製造業を網羅している。そのために、産業洗浄に関する科学・技術の情報は、これまで、個々の業種に偏在し検索が困難であった。これらの産業洗浄関連情報を体系的に整理し、データバンクを作り上げることが急務である。

(6)無洗浄システムの開発

 これまでに無洗浄フラックスや潤滑処理鋼鈑などの開発例があるが、さらに環境リスク低減のために、無洗浄システムの技術開発を進めることが求められる。 

2.4 環境リスクの低い、低コスト洗浄装置を普及させる方策案

最後に、環境リスクの低い、低コスト洗浄装置を普及させる仕組みづくりについても、“普及の方策”として提言されている。

(1)情報ネットワークとコンサルティング

 開発された低コスト洗浄装置についての環境リスク低減効果レベルと装置コストの情報を中小企業の洗浄ユーザーへ周知できるよう、各工業界に対するネットワークを構築する。

 さらに、洗浄ユーザーの事情に対応した装置の選択と、実際に洗浄システムを導入する際のコンサルティングができる組織をつくる。

(2)ユーザーの認定

 環境リスク削減となる低コスト装置を導入した洗浄ユーザーに対して、認定を行い、その事実が企業のPR効果になるようにする。(2005.6.22記)

<参考文献>

1)     財団法人機械振興協会経済研究所(委託先:有限責任中間法人オゾン層・気候保護産業協議会):「環境リスクの低い産業洗浄装置等に関する調査研究報告書」2005.3)


〔表1〕産業洗浄技術マップ本表

〔表1〕産業洗浄技術マップ本表(つづき)

〔表2〕洗浄剤特徴詳細説明表

〔表2〕洗浄剤特徴詳細説明表(つづき1)

〔表2〕洗浄剤特徴詳細説明表(つづき2)

〔表3〕洗浄剤の取扱い上の注意点表

〔表4〕洗浄剤の問題点をカバーする装置・システムでの対応策表

〔表4〕洗浄剤の問題点をカバーする装置・システムでの対応策表(つづき)

環境保護情報(2005年3/4月)

1.京都議定書の発効 

 気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく地球温暖化対策を具体的に推進するための取り決めを規定した京都議定書は、去る2月16日に発効した。

 日本政府は、この発効を前提として、今後の地球温暖化対策のあり方に関する検討を昨年から行っていた。経済産業省および環境省の審議会は双方で、そのための答申書の作成を行い、それらの作業は大詰めを迎えた。

1.1 国際討議の推移

  地球温暖化問題への国際的取り組みにより、気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)が1992年5月に採択され、1994年3月に発効した。同条約の締約国は、その翌年から国際会議を開催し、具体的な対策の審議を開始した。以下は、その経緯である。

1995年:気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)において、各国の具体的削減目標を 定める議定書について交渉することが合意され た(「ベルリン・マンデート」)。

1997年:京都で開催されたCOP3において、各国の数値目標を定めた京都議定書が採択された。

2001年:COP6再開会合において、京都議定書の運用ルールについて、主要論点に関する政治合意がなされた(「ボン合意」)。

2001年:11月のC0P7において、その運用ルールがほぼ完成した(「マラケシュ合意」)。

2004年:11月4日、プーチン大統領が京都議定書批准法案に署名し、ロシアの京都議定書批准が決定した。ロシアは国連に11月18日批准書を寄託した。

2005年:京都議定書は、2月16日に発効した。

1.2 日本政府の対応

  以下は、日本政府のとった地球温暖化問題への対応の経緯である。

1997年:12月に内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部を設置。

1998年:6月に「地球温暖化対策推進大綱」を策定。

1998年:10月に「地球温暖化対策の推進に関する法律」が成立。

2002年:3月に「地球温暖化対策推進大綱」を改定。

2002年:6月に京都議定書を批准。

2002~2004年:京都議定書による第1約束期間(2008~2012年)における6%削減の約束 を達成するため、02~04年を第一ステップと して対策を検討。

2004年:予定されていた現行の「地球温暖化対策推進大綱」評価・見直し(04年度および07年度)を1月から開始。

・京都議定書の発効により、既に公布されている「地球温暖化対策の推進に関する法律(温暖化対策法)の一部を改正する法律が施行される。

 また、2004年度に予定されていた現行大綱の評 価・見直しは、「京都議定書目標達成計画」の策定に移行することになった。

 同計画は、この3月下旬に計画案がまとめられ、 その後パブリックコメントを実施し、閣議決定が行われる予定である。

 京都議定書では、2013年以降の枠組みについて、 2005年末までに議論を開始することとされている。今後は、それへの対応が求められる。

1.3 経済産業省の対応

 経済産業省では、産業構造審議会の環境部会地球環境小委員会が、2004年1月から、同大綱の評価・見直しを中心とした審議を開始し、以下のように検討を継続した。

・地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関して、2004年1月(第17回)から8月4日(第24回)にかけて審議。

2004年8月25日に、「産業構造審議会環境部会地球環境小委員会中間とりまとめ - 今後の温暖化対策について -(案)」を発表1)

・同案についてパブリックコメントを募り、98通(意見総数503)の意見を得てとりまとめの策定に活用。

・京都議定書の発効に伴い、「中間とりまとめ」以降の様々な検討状況を踏まえた上で、京都議定書目標達成計画の策定を検討

・本年3月1日の第26回会合において、「今後の地球温暖化対策について京都議定書目標達成計画の策定に向けたとりまとめ(案)」2)発表した。

1.4 環境省の対応

 環境省では、中央環境審議会の地球環境部会が、2004年1月から大綱の評価・見直しの本格的な審議を開始し、同年8月13日に、「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間取りまとめ」3)を公表した。

 その後、同部会は、パブリックコメント募集を

行い、部会における検討を重ねた結果、2005年2月23日の第27回部会において「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを踏まえた新たな地球温暖化対策の方向性について(第1次答申案)」を採択した4)。また、第28回部会では、この第1次答申に提言された内容に加え、京都議定書目標達成に必要となる施策の検証作業を踏まえた「第2次答申案」がまとめられた5)

1.5 日本政府の「京都議定書目標達成計画」

 経済産業省および環境省のそれぞれの審議会で議論された答申書は、パブリックコメントを経て、5月には、閣議決定により、日本政府の「京都議定書目標達成計画」となる予定である。

                               (2005.3.22記)

<参考文献>

1)     「産業構造審議会環境部会地球環境小委員会中間取りまとめ - 今後の温暖化対策について -(案)」産業構造審議会環境部会地球環境小委員会(2004.8.25)

2)     「今後の地球温暖化対策について京都議定書目標達成計画の策定に向けたとりまとめ(案)」:産業構造審議会環境部会第26回地球環境小委員会資料(2005.3.1)

3)「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間取りまとめ」:中央環境審議会地球環境部会資料(2004.8.13)

4) 「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを踏まえた新たな地球温暖化対策の方向性について(第1次答申案)」:中央環境審議会第27回地球環境部会資料(2005.2.23)

5) 「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを踏まえた新たな地球温暖化対策の方向性について(第2次答申案)」:中央環境審議会第28回地球環境部会資料(2005.3.8)

 

2.               平成15年度PRTRデータの概要

  経済産業省および環境省は、去る3月18日に、2003年度(平成15年度)のPRTRデータの集計結果を公表した。この公表は、2001年度より始まり今回は3回目であり、1999年7月に交付された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法)に基づくものである。今回発表されたデータは、対象事業所からの届出を2004年4月1日~6月30日に受け付け、届出対象外の排出量については国が推計して、併せて集計した結果がまとまったものである。

 今回は、届出対象事業所の範囲が広くなり、2年間の猶予期間が終了して、対象化学物質の取扱量が“5トン以上”から“1トン以上”となっている。

 以下には、この集計結果の概要を、両省の報告書およびホームページに従って紹介する1-3)

2.1全国の総届出排出量・移動量

  今回公表されたデータは、2003年度(平成15年度)の1年間に届出対象事業者が把握し、2004年4月1日から6月30日まで届け出たもので、2005年2月末日時点で都道府県及び関係省庁による確認を経て、経済産業省・環境省が把握していたものである。

 以下にその集計結果のポイントを紹介するが、各数値の後の括弧内に過去2回のデータを比較のために(2002年度数値、2001年度数値)の順に併記した。データが一つの場合は、2002年度数値のみである。

(1)全国の総届出排出量・移動量の構成

 今回届出のあった事業所総数は全国で41,079事業所(34,517および31,830)であった。

 全国の事業者から届出のあった総排出量・移動量は530千トン(508および529千トン)であり、内訳は総排出量291千トン(290および313千トン)、総移動量240千トン(217および216千トン)である。

 さらにその区分ごとの内訳と構成をみると図1のごとくである。

図1.届出排出量・移動量の構成

(2)届出排出量・移動量の上位10物質

 届出排出量・移動量の上位10物質の合計は390千トン(367および384千トン)で、総届出排出量・移動量530千トンの74%(72%および72%)に当たる。上位10物質の届出排出量・移動量の合計数量と割合は図2の通りである。

図2.届出排出量・移動量上位10物質とその量

(3)届出排出量の上位10物質

 届出排出量上位10物質の合計は、245千トン(243および260千トン)で、総届出排出量比は84%(84%および83%)である。

 上位10物質の届出排出量の数量と割合は図3の通りである。

図3.届出排出量の上位10物質とその量

  届出排出量上位10物質については、原文では、以下のように排出経路ごとの上位10物質が紹介されている。

・大気への届出排出量上位10物質

・公共用水域への届出排出量上位10物質

・事業所内の土壌への届出排出量上位10物質

・事業所内の埋立処分の届出排出量上位10物質

・大気への届出排出量上位10物質

詳細は割愛するが、その中の「大気への届出排出量」は以下のごとくである。

・大気への届出排出量上位10物質

 10物質合計228千トン(231および252千トン)、大気への総届出排出量比91%(90%および90%)。上位10物質の順位は、第1回および第2回とまったく同じで以下の通りである。

・トルエン:119千トン(123および132千トン)

・キシレン:48千トン(47および52千トン)

・塩化メチレン:25千トン(25および27千トン)

・エチルベンゼン:13千トン(9.9および9千トン)

・トリクロロエチレン:5.8千トン(6および6 ト 

 ン)

・二硫化炭素:5.0千トン(4.9および7千トン)

N,N-ジメチルホルムアミド:3.9千トン(4.6お    

 よび6千トン)

・スチレン:3.8千トン(4.1および5千トン)

・塩化メチル:3.7千トン(3.9および4千トン)

・テトラクロロエチレン:2.0千トン(2.3およ  

 び2.3千トン)

(4)届出移動量の上位10物質

 届出移動量上位10物質の合計は、159千トンで、総届出移動量比は66%である。

 上位10物質の届出移動量の数量と割合は表1の通りである。

表1.届出移動量の上位10物質

 届出移動量については、原文では、以下のような移動経路ごとの上位10物質が紹介されている。

・事業所外への廃棄物としての届出移動量

・下水道への届出移動量

(5)全国の業種別の届出排出量・移動量

 45業種の届出排出量・移動量の合計は、530千トン(508および537千トン)で、製造業23業種の届出排出量・移動量の合計は、505千トン(489および519千トン)で全体の95%(96および97%)に当たる。

 また、排出量・移動量の多い上位10業種の合計は437千トン(425および450千トン)で、総届出排出量・移動量の82%(84および84%)に当たる。

上位10業種は以下の順である(図4)。

①化学工業:133千トン(128および137千トン)

②輸送用機械器具製造業:62千トン(61および65 千トン)

③プラスチック製品製造業:45千トン(43および 49千トン)

④ 鉄鋼業:44千トン(41および39千トン)

⑤電気機械器具製造業:32千トン(34および30 千トン)

⑥非鉄金属製造業:30千トン

⑦ 金属製品製造業:28千トン(18および28千ト ン)

⑧出版・印刷・同関連産業:24千トン(28および 31千トン)

⑨パルプ・紙・紙加工品製造業:21千トン

⑩窯業・土石製品製造業:16千トン

図4.届出排出量・移動量上位業種

2.2 届出排出量・移動量上位物質からみた対象業種の特徴

  届出排出量・移動量の合計上位5物質(トルエン、キシレン、塩化メチレン、マンガン及びその化合物、鉛及びその化合物)については、業種に係る特徴を示している。表2には、届出排出量、届出移動量、大気への届出排出量上位10物質の比較を示す。

表2.届出排出量、届出移動量、大気への届出排出量の上位10物質

 ここでは、その中から塩化メチレンの説明を以下に紹介する(括弧内は前回のデータ)。

・塩化メチレン

  塩化メチレンの届出排出量・移動量の合計は34千トン(34千トン)(全体の6.4%(6.7%))で、このうち届出排出量の合計は25千トン(25千トン)(全体の8.5%(8.7%))を占め、そのほぼ100%(100%)が大気への排出となっている。(中略)

  塩化メチレンの届出排出量・移動量の上位10業種は、

①化学工業9.7千トン(9.5千トン)

②金属製品製造業4.3千トン(4.4千トン)

③輸送用機械器具製造業3.4千トン(4.2千トン)④プラスチック製品製造業3.2千トン(3.4千ト  ン)

⑤電気機械器具製造業2.6千トン(2.5千トン)

⑥木材・木製品製造業2.3千トン(1.9千トン)

⑦その他の製造業:1.8千トン

⑧一般機械器具製造業1.2千トン(1.0千トン)

⑨非鉄金属製造業0.86千トン(0.93千トン)

⑩精密機械器具製造業0.82千トン)

の順となり、その合計は30千トン(30千トン)であり、塩化メチレンの届出排出量・移動量の合計の89%(90%)に当たる。

 これら上位10業種における届出排出量の届出排出量・移動量に対する比率は、化学工業が40%であるのに対し、他の9業種では、金属製品製造業が88%、輸送用機械器具製造業が85%、プラスチック製品製造業が81%、電気機械器具製造業が84%、木材・木製品製造業が98%、一般機械器具製造業が82%、非鉄金属製造業が86%、精密機械機器具製造業が79%となっており割合が高くなっている。

2.3 業種別の届出排出量・移動量の集計結果

  業種別の届出排出量・移動量の集計結果は、45の業種について、主な状況が説明されている。 ここでは、その中から“精密機械器具製造業”を紹介する(表3参照)。

表3.精密機械器具製造業の届出排出量・移動量の主な状況

精密機械器具製造業の届出排出量・移動量の主  

  な状況

 届出排出量・移動量の上位物質は、塩化メチレン(当該業種内比31%)、トリクロロエチレン(同22%)、トルエン(同9.8%)、キシレン(同6.3%)、エチレンオキシド(同5.8%)、HCFC-225(同5.6%)の順であり、これら6物質の届出排出量・移動量の合計は2.1千トンとなり、この業種の届出排出量・移動量全体の81%に当たり。排出量と移動量の比率は、排出量が74%、移動量が26%となっている。

 塩化メチレン、トリクロロエチレンは主に金属部品の洗浄に使用され、HCFC-225は金属への腐食性がなく樹脂などへの作用が少ないため医療用機械器具などの精密部品の洗浄に多く使用されている。

 特定第一種指定化学物質のエチレンオキシドは医療器材のガス減菌処理剤として使用されている。

2.4 都道府県別の届出排出量・移動量の集計結果

  都道府県別の届出排出量・移動量の集計結果では、以下のような整理の結果が紹介されている。

・都道府県別の届出排出量・移動量

・都道府県の届出排出量

排出量最大であるトルエンの都道府県別の届出 

  排出量

・都道府県別の届出排出量上位5物質

 届出排出量・移動量の上位10都道府県は、愛知県静岡県兵庫県山口県埼玉県茨城県神奈川県岡山県千葉県大阪府である。

2.5 全国の届出外排出量の集計結果

(1)届出外排出量の構成

  全国の届出外排出量の合計は342千トン(589および585千トン)であり内訳は以下の通りである(図5)。

図5.届出外排出量の構成

①対象業種からの届出外排出量:55千トン(251および322千トン)、構成比16%(43%および55 %)= 対象業種に属する事業を営む事業者の事業活動に伴って環境に排出されていると見込まれる量

②非対象業種からの届出外排出量:105千トン   

 (123および105千トン)、構成比31%(21%および18%)= 対象業種以外の業種に属する事業のみを営む事業者の事業活動に伴って環境に排出されていると見込まれる量(移動体からのものを除く)

③家庭からの届出外排出量:63千トン(62および69千トン)、構成比18(10%および12%)=家庭から環境に排出されていると見込まれる量(移動体からのものを除く)

④移動体からの届出外排出量:119千トン(154および88千トン)、構成比35%(26%および15 %)= 移動体から環境に排出されていると見込 まれる量

(2)届出外排出量の上位10物質

  届出外排出量の合計342千トン(589千トン)のうち、上位10物質の合計は263千トン(445千トン)で、77%(76%)に当たる(図6)。

図6.届出外排出量上位10物質とその排出量

上位10物質は、

①トルエン:72千トン(158千トン)=溶剤・合成原料に用いられるほか、自動車などの排ガス、接着剤・塗料などに含まれる

②キシレン:67千トン(122千トン)=同上

③直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩:21千トン(20千トン)=洗浄剤などの界面活性剤に用いられる

④ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル:20千トン(21千トン)=洗浄剤・化粧品などに用いられる

p-ジクロロベンゼン:18千トン=防虫剤・消臭剤に用いられる

⑥エチルベンゼン:18千トン(30千トン)=溶剤などに用いられる

⑦ホルムアルデヒド:16千トン(29千トン)=自動車などの排出ガスに含まれるほか、合成原料、消毒剤などに用いられる

⑧ベンゼン:15千トン(17千トン)=自動車などの排出ガスなどに含まれる

⑨D-D:8.6千トン=農薬に用いられる

HCFC-22:7.2千トン=冷媒等に用いられる

 第2回で第9位と第10位であった下記2物質は順位が下がった。

塩化メチレン(第2回に17千トン)、=金属洗浄などに用いられる

,3,5-トリメチルベンゼン(第2回に13千トン)=自動車などの排ガスにふくまれるほか、合成原料などに用いられる

(3)対象業種からの届出外排出量

  対象業種からの届出外排出量の合計は55千トン(251千トン)であり、このうち上位10物質の合計は46千トン(220千トン)で、84%(88%)に当たる。

 上位物質は(図7)、

①トルエン:16千トン(100千トン)=溶剤・合成原料などに用いられる

②キシレン:9.2千トン(50千トン)=溶剤・合成原料に用いられる

HCFC-141b:5.2千トン=洗浄剤等に用いられる

HCFC-22:4.6千トン=冷媒等に用いられる

⑤エチルベンゼン:4.5千トン(12千トン)=冷媒などに用いられる

第2回に第3位と第4位であった、下記の物質は順位が下がった。

③塩化メチレン:17千トン

④トリクロロエチレン:13千トン

図7.対象業種からの届出外排出量上位10物質とその排出量

2.6 届出排出量と届出外排出量の合計

(1)届出排出量と届出外排出量の合計の構成

  届出排出量と届出外排出量の合計は632千トン(880および898千トン)であり、このうち届出排出量は291千トン(290および314千トン)、構成比46%(33%および35%)、また届出外排出量は、対象業種55千トン(251および322千トン)、8.6%(29%および36%)、非対象業種105千トン(123および105千トン)、同17%(14%および12%)、家庭63(62および69千トン)、同10%(7.0%および8%)、移動体119千トン(154および88千トン)、同19%(17%および10%)を併せた342千トン(589および585千トン)、同54%(67%および65%)となっている。

(2)届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質

  届出排出量と届出外排出量の合計632千トン(880および898千トン)のうち、上位10物質の合計は466千トン(659および647千トン)で、74%(75%および72%)に当たる。

 上位10物質は(図8)、

①トルエン:191千トン(281および221千トン)=自動車など の排ガス、接着剤・塗料などに含まれる

②キシレン:115千トン(169および111千トン)=同上

③エチルベンゼン:31千トン(40千トン)=溶剤などに用いられる

④塩化メチレン:27千トン(43および84千トン)=金属洗浄などに用いられる)

⑤直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩:21千トン(20および33千トン)=洗浄剤などの界面活性剤に用いられる)

⑥ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル: 21千トン(21千トン)=洗浄剤・化粧品などに用いられる)

p-ジクロロベンゼン:19千トン(18および20千トン)=防虫剤・消臭剤に用いられる

⑧ベンゼン:17千トン(19千トン)=自動車などの排出ガスなどに含まれる

⑨ホルムアルデヒド:16千トン(29および28千トン)=自動車などの排出ガスに含まれるほか、合成原料・消毒剤などに用いられる

⑩鉛およびその化合物:10千トン=バッテリー等 に用いられる

図8.届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量

第2回で第9位であったトリクロロエチレンは順位が下がった。

・トリクロロエチレン:(19および59千トン)=溶剤・洗浄剤・合成原料などに用いられる

2.7 その他

  今回の報告書2)には、その他に、以下の項目のデータと集計結果が付されている。

・業種別の届出事業所数・排出量・移動量

・都道府県別の届出事業所数・排出量・移動量

・都道府県別の届出排出量及び届出外排出量

・全国の届出排出量・移動量(集計表)

・全国の業種別の届出排出量・移動量(集計表)

・都道府県別の届出排出量・移動量(集計表)

・全国の届出外排出量(集計表)

・全国の移動体からの届出外排出量(集計表)

                                (2005.4.14記)

<参考資料>

1)経済産業省:「(プレス発表)平成15年度PRTRデータの公表等について - 化学物質の排出量・移動量の集計結果の概要等 -」(2005.3.18)

2)経済産業省製造産業局化学物質管理課・環境省 環境保健部環境安全課「平成15年度PRTR データの概要 - 化学物質の排出量・移動量の集計結果 -」(2005.3)

3)公表資料が掲載されているホームページ

 経済産業省

 http://www.meti.go.jp/policy/chemical_manage

  ment/law/index.html

 環境省

 http://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html

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(注)以下は整理用の参考資料です。

<図1>総届出排出量・移動量の構成(参考資料2:7ページ)

<図2>届出排出量・移動量の上位10物質(参考資料1:4ページ)

<図3>届出排出量の上位10物質(参考資料1:5ページ)

<表1>届出移動量の上位10物質(参考資料2:10ページ)

<図4>届出排出量・移動量上位業種(参考資料2:11ページ)

<表2>届出排出量、届出移動量、大気への届出排出量の上位10物質(参考資料2:14ページ)

<図3>都道府県別の都道府県・移動量全物質合計2)(参考資料2:38ページ)

<図4>届出外排出量の構成2)(参考資料2:41ページ)

<図5>届出外排出量上位10物質とその排出量2)(参考資料2:42ページ)

<図6>対象業種からの届出外排出量上位10物質とその排出量2)(参考資料2:42ページ)

<図7>届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量 (参考資料2:47ペーシ)

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目次

1.平成15年度PRTRデータの概要

 1.1全国の総届出排出量・移動量

(1)全国の総届出排出量・移動量の構成

(2)届出排出量・移動量の上位10物質

(3)届出排出量の上位10物質

   ・大気への届出排出量上位10物質

(4)届出移動量の上位10物質

(5)全国の業種別の届出排出量・移動量

1.2 届出排出量・移動量上位物質からみた対象業種の特徴

・塩化メチレン

1.3 業種別の届出排出量・移動量の集計結果

・精密機器製造業の届出排出量・移動量の主な状況

1.4 都道府県別の届出排出量・移動量の集計結果

1.5 全国の届出外排出量の集計結果

(1)届出外排出量の構成

(2)届出外排出量の上位10物質

(3)対象業種からの届出外排出量

1.6 届出排出量と届出外排出量の合計

(1)届出排出量と届出外排出量の合計の構成

(2)届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質

1.7 その他

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環境保護情報(2005年1/2月)

1. 気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP-10)

()オゾン層・気候保護産業協議会  大川 章

 

 


真夏のアルゼンチンで開催



  10回気候変動枠組条約締約国会議(COP-10)が、126日~1217日までの予定でアルゼンチン/ブエノスアイレスの国際見本市会場に180ヶ国から約6,500人が参加して行われた。日本からも小池環境大臣以下政府関係者、産業界、環境NGO等約200名が参加した。日本とは逆の真夏で、しかも12月のためクリスマスツリーが飾られていることに戸惑い、さらには時々地下鉄がスト?のためか(スペイン語のため理解出来ず)全面的にストップする等に悩まされながらの二週間であった。



気候変動の適応策が大きな話題に


 

COP-10は、アルゼンチン大統領出席のもとで開会式が行われた後、4つのテーマによる閣僚級会合が行われたが、「10周年の枠組条約:成果と将来の課題」をテーマとした最初のセッションで小池環境大臣がパネリストとして参加した。その他のテーマとして「気候変動の影響、適応策及び持続可能な開発」

「技術と気候変動」「気候変動の緩和;政策とその影響」が取り上げられ議論された。このところ洪水、熱波及び台風などが世界各地で発生していることから、特に途上国を中心に気候変動の適応策に感心が持たれ、閣僚級会合のテーマになったり、本会議の前に行われた補助機関会合でもワークショップが開催された。



  第2約束期の枠組みの議論は? 

 

 2013年以降の第2約束期間の枠組みについては2005年から議論を開始することが既に決められているが、どの様に議論を開始したら良いのかについて非公式に議論されたが

米国の反対で決まらなかった。会議場でも、途上国の多くが、先進国が、①排出削減の義務、②技術移転、③資金援助、の約束を果たしていないことを理由に前に進むことを拒否する発言をし、サウジアラビアで代表される産油国が、温暖化対策により石油消費量が落ちることに対する補償問題を持ち出す等前途多難な問題となっている。



  HFC-23破壊プロジェクトで議論

 

 CDM理事会の報告の中で、HFC-23のプロジェクト2件が保留になっていることの報告が行われたが、その中でモントリオール議定書との関係で何らかの指針を出すように要求があったことから、非公式に議論が行われたが結論が出ず、200511月に開催される

京都議定書第1回会合で再度議論されることになった。

 

 2.揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制

  「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制」については、環境省が2003年9月10日に、報告書「平成14年度(2002年度)大気汚染状況について」を発表し、その報告を踏まえて検討が開始された。

 同検討は、環境省環境管理局長の諮問機関として設置された「揮発性有機化合物(VOC)排出抑制検討会」において、同局大気環境課が事務局となり、2003年9月29日の第1回会合より開始された。

 同検討会の答申書に基づいて、揮発性有機化合物の排出抑制は、大気汚染防止法の改正により実施されることになり、同改正法は、2004年5月26日に公布された。

 改正法では、浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントによる大気汚染の防止のため、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策を行うことが求められている。同法では、規制されない揮発性有機化合物、規制対象となる施設、排出口濃度、濃度の測定などについては、政省令で別に定めるとされている。

2.1 VOC排出抑制の具体的検討の計画

 VOCの排出抑制に係る政省令の検討のために、中央環境審議会大気環境部会の下に「揮発性有機化合物排出抑制専門委員会」と「揮発性有機化合物測定方法専門委員会」が設置された。

 また、法規制の対象となる揮発性有機化合物排出施設は、6つの施設類型に分類されることから、これら6つの施設種ごとの規制方法検討のための基礎データを得ることを目的として、環境管理局長の諮問機関である「揮発性有機化合物排出抑制対策検討会」に下記の6つの小委員会が設置された。

貯蔵小委員会

化学製品製造小委員会

塗装小委員会

印刷小委員会

接着小委員会

洗浄小委員会

同小委員会は、2004年7月から作業を開始し、このほど、固定発生源に対する規制内容に関する報告書(案)の作成を終了した。

2.2 固定発生源に対する規制内容

6つの小委員会は、それぞれの施設類型別に固定発生源に係る対象施設、排出基準値、対象施設規模、裾切り要件取りまとめた「報告書(案)」を2月初旬に発表した。その主な要件は表1のごとくである。

対象施設規模は、1施設当たりの潜在的VOC年間排出量を50トン程度と規定している。

 

<表> 施設類型別のVOC排出規制

2.3 洗浄小委員会における検討

 規制内容を検討した小委員会の報告書(案)の一例として、洗浄小委員会の報告書を紹介する>。

 洗浄小委員会は、平成16年7月28日に、以下の10名の委員で発足した。

鵜澤等(千葉市環境局環境保全部環境規制課課長補佐)

岡崎誠(委員長、鳥取環境大学環境情報学部環境政策学科教授)

亀屋隆志(横浜国立大学大学院工学研究院助教授)

関敦夫((社)日本電機工業会化学物質総合管理専門委員会委員)

関口和彦(埼玉大学大学院理工学研究科助手)

武田光史(全国鍍金工業組合連合会技術顧問)

土井潤一(日本産業洗浄協議会理事)

橋本邦俊((社)日本鉄鋼連盟環境保全委員会委員)

林孝明((社)日本自動車部品工業会環境委員会委員)

松本徹(神奈川県環境農政部大気水質課課長代理(技術調整担当))

 同小委員会は、去る2月2日の小委員会会合において、「報告書(案)」を取りまとめて、上部組織の揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策検討会に提出した。以下はその主要部分である。

(1)   はじめに

浮遊性粒子状物質(SPM)及び光化学オキシダントの原因物質である揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑制するため、大気汚染防止法が改正され、平成16年5月26日に公布された。

これを受けて、同法に規定するVOCの排出抑制制度の実施に当たって必要な事項について中央環境審議会において調査審議されることとなった。これに併せて、環境省環境管理局長が委嘱した専門家による揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策検討会を開催し、中央環境審議会での調査審議に必要な情報を収集、整理して技術的検討を行うこととなった。

検討会には、施設類型ごとに本小委員会も含め6つの小委員会を設置し、規制対象施設、施設ごとの排出基準値、自主的取組と規制のベスト・ミックスを実現するための方策等の検討を進めることとなった。

本小委員会では、平成16年7月から現在までのところ、工業製品の洗浄施設に係る規制対象施設及び当該施設の排出基準値を中心に検討を進めてきたところであり、この報告書はその検討結果を取りまとめたものである。

(2) 検討経緯

第1回(平成16年7月28日):小委員長の選出及び検討の進め方・検討の方向性等についての審議

第2回(平成16年9月16日):業界関係委員から の工業製品の洗浄施設におけるVOCの排出実態及び排出抑制への取組等についてのプレゼンテーション

第3回(平成16年10月27日):対象施設の類型分けの方法についての審議、対象施設の裾切り指標についての審議

第4回(平成17年1月17日):洗浄に係る規制対象施設についての審議、洗浄に係る規制対象施設の排出基準値についての審議

第5回(平成17年2月2日):小委員会報告書についての審議

(3)洗浄に係る規制対象施設

 洗浄に係る規制対象施設は、以下の通りとすることが適当である。

 

施設:工業製品の洗浄施設(洗浄の用にキョウする乾燥施設を含む。

規模:洗浄剤が空気に接する面の面積が5平方メートル以上のもの

 

(理由)

平成16年12月14日に開催された中央環境審議会大気環境部会揮発性有機化合物排出抑制専門委員会において、各施設類型の横断的事項として、規制対象施設の裾切り数値は、1施設当たりの潜在的VOC年間排出量50トン程度を目安にこれに相当するものとすると合意されたことを受けて検討した。

業界提出資料から、潜在的VOC年間排出量50トンに相当する洗浄剤が空気に接する面の面積は見出せない。しかし、個別に見れば、潜在的VOC年間排出量が50トン以上の施設が存在し、その多くは洗浄剤が空気に接する面の面積が5㎡以上である(別添表-1は省略)。

VOC排出量と洗浄剤が空気に接する面の面積については、Kawamura and Mackay式により、洗浄剤、液面面積、温度、風速、風方向の洗浄槽の長さ等を関数として算出することができる。このとき、年間排出量50トンに相当する洗浄剤が空気に接する面の面積は概ね3㎡となる。

これらのことから、潜在的VOC年間排出量50トンに相当する裾切り規模は、洗浄剤が空気に接する面の面積が5㎡以上とすることが適当である。

   なお、洗剤排出量と関係がある裾切り指標について、「空気に接する面の面積」と「送・排風機の能力」との間で優劣は見いだせなかったので、大気汚染防止法において既に採用されている空気に接する面の面積を指標とした。

(用語の定義等)

   洗浄施設とその後の乾燥施設は、構造上、両者が一体不可分のもの(三槽式洗浄機等)が多いため、「洗浄施設(洗浄の用に供する乾燥施設を含む。)」とする。

(4)  洗浄に係る規制対象施設の排出基準値

 洗浄に係る規制対象施設の排出基準値は以下の通りとすることが適当である。

 

施設:工業製品の洗浄施設(洗浄の用に供する乾燥施設を含む。

基準値:400ppm

 

(理由)

環境省による排出濃度実測調査等から、回収、燃焼等の処理を行う前の排出ガス濃度の下位10%値~上位10%値は概ね2~240ppmCである。

このことから、適用可能な技術を用いた場合の排出ガス濃度は400ppmC程度まで低減可能と考えられることから、排出基準値は400ppmとすることが適当である。

(基準の適用)

一つの施設に複数の排出口がある場合には、排出口によって排出ガスのVOC濃度が大きく異なることがある。従って、このような場合には、各排出口からの排出ガスの濃度を排出ガス量で加重平均した値をもって排出基準値への適合を判断できることとすることが適当である。

複数の吸着塔でVOCの吸着・脱着を交互に行う方式の吸着装置などの排出ガス処理装置において、スタート時、切り替え時などに、ごく短時間に限り高濃度の排出が生じる場合がある。このようなやむを得ない特異的な排出については、現行のばい煙発生施設の例にならい、測定範囲から除外することが適当である。

(5)  経過措置

規制に対応するに当たっては、VOC排出抑制対策技術の検討や、対策の導入計画の作成等に十分な時間をかけ、費用対効果のより高い対策を講じることが重要である。また、処理施設の設置場所の確保や、対策工事実施期間中に休止する施設の代替施設の確保など、対策の実施に至るまで相当期間かかるものも多い。さらに、他法令に基づく定期点検など既に予定されている施設点検時に合わせて対策工事を実施できれば効率的である。

 したがって、既設の施設に係る排出基準の適用については、VOCの排出抑制の目標が平成22年度とされていることに留意しつつ、最大限の猶予期間を設けることが適当である。

(6)排出ガスの希釈への対応について

大気汚染防止法に基づく排出濃度規制では、意図的に排出ガスを希釈して排出基準に適合させるという方法がとられることが懸念されるとの意見がある。しかしながら、VOC排出施設における、送・排風量は、製品の品質や作業環境の確保の観点から適正な量が定められるものであり、無闇な送・排風量の図大は製品の品質や作業環境の悪化を招くこととなる。また、送・排風量を増大させるとエネルギーコストも増加させる。このため、VOC排出施設からの送・排風量を大幅に増大させ、意図的に排出ガスを希釈して排出基準に適合させることは、実態上考えにくい。したがって、排出基準値の設定において、排出ガスの希釈に対応した特段の措置は講じないこととする。

2.4 除外物質及び除外物質の補正方法

 揮発性有機化合物測定方法専門委員会では、除外する化学物質について検討が行われ、同時に除外物質の補正方法についても議論された。その案が、1月25日の第4回会合において以下のように提案された。

(1)除外物質

①除外物質選定の考え方

 除外物質は、メタンと同等又はそれ以下の光化学反応性を有するものとする。

 なお、年間排出量が極めて少量のものや、法施行の時点で生産中止となっているものは対象としない。
(理由)

 従来から行われている大気中の炭化水素濃度の抑制対策においては、光化学オキシダントの生成能が低い物質としてメタンを対象物質から除いているところ(昭和51年8月13日、中央公害審議会答申参照)。このため、メタンと同等以下の光化学反応性を有する物質を除外物質とすることが適当である。  

 なお、光化学反応性が低い物質であっても、我が国のVOC年間排出量に占める割合が極めて少ない物質(0.01%以下)や、生産中止になっている物質については、あえて除外する必要はないと考えられる。

②除外物質

 文献調査及びオゾン生成能調査に基づき、上記考え方を踏まえて検討した結果、以下の物質を除外物質とすることが適当である。

  HCFC-141b

  HCFC-225ca

  HCFC-225cb

  HCFC-22

  HCFC-142b

  HCFC-124

  HFC-43-10mee

(1)  除外物質の補正方法

①除外物質の測定方法

 別途環境省が定める測定方法による。

②測定値の補正方法

 施設において除外物質を使用し、又は発生させている場合において、NDIR又はFIDで測定した排出ガス中の揮発性有機化合物の濃度から、個別に測定した当該除外物質の濃度を差し引くことを基本とする(いずれも炭素換算濃度)。

 ただし、メタンについては大気中に2ppmC程度存在することから、当該施設でメタンを使用し、又は発生させていない場合であっても、NDIR又はFIDで測定した揮発性有機化合物の濃度から2ppmC差し引くこととする。

 また、測定に係る負担の軽減の観点から、NDIR又はFIDで測定した揮発性有機化合物の濃度が排出基準値以下の場合には、除外物質の測定をする必要はないとする。

<参考文献>

1)   小田切 力:“揮発性有機化合物(VOC)と浮遊性粒子状物質(SPM) = 大気汚染対策の最近の動向 =(ものづくりと地球環境(第21回)”、メカトロニクス、Vol.28, No.12(2003.12)

2) 小田切 力:“化学物質の法規制と自主管理 = 化学業界のレスポンシブル・ケア活動 =(ものづくりと地球環境(第25回)”、メカトロニクス、Vol.29, No.4(2004.4)

3) 日本産業洗浄協議会:“大気汚染防止法の改正と揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制”、さんせんきょう月報、Vol.9, No.4 (2004.8)

4)     化学工業日報:“VOC排出規制案固まる”、

   (2005.2.1) 

5) 洗浄小委員会第5回会合資料:「揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策検討会洗浄小委員会報告書(案)、(2005.2.2) 

 

3.VOC削減技術ワークショップ

 「VOC削減技術ワークショップ = 規制と自主管理のベストミックスの構築に向けて =」と題するセミナーが去る1月26日に東京都都民ホールで開催された。同セミナーは、東京都とNEDO技術開発機構の共催で、以下のように、開催の趣旨が説明されている。

 “地球環境の保全とヒトの健康への配慮が強く求められる中で、我々の生活を支えている多種多様な化学物質を適切な管理することが益々重要となっています。わが国においても、化学物質排出把握管理促進法の施行や大気汚染防止法の改正などの施策を通して、リスクが懸念される化学物質に対する環境への排出抑制対策が講じられようとしています。

 このような法的手段による環境規制と並んで、今日、強く求められているのは、事業者による自主的な化学物質管理の取り組みです。そして自主管理を実効あるものにするためには、様々な施策が必要ですが、中でも、化学物質のもつリスクを削減する技術、例えば改正大気汚染防止法により規制を受けるVOC(揮発性有機化合物)の回収・無害化処理技術や、有害性の少ない代替物質や新規プロセス技術の開発などが必須であり、これをベースに、安価・小型で中小企業にとっても導入可能なコストパーフォーマンスを有する製品が生まれることが強く期待されています。…”

 同セミナーで、堀史郎氏(経済産業省産業技術環境局環境指導室室長)は「我が国における化学物質管理政策とVOCなどの大気汚染防止対策」と題する講演を行った。

 その中で、揮発性有機化合物に対する産業界の自主取組として、(社)日本化学工業協会と日本産業洗浄協議会の事例が紹介された。

 (社)日本化学工業協会の場合は、協会独自のPRTR制度を紹介している。同協会は、法律で定められたPRTR物質(354物質)に独自に126物質を加え、合計480物質について排出・移動量調査を行い公表している。

 日本産業洗浄協議会の場合は、「経済的に実効可能な最良利用可能技術」(Economically Viable Application of Best Available Technology、EVABAT)の検討を紹介している。この技術は、“ある特定の洗浄現場を想定して、選択肢が様々にある洗浄剤、洗浄装置、環境対応設備、現場作業の制約等の複雑な組合せの中から、個別事業者の状況に最適なリスク削減対策をリスクとコストの評価を経て.効率的に導出する技術”と説明されている(図1、図2参照)。

<参考文献>

・東京都・NEDO技術開発機構:「VOC削減技術ワークショップ = 規制と自主管理のベストミックスの構築に向けて =(セミナー予稿集)」

  (2005.1.26)                               

 

4.塩化メチレン等の作業環境評価基準の変更

 塩化メチレン等の作業環境評価基準(管理濃度)は、従来、労働安全衛生法で規定されている。厚生労働省は、このほど同省告示第369号(官報第3946号、平成16年10月1日)で、労働安全衛生法第65条の2第2項に規定に基づき、作業環境評価基準の一部を改正し、平成17年4月1日より適用する旨の告示を行った。

 これにより、塩化メチレン(ジクロロメタン)の作業環境評価基準は、従来の100ppmから50ppmに、またトリクロロエチレンの場合は、50ppmから25ppmと、これまでの濃度の2分の1に変更される。

 クロロカーボン衛生協会は、この変更に関して、パンフレットを作成関連業界への周知を図っている。

<参考文献>

クロロカーボン衛生協会:「塩化メチレンとトリクロロエチレンの作業環境評価基準が変わります」(2005.2)

<図1>揮発性有機化合物に対する産業界の自主的取組事例 = EVABAT =

<図2>揮発性有機化合物に対する産業界の自主  

    的取組事例 = EVABATによる洗浄現場対策    

    場対策 =



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