日本産業洗浄協議会

メニュー

HOME > 洗浄技術情報 > 「最新環境保護情報」 > 「最新環境保護情報」バックナンバー > 環境保護情報

環境保護情報

環境保護情報(2000年12月)

1. COP6(気候変動枠組条約第6回締約国会議)の概要

 COP6(気候変動枠組条約第6回締約国会議)は、ハーグ(オランダ)で11月13日(月)から24日(金)までの予定で開催されたが、会期を1日延長した上で結論に到らず中断された。会議の概要について、環境庁は11月28日に以下のように発表した。

1.1 評価と概要

(1) 今回会合は、京都議定書の早期発効を目指し、各国が京都議定書を締結可能とするべく、議定書の詳細について合意を得ることが目的であった。今回会合では、これまで行われてきた準備会合の結果を踏まえ、閣僚級の会合において未解決の問題について政治的解決を図る予定であった。

(2) ブロンク議長は、閣僚会合を4つのグループに分け議論の収斂を図ったが、先進国内及び途上国の間で各国の利害が複雑に錯綜し、合意形成は困難を極めた。

(3) 我が国は今回会合の成功に向け、国際的な貢献を図るとの観点から、ブロンク議長の求めに応じ、途上国支援問題に関する先進国間の会議を開催するとともに、川口環境庁長官は、最も対立点の多かった京都メカニズムの小グループの議長を担当し、その議事運営ぶりについては関係者から高い評価を受けた。

(4) 今回会合では、吸収源の取扱い、京都メカニズムについての利用の制限、遵守のあり方が、相互に関連し一体的なものとして交渉が行われた。最終的には合意することは出来なかったが、議論の途中において、各国の立場・考え方の背景がより一層明確化され、相互認識が深まるとともに、先進国間で、各国の意見が合意に非常に近づいたことは、今後の交渉の進展に貢献すると考えられる。特にこれまで妥協が難しいとされてきた捕捉性等について共通の理解に近づく場面や、吸収源について一時我が国の主張に近い形で我が国の吸収量を確保するとともに米国の吸収量を大幅に制限することが可能な方向で意見が収斂に近づく場面もあったことや、アンブレラグループ(日、米、加、豪などの非EU先進国)が途上国への支援策についての具体的な提案を共通ポジションとして提示したことは、今後の交渉の進展に当たり、一つの土台となるものと考えられる。

(5) 最終的には、今回会合で合意が得られず、来年5月〜6月に開催される可能性が高いCOP6再開会合に議論を持ち越す結果となったが、各締約国、各交渉グループのCOP6再開会合の成功に向けた一層の歩み寄りが必要であるとともに、議長の強力かつ合理的なアプローチが必要となろう(注:COP6再開会合は5月21日〜6月1日にボンで開催と決定。)

1.2 各論

 今回会合では、吸収源の取扱い、京都メカニズムの利用の制限、遵守のあり方が相互に関連した一体的なものとして交渉が行われ、それに途上国の支援問題が絡み、多次元連立方程式を解くかの如く複雑な交渉となった。

① 途上国問題

 今回の一体交渉の中で最大の焦点のひとつであった資金関連問題につき、アンブレラグループが提示した案について、途上国は、総論としては歓迎する意見が見られたが、細部については柔軟性を欠き、これを受け入れるに至らなかった。具体的には、追加的資金の必要性についてはコンセンサスが得られたものの資金の目的、規模、運営主体等の詳細について合意に至っていない。キャパシティ・ビルディングや適応措置、GEFへの追加的ガイダンスに関しては、多くの点で合意に至ったものの、産油国対策や技術移転専門家グループ等の主要な論点に関する議論は平行線のままであった。

② 吸収源

今回の一体交渉においては、吸収源の獲得クレジットの制限、自然影響と人為影響の分離が焦点となった。EU及び途上国は、獲得クレジットの規模が大きくなりすぎることや、科学的不確実性等に対する懸念から、吸収源の追加的活動の第一約束期間への適用に対して慎重な姿勢であった。しかし、第一約束期間への適用を前提に、先進国間で、一部の国が過大なクレジットを獲得することにならないよう制限を加えるとともに、省エネルギー対策が進んでいる我が国については目標達成に当たり必要な吸収量を確保するとの方向で妥協の可能性も探られたが、最終的には合意に至らなかった。

③ 京都メカニズム

今回の一体交渉の中で、捕捉性、クリーン開発メカニズム(CDM)の対象事業の制限、CDM執行理事会の構成等が大きな争点となった。捕捉性(京都メカニズムの利用の制限)については、最終局面において先進国間に歩み寄りの姿勢が見られたが、執行理事会の構成については、最終局面において先進国と途上国との間で意見の収斂が見られなかった。CDMの対象事業については、リストを作成し制限することはしないとする一定の方向性が出た。なお、原子力発電や吸収源事業については対象にすべきでないとの意見もあったが、最終的には意見の一致を見ていない。CDMに関するODAの取扱いについては、我が国の主張に沿って、追加的であればODAが利用できるとの文言がブロンク議長の文書に盛り込まれた。

④ 遵守制度

今回の一体交渉の中で、遵守委員会、特に、議定書第3条1項の不遵守に対し結果を課すことを決定する執行部の委員構成が最大の焦点のひとつとなった。議長案はこの点に関し、構成自体は地理的配分に基づき選出するとの、これまでのG77及び中国の主張寄りの案(これによれば、途上国が多数を占める)となっていたところ、我が国を含む複数の附属書Ⅰ国が受け入れ得ないとした。

<参考資料>

1) 環境庁:「COP6(気候変動枠組条約第6回締約国会議)評価と概要」(2000.11.28)

2. 南極オゾンホール、急速に回復

気象庁は、本年の南極オゾンホールについて、急速に回復したと12月1日に以下のように発表した。

2.1 概要

2000年の南極オゾンホールは、9月前半に過去最大の規模(面積、破壊量)に達した後、10月以降は急速に規模が縮小し、11月19日に消滅したと見られる。この消滅時期は、1992年以降で最も早い(図1)。

図1.オゾンホール面積の最大値の経年変化

2.2 2000年の南極オゾンホールの状況

2000年の南極オゾンホールの特徴は、1)例年より発達時期が早かった。2)オゾンホールの面積及びオゾン破壊量で過去最大を記録した(図1)。

3)オゾンホールの消滅時期が1992年以降で最も早かった(図2)、ことである。オゾンホールが急速かつ大規模に発達した点については、オゾンホールが出現する前の本年7月の時点で、極域成層圏雲が形成される目安となる-78℃以下の領域が大きく、極域成層圏雲が広い範囲で発生しやすかったことが要因として挙げられる。オゾンホールの消滅が早かった点については、10月以降の成層圏の気温が上昇し、極域成層圏雲を維持する低温の状況が続かなかったことが挙げられる。

図2.オゾンホール消滅日の推移

<参考資料>

1) 気象庁:「南極オゾンホール、急速に回復〜2000年の南極オゾンホールについて〜」

(2000.12.1)

3. 塩化メチレンの大気環境基準について

環境庁長官の諮問機関である「中央環境審議会第31回大気部会」が去る11月20日に開催された。同会合に同部会環境基準専門委員会が作成した「ジクロロメタン(塩化メチレン)に係る環境基準専門委員会報告」が提出された。同報告書に基づいて、今後の大気汚染物質対策のあり方についてジクロロメタンの取扱いが検討された。その検討結果として、以下のように結論づけられた。 “ジクロロメタンに係る環境基準について:ジクロロメタンに関するヒトの健康影響に係る判定基準と指針について、別添のジクロロメタンに係る環境基準専門委員会報告を了承する。これに基づき、ジクロロメタンに係る大気環境基準設定に当たっての指針値として、低濃度長期暴露による健康影響を未然に防止する観点から年平均値0.15mg/m3以下とし、これが今後とも達成されるよう、引き続き、ジクロロメタンに関する事業者の自主管理による取組を推進するとともに、大気環境の監視を実施していくことが適当である。”

 今後は、環境基本法に基づく“大気の汚染に係る環境基準”の設定が進められることになろう(トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの同基準値はいずれも0.2mg/m3である)。

<参考資料>

・ 環境庁:「中央環境審議会第31回大気部会・関係資料」(2000.11.20)

4. 地球温暖化を防止するための環境税パンフレット「地球の使用料を考える」

環境庁は、このほど地球温暖化を防止するための環境税に関する問題を解説したパンフレット「地球の使用料を考える」を作成した。

 さる11月に開催されたCOP6は結論に到達せずに中断され、その継続審議が来年5月〜6月に再開される。環境庁は、この状況に対応して注目されている事業者や国民が環境負荷に応じた経済的負担を行うという考え方(環境税を課するという考え方)について解説する目的で同パンフレットを企画した。

 同パンフレットは、環境庁が監修し、社団法人環境情報科学センターが制作している。

<写真1>同パンフレットの表紙

<参考資料>

・ 制作・発行/社団法人環境情報科学センター、監修/環境庁地球環境部:「地球の使用料を考える〜子や孫にツケ回しする経済からの変革を目指して」(2000.11)

5. 主要塩素系溶剤統計

当協議会の団体会員であるクロロカーボン衛生協会は、このほど2000年9月までの主要塩素系溶剤の統計を発表した。

同協会のご好意により、同資料の中の工業洗浄剤に係る製品のデータを1991年からの暦年データとともに紹介する(表1)。

<表1>主要塩素系溶剤統計

クロロカーボン衛生協会

単位:トン/暦年

生産量

消費量

販売量

その他

在庫量

輸入量

輸出量

算定消費量

対前年比

トリクロロエチレン

3(91)

51,679

2,613

49,642

8,805

395

14,414

37,660

94.7

4(92)

61,080

1,826

62,077

6,700

797

24,010

37,876

100.5

5(93)

68,416

4,619

59,097

11,400

1,037

17,035

52,418

138.4

6(94)

77,159

2,828

76,184

9,998

2,018

25,284

53,893

102.8

7(95)

83,049

1,269

81,992

10,341

5,870

29,453

59,466

110.3

8(96)

90,350

1,349

86,097

13,790

4,915

30,881

64,384

108.3

9(97)

79,340

11

84,540

8,835

1,918

26,702

54,556

84.7

10(98)

68,165

14

66,594

10,962

1,101

20,590

48,676

89.2

11(99)

75,674

6

79,723

7,287

1,357

29,505

47,526

97.6

12(1-9)

57,981

9

59,214

6,081

1,031

19,409

39,603

118.0

前年比

107.5%

150.0%

102.4%

82.1%

253.3%

93.6%

118.0%

テトラクロロエチレン

3(91)

67,139

17,563

52,488

9,123

12,117

2,672

76,584

76.1

4(92)

63,225

16,115

51,287

7,996

4,165

4,268

63,122

82.4

5(93)

63,866

7,716

57,352

9,222

1,081

8,770

56,177

89.0

6(94)

57,777

4,457

55,459

9,776

696

10,789

47,684

84.9

7(95)

59,934

5,339

61,454

6,160

3,044

15,047

47,931

100.5

8(96)

45,977

620

48,614

5,532

128

11,002

35,103

73.2

9(97)

41,149

1,685

43,580

4,872

5,033

6,251

39,931

113.7

10(98)

33,275

323

32,482

5,555

8,058

3,642

37,691

94.4

11(99)

29,614

5

31,375

3,790

14,765

3,948

40,431

107.3

12(1-9)

20,412

3

20,544

3,547

10,359

993

29,778

100.0

前年比

92.3%

75.0%

86.1%

93.5%

96.1%

31.8%

100.0%

塩化メチレン

平3(91)

82,259

1,526

83,319

212

4,897

5,992

4,467

83,784

105.2

4(92)

83,519

1,162

85,643

4,015

4,428

5,964

2,229

87,254

104.1

5(93)

93,349

654

94,497

9,578

6,814

14,963

2,998

105,314

120.7

6(94)

88,877

430

95,844

10,641

4,201

11,435

3,435

96,877

92.0

7(95)

96,944

333

97,670

12,430

4,630

11,953

6,783

102,065

105.6

8(96)

100,845

231

106,490

10,792

3,992

8,714

9,943

99,616

97.6

9(97)

101,994

260

108,432

12,747

4,128

7,886

5,787

104,093

104.5

10(98)

97,265

217

101,022

11,510

3,512

7,189

5,398

99,056

95.2

11(99)

84,699

224

88,711

10,040

4,486

10,980

4,733

90,946

91.8

12(1-9)

61,436

116

64,432

6,417

6,244

13,005

3,833

70,608

103.5

前年比

93.7%

62.4%

96.9%

88.1%

116.6%

194.0%

93.9%

103.5%

(2000年12月1日)

 (注) 生産量等: 通商産業省大臣官房統計部編、化学工業統計年報

 消   費: 自工場で他の製品の原材料用、加工用、燃料用として消費されたもの。

 販   売: 販売を目的として消費者、販売業者等に出荷したもの。

 そ の 他: ①同一企業内他工場へ出荷したもの、②委託生産の原材料として出荷したもの、

       ③受託生産品を生産業者である委託者に出荷したもの、④自家使用したもの。

 輸出入量: 大蔵省貿易統計

 算定消費量=生産量+輸入量-輸出量  

 前 年 比: 1999年同期実績との対比(%)。

 四塩化炭素: 1999年1月から統計調査廃止。


環境保護情報(2000年11月)

1.地球温暖化問題の国際動向

 今年の地球温暖化問題に関する国際会議の大詰めは、「気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)」であり、来る11月13日(月)から24日(金)までハーグ(オランダ)で開催される。今回の会議の最大の課題は、COP3(1997年の京都会議)で採択された「京都議定書」について、その実施のための細目を決定することである。
 その準備のために、今年も各種会合が国の内外で開催されてきた。その経緯と議論の焦点について以下に紹介する。

1.1 京都議定書の課題

 京都議定書の概要は、表1に示すように、規制対象ガスの排出量について具体的な削減の数値目標を定め、その目標を達成するための制度、仕組み等が規定された。ただし、これらの方策について運用する具体的なルールを細かに定めることは今後の締約国会合の課題とされていた。
 その後、1998年11月に開催されたCOP4(第4回締約国会議、ブエノスアイレス、アルゼンチン)において、これらの検討課題とされた方策の具体的な取り決めをCOP6までにまとめることが決定された(「ブエノスアイレス行動計画」)。
 その後、第5回締約国会議(COP5、1999年10月、ボン、ドイツ)を含めて各種の会議が開催されたが、議論に大きな進展はなく、COP6を迎えることになった(表2参照)。

1.2 COP6の争点

 表1で示した京都議定書の概要の中で、今回のCOP6で取り上げられている主要なテーマは、①京都メカニズム、②遵守制度、③吸収源である。

① 京都メカニズム(排出量取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施)
 ・削減目標に達成に当たって京都メカニズムの利用に定量的な上限を設けるべきか否かを検討(シーリング問題)
 ・CDMのルールを検討
 ・CDMに課せられている途上国の適応のための経費負担は、共同実施及び排出量取引にも課すべきか否かの検討

② 遵守
 ・不遵守時の措置として、罰金等の法的拘束力のある措置を課すかを検討
 ・遵守制度に関する手続き、遵守組織のあり方

③ 吸収源
 ・新規植林、再植林及び森林減少の定義と算定方式(議定書第3条3項)
 ・吸収源の活動を増進させる追加的な人為的活動の種類と適用範囲、算定方式(同3条4項)
 ・3条4項の適用時期

④ 技術移転
 ・技術移転の促進に関する先進国、途上国それぞれの役目分担
 ・技術移転に関する途上国のニーズ・アセスメントの具体的方法、スケジュール等
 ・技術情報の整備、アクセス、活用方法等
 ・新たな資金メカニズム、レビュー組 織の設立、地域センターの強化/設立等技術移転のためのメカニズムの必要性及びそのあり方

⑤ 気候変動の悪影響、対策実施の悪影響への対処
 ・気候変動の悪影響または対策の実施による影響に起因する途上国のニーズや関心を満たすため、どのような行動をとるべきか。
 ・産油国は、補償や、石炭補助金、石油税制の改善などを要求

⑥ 途上国の参加
 ・条約上の義務の見直しの一環として、途上国による温室効果ガス抑制・削減の約束に関し、いつどのように議論するか

<参考資料>

 1)環境庁ホームページ   http://www.eic.or.jp/eanet/cop6
 2)全国地球温暖化防止活動推進センター   http://www.jccca.org/

<表1> 京都議定書の概要
項目(議定書の条文) 概  要
<ポイント> blanc
1.先進国1)の義務 ・ 対象ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定
2.国際協力 ・ 目標達成のための仕組みの導入(排出量取引、クリーン開発メカニズム、共同実施など)(「京都メカニズム」と総称)
3.途上国2)の扱い ・ 数値目標などの新たな義務は導入しない
4.数値目標(レベル) (第3条) (1) 対象ガス :二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6(2) 吸収源:深林等の吸収源による温室効果ガス吸収量を算入(3) 基準年  :1990年(HFC、PFC、SF6は1995年としてもよい)(4) 目標期間 :2008年から2012年(5) 削減目標 :先進国全体で少なくとも5%削減を目指す各国毎の目標→日本▲6%、米国▲7%、EU▲8%等
<具体的方策> blanc
1.政策・措置 (第2条) ・ 先進国は、数値目標を達成するため、エネルギー効率の向上、吸収源の保護・育成、技術の研究開発・利用の促進、紫綬汚染的手法の適用等を講ずる
2.吸収源(シンク) (第3条) ・ 1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少に限って、温室効果ガスの純吸収量を参入できる(第3条3項)
blanc ・ 農業土壌、土地利用変化及び林業分野におけるその他の活動については、第2約束期間以降から適用することを基本とするが、各国の判断により第1約束期間からも適用可能。対象となる活動に具体的範囲等は更に検討した上で決定(第3条4項)
blanc ・ 1990年に土地利用変化及び林業分野が純排出源となっていた国についは、約束期間の割当量算定に当たって、基準年の排出量から、土地利用て変化による吸収量を差し引く(第3条7項)
3.共同達成(バブル) (第4条) ・ 数値目標を共同して達成することに議定書締結時に合意した先進国は、これら諸国の総排出量が各締約国の割当量の合計量を上回らない限り、各国の目標達成の有無によらず、目標が達成されたと見なされる(EUが導入予定)
4.共同実施3) (第6条) ・ 先進国(市場経済移行国を含む)間で、温室効果ガスの排出削減又は吸収増進の事業を実施し、その結果生じた排出削減単位(ERU)を関係国間で移転(又は獲得)することを認める
blanc ・ 議定書の締約国会合(第1回又はそれ以降)が、共同実施事業の検証や報告のための指針を作成することができる(COP6でルールの合意予定)
6.クリーン開発メカニズム (CDM)4) (第12条) ・ 途上国が持続可能な開発を実現し、条約の究極目的に貢献することを助けるとともに、先進国が温室効果ガスの排出削減事業から生じたものとして認証された排出削減量(CER)を獲得することを認める。2000年以降の認証排出削減量の利用を認める
blanc ・ 先進国にとって、獲得した削減分を自国の目標達成に利用できると同時に、途上国にとっても投資と技術移転の機会が得られるというメリットがある
blanc ・ 議定書の第1回締約国会合が、クリーン開発メカニズム(CDM)事業の透明性及び説明責任を、事業活動の監査や検証を独立して行うことを通じて確保するために、方法や手続きを決定(COP6でルールの合意を予定)
7.排出量取引5) (第17条) ・ 排出枠(割当量)が設定されている先進国の間で、排出枠の一部の移転(又は獲得)を認める
8.不遵守 (第18条) ・ 本議定書の第1回締約国会合で、議定書の不遵守に対する適正かつ効果的な手続及び仕組みについて決定
blanc ・ 「法的拘束力を有する措置」を含む本条の手続き及び仕組みは、議定書の改正により採択
9.発効要件 (第25条) ・以下の良方法の条件を満たした後、90日後に発効
(1)55ヵ国以上の国が批准
(2)批准した先進国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全先進国の合計の排出量の55%以上6)
blanc ・2000年9月7日現在:署名=84ヵ国、批准=29ヵ国
(注1) 先進国:「条約」の附属書Ⅰ締約国を指す
(注2) 途上国:「条約」の附属書Ⅰに記されていない国を指す
(注3) 共同実施:
(注4) クリーン開発メカニズム:
(注5) 排出量取引:
(注6) 1990年野付属書Ⅰ国の二酸化炭素排出割合:
(出展:COP3前に各国から提出され、条約事務局が
集計したデータに基づき、環境庁が作成)          

<表2>COP6に向けた対応
年度 気候変動 参考
1999 10月25日-11月5日 COP5(ボン、ドイツ) blanc
2000 4月28日 非公式閣僚会合 (ニューヨーク)
6月12-16日 第12回補助機関会合(ボン)
6月29日 非公式閣僚会合(ワルシャワ)
9月11-15日 第13回補助機関会合(リヨン)
10月4-5日 非公式閣僚会合(オランダ)
11月13-24日 COP6(ハーグ)

4月7-8日 G8環境大臣会合
5月1-8日 IPCC総会
7月21-23日 G8サミット
9月3日 ECO-ASIA
9月4-5日 ESCAP環境大臣会合
9月15-17日 主要国非公式環境大臣会合(ベルゲン)

2.平成12年度(第9回)ブループラネット賞

 財団法人旭硝子財団が主催する「ブループラネット賞制度」は、地球環境問題の解決に向けて、科学的技術の面で著しい貢献をした個人または組織を表彰するものとして国際的にも評価が高い。
 本年度の受賞者は、ティオ・コルボーン博士(米国)とカールヘンリク・ロベール博士(スウェーデン)で、10月27日に国連大学において両氏の受賞者記念講演会が開催された。同財団資料よりこの概要を紹介する。

<写真1>同受賞記念講演会

2.1 ティオ・コルボーン博士

 同女史の受賞理由は、"「環境ホルモン」が人類や生物に及ぼす脅威を系統的な調査により明らかにし、その危険性を警告した業績"による。
 同女史は、現在、WWF(World Wild Fund for Nature, 世界野生生物基金)の科学顧問で、日本でも、同女史共著の翻訳書「奪われし未来("Our Stolen Future")」が広く読まれ、現在内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の問題のきっかけをつくったことで有名である。
 同女史は、北米五大湖周辺の野生生物に関する個体数減少や生殖・免疫等の異常現象を系統的に調査し、自然環境に放出されたある種の合成化学物質が食物連鎖を経て濃縮され、野生生物および危機的な影響を及ぼすことを明確にした。そして、この内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の学際的な調査・ 研究体制の構築と地球規模での規制の必要性を世界に訴えた。その結果、国連・OECD・欧米・日本等で内分泌攪乱化学物質に関する調査・研究・対策への本格的な取り組みが開始されている。
 記念講演は、"インナースペース(体内小宇宙)の研究:未来の世代を守るために"と題して行い、講演終了後、井口泰泉博士(岡崎国立共同研究機構教授)がコーディネーターとなり質疑応答が行われた。

2.2 カールヘンリク・ロベール博士

 同氏の受賞理由は、"持続可能な社会を構築するために必要な条件を科学的に導き、企業等の環境意識を改革した業績"による。
 同氏は、現在、環境組織「ナチュラル・ステップ」理事長、ヨーテボリ大学資源学教授である。同氏は、環境の悪化を回避するには、自然界の循環の摂理に従って自然が処理できる範囲内で資源を消費する社会を実現することが必要と考え、このような社会が備えるべき原則を、一流の科学者たちとの議論を経て4つのシステム条件にまとめた。また、その実現のために企業や自治体が取るべき手段を考えていく上での新たな枠組みを作った。さらに、創設した組織「ナチュラル・ステップ」の活動を通じて、スウェーデン国内のみならず多くの國において、その理念への賛同者を増やし、企業の環境経営戦略や自治体、政府などの環境政策立案に貢献してきた。
 記念講演は、"基本原理に則った計画作りが成功に導く - NGO「ナチュラル・ステップ」の持続可能な社会への取組み方"と題して行い、講演終了後、鈴木基之博士(国連大学副学長、東京大学教授)がコーディネーターとなり質疑応答が行われた。

<参考資料>

 ・財団法人旭硝子財団:「平成12年度(第9回)ブループラネット賞受賞者記念講演会」資料

3.メカトロ税制について

 通産省のオゾン層保護施策の一つとして、「中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制)」による税制上の優遇措置がある。本制度は、平成12年度に一部改正された上でさらに2年間継続されて、平成14年3月31日まで有効となった。
 当協議会は同制度の申請書類の審査機関となっており、環境保護と事業経営に資するために、他の国税・地方税等と併せてその活用を関係者にPRしている。(環境保護の優遇税制
 以下に、そのポイントと手続き等の概要を紹介する。

3.1 対象設備:全自動脱特定物質洗浄装置

 即ち、次の(1)〜(3)に該当する条件を満たし且つ電子制御機器を備えた全自動  洗浄装置。
 (1) 洗浄剤として、モントリオール議定書付属書A,B,Cに属する物質(CFC,1,1,1-トリクロロエタン,HCFC)並びにトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを使用しない。
 (2)ハイドロフルオロカーボン又はパーフルオロカーボンを洗浄剤として使用する場合、①これらの洗浄剤を密閉する機構を有するか、②これらの洗浄剤を回収する機構を有するか、③これらの洗浄剤の回収装置を同時に設置するかの何れかである。
 (3)使用する洗浄剤は、次の①〜⑥に該当する。
 ① 水系洗浄剤〔準水系洗浄剤(水と水以外の溶剤に界面活性剤を加えたもの)を含む〕
 ② 炭化水素系洗浄剤
 ③ アルコール系洗浄剤
 ④ 有機ハロゲン系洗浄剤(トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを除く)
 ⑤シリコーン系洗浄剤
 ⑥グリコールエーテル系洗浄剤

3.2 対象者:従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が1億円以下の法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち従業員が1,000人以下の法人

 ① 税額控除:従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が3,000万円以下の法人
 ② 特別償却:従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が1億円以下の法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち従業員が1,000人以下の法人

3.3 措 置

 ① 税額控除:取得価格の7%の税額控除(リースの場合、リース費用の総額60%に限る。)
 ② 特別償却:初年度の30%の特別償却
   適 用:対象設備(新品)を取得の後、事業の用に供した年度の所得に対し税額控除・特別償却が適用される。

3.4 適用期間:平成12年4月1日から平成14年3月31日(2年間)

3.5 証明団体:日本産業洗浄協議会

3.6 手続き等の条件

 ① 新規取得設備であること。
 ② 新たに使用される洗浄剤が、CFC,1,1,1-トリクロロエタン,HCFC並びにトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン(別に定められている。)以外のものであること。
 ③ 電子制御機器を備えた全自動洗浄装置であること。
 ④ 申請者
 a) 洗浄装置を取得した者(ユーザー)
 b) 従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が1億円以下の法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち従業員が1,000人以下の法人
 ・税額控除適用は、従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が3,000万円以下の法人であること。
 ・特別償却適用は、従業員1,000人以下の個人、資本金又は出資金が1億円以下の法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち従業員が1,000人以下の法人であること。

3.7 手続き及び必用書類等

 ① 申請者は、電子機器利用設備仕様等証明書発行申請様式送付を日本産業洗浄協議会(産洗協)事務局に依頼する。
 ② 申請者は、電子機器利用設備仕様等証明書発行を産洗協事務局宛申請する(発行願)。
   a) 「電子機器利用設備仕様等証明書(産洗協指定用紙)」:社印、代表者印の押印もれのないこと。
   b) 「『全自動脱特定物質洗浄装置』設置証明書発行願」:社印、代表者印の押印もれのないこと。
   c) 新規取得設備の仕様書及び図面等:使用洗浄剤及び電子制御機器(シーケンサー等)が明確に分かること。
   d) 従来設備の写真または図面:特定物質等を使用していた設備を新規設備に入れ替える場合は添付すること。
 ③ 事務局は、優遇税制適用申請審査委員会を招集し、委員会は申請の設備内容を審査し税制措置適用の合否を判定する。
 ④ 事務局は、合格したものにつき「電子機器利用設備仕様等証明書」を発行し、併せて「電子機器利用設備付随投資額等調査票」を申請者宛送付する。
 ⑤ 申請者は、調査票に必用事項を記入し、証明書写し(製造業者が発行したもの)と併せて事務局宛送付する。
 ⑥ 申請者は、措置区分を決め「電子機器利用設備仕様等証明書」を添えて、所轄税務署へ税優遇措置の申請をする。
 ⑦ 審査手数料 
 会員   5,000円/件
 非会員  25,000円/件
   *会員には、超音波工業会並びに産業機械工業会会員を含む。

3.8 申請手続きフロー

申請者事務局審査委員会事務局申請者税務署
証明書様式受付審査合否証明書発行税措置申請
送付依頼判定調査票申請者
へ送付
調査票事務局
へ送付

以上

<参考資料>

1) 通産省告示第167号、「官報」号外第62号 (2000.3.31)
2) 通商産業省産業政策局企業行動課監修「特別償却対象特定設備等便覧(平成12年度版)」財団法人通商産業調査会近畿本部 (2000.8)

環境保護情報(2000年10月)

1. 環境報告書の国際的なガイドライン

 環境報告書は、企業が事業活動に伴う環境への負荷などを自己点検した報告書として、最近年毎に注目を浴びている。

 環境報告書に関する国際組織として、現在「Grobal Reporting Initiative (GRI)」が存在するが、同組織は国際的な環境報告書のガイドラインをかねて検討中であったが、このほどそのガイドラインが「Sustainable Reporting Guideline」として2000年6月に発表された。

 同ガイドラインは、企業のパーフォーマンスの環境・社会・経済的側面の関連性に重点を置いた報告の世界標準を目指すもので、昨年の3月に草案が公表され、その後の検討を経て完成されたものである。

 ちなみに、GRIはセリーズ(CERES、 Coalition for Environmentally Responsible Economies)国連環境計画(UNEP)と連携して呼びかけ、産業界、政府機関、非政府組織、公認会計士団体等が参加し、全世界で適用可能な持続可能性報告のガイドラインの作成を目指した組織である。セリーズは非営利の非政府組織(NGO)で、本拠地をボストン(米国)に置き、環境団体、社会的責任を持つ投資専門家、機関投資家、労働組合、宗教団体等から構成される。同組織は、環境に責任を持つ企業行動のための原則として「セリーズ原則」(かって「バルディーズ原則」と呼ばれたもの)を作成した。

 同日本語訳は「持続可能性報告のガイドライン = 経済的、環境的、社会的パ-フォーマンスを報告する =」として、環境監査研究会より去る8月に発行された。同ガイドラインは、序文、全般的な手引き、報告原則と実務慣行、報告書の内容、付属文書(指標の選択と適用のための情報源、ガイドラインの段階的適用の手引き、検証の手引き、比率指標の手引き)から構成されており、今後の環境報告書の作成に強い影響を与えると見なされている。

 環境監査委員会は、この日本語訳の紹介を兼ねて「9周年シンポジウム:GRIガイドラインと今後の方向性」を8月26日に、中央大学駿河台記念館(東京都千代田区)で開催した。

<参考資料>

1) GRI/環境監査研究会監訳「持続可能性報告 ガイドライン」(2000.8)

2) 「9周年シンポジウム:GRIガイドラインと今後の方向性」配布資料(2000.8.26)

3) 環境監査研究会ホームページ

http://www.apas.co.jp/earg/

2. 南極オゾンホールは過去最大面積に

気象庁は、本年の南極オゾンホールについて去る9月5日に発表を行い、2000年の南極オゾンホールは急速に発達しつつあり、過去最大の面積であると説明した。以下はその概要である。

2.1 第41次南極地域観測隊の報告

第41次南極極地観測隊から報告されたオゾン観測の結果によれば、昭和基地上空のオゾン全量は、8月8日にオゾンホールの目安の220 m atm-cmの値を観測し、9月2日には今年最低値(146 m atm-cm)を記録した。オゾンの高度分布を見ると、高度1025 kmで著しいオゾン減少が見られ、高度15 km付近ではオゾンホール出現前に比べて70%以上減少していた。

 なお、エーロゾルの観測では、極域成層圏雲の存在が高度16 kmと22 km付近に確認された。

<図1>オゾンホールの規模の推移

<図2>今年のオゾンホールの規模推定

2.2 米国航空宇宙局の資料

米国航空宇宙局(NASA)から入手した人工衛星による観測資料を解析したところ、9月初めには南極大陸の2倍以上の面積にオゾンホールが広がっている。

2.3 オゾンホールの規模

オゾンホールの規模は現在のところ、大規模に発達した1992年以降の8年間と比較して大きい規模で推移しており、例年になく速いペースで拡大している(図1)。オゾンホールの面積は、衛星による観測が始まって以来、最大を記録している。

2.4 今後の見通し

今後、南極の気象条件に大きな変化がなければ、オゾン破壊量からみた今年のオゾンホールの規模は、8月の南極域の成層圏気温等を用いた推定から、過去最大に迫る規模となることが予測される(図2)。

<参考資料>

・ 気象庁:「(報道発表資料)南極オゾンホール急速に発達、過去最大面積に」(2000.9.5)

3. 「平成11年度PRTRパイロット事業報告書」

環境庁は、PRTRパイロット事業について、平成9、10年度に引き続いて平成11年度に行った結果を、去る8月25日に発表した。その概要の一部は下記の通りである。

<図3>報告状況の推移

 

 

3.1 今回のパイロット事業の概要

(1) 対象地域:13都道府県

(2) 対象化学物質:人や生態系に対する有害性を有することが判明しており、暴露可能性が高いと考えられる176物質

(3) 事業所:8425事業所

(4) 平成10年度1年間の対象化学物質の事業所からの大気・水・土壌への排出量、廃棄物に含まれての移動量等

3.2 集計結果の概要

(1) データの報告状況:

回答率約60%、そのうちの約38%が取り扱い対象事業所。過去2回のデータの比較は図3の通り。

(2) 排出量が多かった化学物質の例

・ トルエン(溶剤、工業原料等)

・ キシレン類(溶剤、工業原料等)

・ ジクロロメタン(溶剤、金属洗浄剤等)

・ p-ジクロロベンゼン(防虫剤等)

・ 塩化水素(塩酸を除く)(工業原料等)

・ ホルムアルデヒド(工業原料、接着剤、防腐剤等)

・ ベンゼン(工業原料、ガソリンの成分等)

(3) 環境媒体別の排出状況

環境排出量の97%は大気へ。次いで公共用水域への排出、土壌への排出は極めて少なかった。

(4) 業種別の排出状況

製造業22業種、非製造業16業種の中で、排出量の多いトルエン、キシレン類、ジクロロメタンは概ねどの業種からも排出され、排出量の合計を見ると、機械系製造業と化学系製造業で全体の約7割を占めいている。

3.3 今後の課題

今回のパイロット事業で、PRTR法やPRTR量制度に関する周知、中小規模事業所への周知及び支援、排出量等算出マニュアルの充実、非点源排出源からの排出量の推計のためのデータ収集の必要性などの課題が明らかになった。

3.4 今後の予定

平成12年度は法に基づくPRTR制度に可能な限り実施内容をあわせて、23都道府県・6政令指定都市においてパイロット事業を進めており、平成13年4月からの法に基づくPRTR制度の実施に向けて、課題の検討や必要な準備を進めていく。

<参考資料>

1) 環境庁:「平成11年度PRTRパイロット事業報告書」(2000.8)

2) 関係するホームページ

http://www.eic.or.jp/eanet/prtr

 

4. 中小企業総合事業団の「化学物質の管理」への対応

中小企業総合事業団はこのほど、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質管理促進法)と「ダイオキシン類対策特別措置法」を解説する新しいパンフレットを発行した。

 同パンフレットは、上記2つの法律について、その概要と必要な関連情報を解説しており、全国各地の問い合わせ先も紹介している。

 事業団は、化学物質管理促進法等の施行に対応して、講習会(「化学物質管理促進法対応講習会」)

を全国的に企画しており、その期日、会場等の情報は、それぞれの開催地の中小企業地域情報センターが窓口となっている。

<参考資料>

1) 中小企業総合事業団:「化学物質の管理について」(2000.10)

2) 中小企業総合事業団:「化学物質管理促進法対応講習会テキスト」A4/89p(平成12年度)

3) 中小企業総合事業団:「化学物質管理促進法対応講習会テキスト(資料編)」A4/104p
(平成12年度)

4) 中小企業総合事業団:「ダイオキシン類対策特別措置法対応講習会テキスト」A4/814p (平成12年度)

5) (社)日本化学工業協会、日本レスポンシブル・ケア協議会:「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善促進の進め方」A4/159p (2000年4月)

6) 関係するホームページ

http://www.jasmec.go.jp/kankyo/index.htm


環境保護情報(2000年9月)

1.2000年度の「オゾン層保護対策推進月間」

 本年の「オゾン層保護対策推進月間」は、9月1日から始まり、1ヵ月の間に各種の行事が企画されている。本年は、ローランド博士、モリーナ博士が成層圏オゾン層の破壊の危機を予告して26年経ち、「ウィーン条約」採択後15年となる。

 モントリオール議定書の規制措置は1989年7月1日から開始されたが、日本政府はその意義ある出発点を記念して、オゾン層保護対策のキャンペーンを行うために同年7月を「特定フロン使用合理化推進月間」と定めた。その行事の実施は、当時のオゾン層保護対策を受け持つ業界団体「特定フロン使用合理化推進協議会」が受け持ち、通商産業省、環境庁および運輸省の後援の下に行われた。

 この行事は、1990年より「オゾン層保護対策推進月間」と名称を改め、同じく名称を変えたオゾン層保護対策産業協議会により毎年企画、実行されてきた。

<写真1>通産省本館ロビーのパネル展示

 国際連合はその第92回総会(1994年12月19日)において、モントリオール議定書が署名された日(1987年9月16日)を記念して、1995年より9月16日を「国際オゾン層保護デー( The International Day for Preservation of the Ozone Layer)に定めた。

 日本ではこれを受けて1987年からは、この月間行事が毎年9月に開催されることとなった。

2.モントリオール議定書の改正と批准状況

 モントリオール議定書は、1987年に採択されてから、現在までに4回の改正を経て、その規制措置を強化した。その規制措置の過去の経緯と現状は表1のごとくである。また、ウィーン条約およびモントリオール議定書とその改正の批准状況は、UNEPオゾン事務局から発表されているが、批准の経緯は図1のごとくである。

<条約・議定書の批准国数>(本年7月現在)
  ・ウィーン条約 - 176ヵ国
  ・モントリオール議定書 - 175ヵ国
  ・ロンドン改正 - 140ヵ国
  ・コペンハーゲン改正 - 107ヵ国
  ・モントリオール改正 - 37ヵ国
  ・北京改正 - 1ヵ国

<図1>条約・議定書の批准状況

3.「オゾン層保護対策推進に関する協力要請会議」

 本年の行事の皮切りとして、9月1日に通商産業省主催による「オゾン層保護対策推進に関する協力会議」が同省岡本基礎産業局長および太田機械情報産業局長の要請に基づいて行われた。会議には、日本の主要な工業団体62の代表が参加、日本産業洗浄協議会からも橋本直樹会長が出席した。

 会議では通商産業省の両局長から、オゾン層保護対策の一層の推進に関する協力要請があり、オゾン層保護対策室河野室長より“オゾン層保護対策の推進について”と題して、詳細な説明がなされた。次いで産業界を代表して、8団体の会長より産業界におけるオゾン層保護対策への取り組み状況についての報告が行われた。

4.「オゾン層保護対策の推進について」

 通商産業省オゾン層保護対策室河野室長は、9月1日に開催された「オゾン層保護対策推進に関する協力会議」において、オゾン層保護対策の現状と今後の課題について説明を行った。  以下はその要旨である。

4.1 オゾン層の破壊の現状及び今後の見通し

(1)世界気象機関(WMO)/国連環境計画(UNEP) オゾン層破壊の科学アセスメント
 ○対流圏における全オゾン層破壊物質の総量は1994年頃をピークに漸減
 ○成層圏における塩素と臭素の総量は2000年より前にピークに到達と予想
 ○春季の南極オゾンホールは衰退しないで、毎年発生
 ○最大のオゾン層破壊はこの10年又は次の20年のうちに起こると推定
 ○オゾン層は今後50年かけてゆっくりと回復するだろう。

(2)オゾン層等の監視結果に関する年次報告書  (平成11年度:環境庁)
 ○1999年の南極上空におけるオゾンホールは規模の大きい状態で推移
 ○我が国上空でも札幌で統計的に有意な減少傾向が確認

<図2>塩素と臭素の濃度予測

 ○北半球中緯度ではCFC、トリクロロエタンの大気中濃度は減少、HCFC、HFC並びにハロンは増加の傾向
 ○紫外光(UV-B)の地上照射量の明らかな増加傾向は見られていない

4.2 HCFC等の規制への対応

(1)CFC等の生産全廃

 ○CFC、ハロン、四塩化炭素、トリクロロエタン等については95年末までに生産全廃

(2)HCFC等の規制への対応

<図3>日本におけるHCFC削減目標

<図4>臭化メチルの規制スケジュール

4.3 CFCの回収・破壊の推進

(1)産業界による自主計画

 冷媒用CFC等の回収については、通産省が平成9年4月に化学品審議会中間報告に基づき「特定フロン回収促進プログラム」を策定、関係者による自主的な回収システム構築を要請。

 同年9月、産業界はCFCの回収・破壊の取組に関する自主計画を策定、通産大臣に提出、通産 省が計画の状況をフォローアップ。

 ○カーエアコン 
販売店等にユーザーから自動車が持ち込まれた段階で特定フロンを回収する自主的システムを構築

 ○業務用冷凍空調機器
機器のメンテナンス等の一環として特定フロンを回収する自主的なシステムを構築

 ○家庭用冷蔵庫及びルームエアコン
機器のメンテナンス等の一環として特定フロンを回収する自主的なシステムを構築。家電リサイクル法に基づくリサイクルシス   テムを構築中

(2)CFCの回収に関する取組のフォローアップ(平成12年9月)

 ○業務用冷凍空調機器
 ・冷媒回収認定事業所として2847事業所を認定
 ・回収実績は約651トン、回収率(推計)約56%
 ・官公庁やユーザー業界に対するより強い働きかけなど、更なる周知・啓発活動が必要

 ○カーエアコン
 ・日本自動車工業会等の回収・破壊システムは、平成10年10月をもって全国展開完了。システムへの登録事業者は約3000社
 ・回収・破壊した量は約202トン、破壊率(推計)約18%(回収後、破壊せず再生利用に回すケースがあるため回収率はこれより高い。)
 ・今般、産業構造審議会において、フロン回収も含め、使用済み自動車のリサイクルについて法制化も視野に入れた議論が開始。

 ○家庭用冷蔵庫
 ・回収量は約98トン、回収率(推計)約27%
 ・家電リサイクル法により製造メーカーによってリサイクルと一体的に行うべき事項として特定フロンの回収を行うことが基本
 ・製造事業者等は、効率的な回収システム・処理技術開発の検討を進め、家電リサイクルプラントの整備に取り組んでいるところ

 ○まとめ
 ・各分野ごとに対象ユーザー、廃棄機器等の流れが一律ではない実態を踏まえ、実状に即し必要
 ・産業界の自主計画による回収システム構築は進んだが、今後、さらなる関係事業者の参加、ユーザーの協力がないと限界があることが問題点
 ・産業界等による自主的取組の深化、関係事業者の参加の拡大、リサイクルを制度的に行う必要性のある機器についてリサイクルと一体となったフロン回収システムの構築も含めた取組の強化について検討を進めることが必要

4.4 国による支援制度

(1)予算
 ・新規代替物質の研究開発(平成12年度、764百万円)(平成6〜13年度、総額59億円(予定))
  ・オゾン層を破壊せず、温室効果の小さい新規代替物質の開発
 ・回収再利用促進調査(平成12年度、8百万円)
  ・CFCの回収・破壊の社会システム及び技術開発の状況についての調査

(2)税制上の支援措置
  ・国税
 ・脱特定物質対応型設備に係る特別償却制度(初年度16%)
  13年度は、回収・破壊装置を対象設備に加えることを要望
 ・中小企業新技術対化投資促進税制(メカトロ税制)(取得価格の7%税額控除又は初年度30%の特別償却)
  ・地方税
 ・脱特定物質対応型設備の固定資産税に係る課税標準の特例措置(3年間4/5)

(3)金融上の支援措置
 ・オゾン層保護対策設備導入促進融資[日本政策投資銀行]
 ・環境対策貸付[中小企業金融公庫・国民生活金融公庫]

(4)中小企業総合事業団による事業
 ・中小企業に対し、脱特定物質、特定フロン回収のための指導

4.5 開発途上国に対する協力
  途上国においては、昨年よりCFC等の削減を開始。このため、先進国からの資金・技術等の供 与が一層重要になっている。

(1)JICA研修「オゾン層保護対策・代替技術セミナー」

(2)モントリオール多数国間基金

 ・戦略的計画策定 
  ・個別プロジェクトの転換を進めるという手法から長期を見渡した戦略的計画策定について検討
 ・昨年7月以降5件の二国間協力事業を承認
・家庭用電気冷蔵庫コンプレッサー転換プロジェクト
  ・中国・深せんにおける洗浄分野準備プロジェクト
  ・南アジア地域におけるワークショップ
  ・東南アジア・太平洋地域におけるワークショップ
  ・中国における冷凍空調サービス部門の戦略策定プロジェクト

<表2>締約国におけるCFC消費量の推移

4.6 モントリオール議定書締約国会合への対応

 モントリオール議定書第11回締約国会合(1999年11月29日〜12月3日、於北京)において以下の事項につき決定。
 ○HCFCの生産量規制の開始(先進国においては2004年から生産量を1989年レベルに凍結、途上国においては2016年から生産量を2015年レベルに凍結)
 ○北京宣言の採択

 途上国においてCFCの規制が開始されたこと等を背景として、規制物質削減の進展を確認するとともに途上国の削減の取り組みに対する先進国による財政的、技術的支援を要請
○CFC管理戦略
 ・2001年7月までに先進国は、回、再利用、処理及び使用全廃のオプションを含む「CFC管理戦略」を策定し、条約事務局に提出することを決定 
 ・技術及び経済的実現可能性を考慮し、以下が検討項目の例示としてあげられている。
1)既存製品・設備のCFCの回収・破壊
2)CFC使用冷蔵・空調設備への補充、同設備の使用の禁止
3)回収CFCの安全かつ効率的な保管・管理・最終処分のための適切な方策の実施
4)環境・経済面から受入れ可能なCFC代替物質の使用・置換の奨励

4.7 地球温暖化対策

(1)HFC等排出抑制対策
 ・HFC等の特殊事情
今後CFC等からの転換の進展に従い、その代替物質であるHFC等の使用の増加は不可避であるという固有の特殊事情を考慮する必要
 ・検討の経緯

 1)COP3における決定
CO2等6ガスの排出量を1990年比(HFC等は95年も可)で2008年〜2012年までの期間中に▲6%削減を目標

2)化学品審議会地球温暖化部会における検討通商産業省は「産業界におけるHFC等の排出抑制に関する指針」を策定(2月23HFC官報告示)

3)産業界による行動計画の提出

4)部会「中間報告」のとりまとめ

 (化学品審議会地球温暖化防止対策部会における産業界の行動計画等の第2回フォローアップ、平成12年5月23日)

5)地球温暖化対策推進大綱(平成10年6月)「代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出量については、プラス2%程度の影響に止める。」

(2)COP5の動向(99年10月25日〜11月5日、於ボン)

 ・発効期限:多くの国が2002年までの京都議定書の発効の重要性を共通に認識
 ・COP6の開催:2000年11月にオランダ・ハーグで開催
 ・京都メカニズム:COP6までの間の専門会合で「交渉用テキスト」を作成することに合意

 HFC及びPFCについては、モントリオール議定書専門機関(TEAP)が行った使用実態、排出抑制措置等に関する報告が示され、今後、気候変動枠組条約専門機関において、更に技術情報面の検討を行うこととされた。

(3)モントリオール議定書と京都議定書の関係

 ○1998年10月のCOP4、11月のモントリオール議定書第10回締約国会合決議に基づき、HFC/PFCの排出抑制等に関する情報収集を専門機関において検討を実施
 ○昨年10月に報告書取りまとめ
  ・HFCはオゾン層破壊物質の重要な代替物質
  ・他に代替物質がない用途に対するHFCの使用に過剰な制限を課した場合、オゾン層破壊物質からの転換の遅れを招く
  ・冷媒、発泡剤として使用される物質の環境への影響は、温室効果ガスの大気中への排出による直接効果とその物質を使用した際のエネルギー効率という間接効果をトータルで考慮することが重要
  ・責任あるHFC使用の重要性(不可欠用途、最大限の排出抑制)

<参考資料>
  ・通産省:「オゾン層保護対策推進に関する協力 要請会議」配布資料

5.通産省の新しいオゾン層保護対策パンフレット
 通商産業省オゾン層保護対策室は、モントリオール議定書に基づくオゾン層保護対策の最新情報を解説したパンフレットを作成、広く関係者の活用を呼びかけている。この「守ろう地球、オゾン層」は、毎年改訂されており、2000年版は以下の項目について解説を加えている。
  ・オゾン層破壊とは
  ・オゾン層破壊物質の種類と生産規制の概要
  ・冷媒用CFC等の回収・破壊等
  ・オゾン層破壊物質からの転換等の促進
  ・国際協力の推進
  ・代替フロンフロン等の対策(地球温暖化対策)・特定フロン、代替フロン等の種類
  ・オゾン層保護対策の歩み

<参考資料>
  ・通産省:「守ろう地球、オゾン層」(2000.9)

<写真2>「守ろう地球、オゾン層」の表紙

6.「第3回オゾン層保護大賞」

 日刊工業新聞社は、オゾン層保護法制定10周年を記念して「オゾン層保護大賞」の制度を1998年9月に創設した。同制度は、これまでオゾン層保護対策に貢献した産業界その他の団体、企業、個人を表彰するもので、通商産業省および環境庁の後援の下に行われ、学識経験者等の有識者で構成される審査委員会で下記の趣旨に基づいて選考が行われた。
  ・目的:国内におけるCFC等の削減、全廃規制、回収・破壊等の着実な実施、途上国におけるオゾン層破壊物質の削減等およびオゾン層やオゾン層破壊物質に関する調査研究の進展に資するべく、オゾン層保護対策の推進に不断の努力を重ね、顕著な功績を表した産業界その他の団体、企業もしくは個人を表彰し、今後のオゾン層保護対策の一層の推進を図ることを目的とする。
  ・表彰の対象:

(1)オゾン層破壊物質の削減に資する技術開発(代替物質開発、不使用工程開発、使用量の削減等)

(2)オゾン層破壊物質の削減に資するシステム整備(回収・破壊社会システム整備、工場内の脱フロン化等)

(3)オゾン層保護対策の推進のための普及啓発やその他寄与する取り組み(普及啓発活動等)

(4) 発展途上国のオゾン層破壊物質の削減に協力したこと(技術協力、普及活動等)

(5)オゾン層保護に関する調査・研究の進展(オゾン層破壊のメカニズムの解明等)

 今回(第3回)の応募は27件、延べ業績数47件であったが、その中から7件が選定された(表3参照)。日本産業洗浄協議会は、同賞の優秀賞を受賞、その受賞理由としては、“中小企業の洗浄現場の技術転換を組織的に支援、代替フロンの切り替えにも一貫して協力し、さらに途上国支援の組織的活動に積極的に参加している”ことが評価されている。

 同贈賞式は、9月1日に「虎ノ門パストラル」(東京・虎ノ門)において、通産省より伊藤通算政務次官、環境庁より河合環境総括政務次官が来賓として出席の上開催された。本協議会からは、橋本直樹会長が出席、日刊工業新聞社菅野社長より優秀賞の楯と賞状の贈呈を受けた。

<参考資料>
 ・日刊工業新聞社:「第3回オゾン層保護大賞  受賞成果業績一覧」
 ・日刊工業新聞:2000年9月1日号
 ・日刊工業新聞:2000年9月4日号

<写真3>優秀賞を受ける橋本会長


環境保護情報(2000年8月)

1.「平成11年度オゾン層等監視報告書」

 環境庁は、毎年「オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」を発表しているが、その平成11年度の報告書がさる7月14日に発表された。その主な内容は、?オゾン層等の状況、?特定物質の大気中濃度、?太陽紫外光の状況である。

 以下は、その報告書の抜粋である。

1.1 オゾン層等の状況

(1) 南極オゾンホール

 1999年の南極オゾンホールは、過去最大であった1998年より若干小さいものの、規模の大きい状態で推移し、12月下旬まで観測され、過去最も遅い消滅であった。

 オゾンホールの3要素である?面積、?最低オゾン全量、?オゾン破壊量の1979年以来の経年変化は図1の通りである。
図1.オゾンホールの三要素の経年変化(1979〜1999年)

備考:上段から順に、オゾンホールの面積、最低オゾン全量、オゾン破壊量の年極値の経年変化。オゾンホール3要素は、南緯45度以南で定義され、面積は、オゾン全量が220m atm-cm以下の領域の面積、最低オゾン全量は、オゾン全量の最低値、オゾン破壊量はオゾン全量を300m atm-cm日本維持するために補充を要するオゾンの質量。NASA提供のTOMSデータをドブソン分光光度計による観測値と比較検討の上作成。1995年についてはTOVSのデータを基に求めた。

また、オゾンホール消滅時期の推移は図2に示されている。
図1.オゾンホール消滅時期の推移(1979〜1999年)

(2) 日本上空のオゾン全量

日本上空のオゾン全量は、札幌では平年並みか平年より少なく、つくば、鹿児島、那覇では年の全般に平年より少なく、年の後半に平年より多かった。

日本付近はオゾン全量の南北差が大きく、北ほど季節変化が大きい。そのオゾン全量の年平均値の推移は、図3の如くである。


図3.日本上空のオゾン全量の年平均値の推移(1958〜1999年)

(3)今後の予測

モントリオール議定書のアセスメント・パネル(1998年WMO/UNEP科学アセスメント・パネル報告書)によると、1997年の改正モントリオール議定書によるスケジュールに基づく規制をすべての締約国が遵守した場合、

a.成層圏中の塩素及び臭素濃度の合計は、2000年前にピークに達する。

    b.オゾン層破壊のピークは、2020年までに訪れる。

    c.成層圏中のオゾン層破壊物質の濃度は、2050年までに1980年以前のレベルに戻る。

    d.オゾン層破壊にとって重要なその他の気体(一酸化二窒素、メタン、水蒸気等)の将来の増加又は減少及び気候変動がオゾン層の回復に影響を及ぼす。

と予測されている。

1.2 特定物質の大気中濃度

(1) CFC及び1,1,1-トリクロロエタン

特定物質(モントリオール議定書で規制されているオゾン層破壊物質)の大気中濃度については、東京大学が1979年から北海道で継続して測定しているデータと、南極昭和基地のデータが有名である。

 北海道では、CFC-11CFC-12CFC-113の濃度は最近は減少に転じているほか、大気中寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンについては、すでに減少傾向を示している(図4参照)。これらは1989年7月から開始されたモントリオール議定書に基づく規制の効果と考えられる。  


図4.北半球中緯度(北海道)及び南半球(南極昭和基地)における特定フロン等ハロカーボン類の大気中平均濃度の経年変化

備考:北半球中緯度(北海道:N)及び南半球(南極昭和基地:S)

(2) HCFC

HCFC-22HCFC-141bHFC-134aについては、北海道における大気中濃度は増加の傾向にある。

(3) 今後の課題

現在の特定物質の大気中濃度は、例えば、南極域でオゾンホールが観測される以前の1970年代に比べてかなり高い状況にあるので、成層圏オゾン層の状況が改善されるためには、これら物質の濃度が大幅に低下することが必要である。

1.3 太陽紫外光の状況

成層圏オゾン層の破壊に伴い、有害な紫外光(UV-B)の地上への照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸生、水生生態系への影響や大気汚染の増加が懸念されるものの、UV-B量の変化の傾向を把握するためには、なおデータの蓄積が必要な状況にある。

日本においては、国内4ヶ所におけるUV-B量の観測開始以来、累年平均値に対して著しく大きい変化は見られない。またオゾン全量の変化に敏感な波長300nmの紫外光についても、明らかな増加の傾向は見られない。しかしながら、UV-B量の観測値はオゾン全量のほか、天候(雲量)や大気混濁度等の影響を受けることに留意する必要がある。なお、1999年の国内4ヶ所における晴れた日のオゾン全量とUV-B量の観測結果に基づく解析によると、太陽高度角が同じであれば、オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されている。したがって、1970年代に比べて、オゾン全量が明らかに減少している地域においては、UV-B量は増加しているものと考えられる。

<参考資料>

・環境庁:「平成11年度オゾン層等の監視結果 に関する年次報告書」(2000.7)

2.平成12年度PRTRパイロット事業

通商産業省と環境庁は、「PRTRパイロット事業」を過去に、平成9年度と10年度に行ったが、今回その第3回の計画を発表した。

 PRTRに関する法制化は、すでに1999年7月13日に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質管理促進法)で行われている。今回のパイロット事業は、同法律に基づくPRTR制度を円滑に導入・実施するための準備の一環として行われるものである。

2.1 調査の概要

今回の調査の概要は以下の通りである。

(1) 調査の構成

a.事業所に対する排出・移動量調査

 b.事業所に対するアンケート調査

 c.事業所に対するヒアリング調査

 d.非点源発生源からの排出量の推計に関する

  調査

(2) 対象地域

 調査実施自治体(30都道府県市)内の一部または全地域

(3) 対象化学物質

「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令」第1条に定める第1種指定化学物質354物質。

(4)対象事業所

以下の要件のうち、??をともに満たすと考えられる事業所に対し、調査実施自治体から調査資料を送付する。調査資料を送付された事業所のうち、?の要件を満たす事業所は事業者・事業所の概要及び排出量・移動量の報告を行い、?を満たさない事業所は事業者・事業所の概要のみについて報告を行う。

 a.対象業種:施行令第3条に示す業種

 b.従業員数:常用雇用者21人以上の事業所

 c.取扱量:次のうちいずれかに該当すること。

  a)いずれかの第一種指定定化学物質の年間取扱量が1t以上ある事業所。

  b)いずれかの特定第一種指定定化学物質の年間取扱量が0.t以上である事業所。

  c)・・f)

(5) アンケート調査

対象事業所にに対し、制度実施にあたっての要望や課題を把握するため、アンケート調査を実施する。

<6> ヒアリング調査

事業者ニーズ等の把握及び報告データの検証のため、調査実施自治体が、対象事業所の一部に対してヒアリング調査を行う。

2.2 スケジュール

 7月      事業所への資料送付

 8-9月    事業所報告の締め切り

 9-10月頃  データ集計

         ヒアリング調査の実施

 12月(予定) 報告書作成

<参考資料>

・環境庁:「平成12年度PRTRパイロット事 業の実施について」(2000.7.27)

3.オゾン層保護対策推進月間行事

「オゾン層保護対策推進月間」は、1989年7月に、モントリオール議定書の規制措置の開始に併せて初めて企画、実施された。当時は「特定フロン使用合理化推進月間」という名称で、主催は特定フロン使用合理化推進協議会、後援は、通産省、環境庁、運輸省であった。

 現在は、「オゾン層保護対策推進月間」として、オゾン層保護対策産業協議会が主催し、通産省、環境庁、運輸省、農水省、建設省が後援している。

 開催月は、1995年より9月に変更になったが、それは、国際連合が、9月16日をモントリオール議定書が署名された日(1997年)であることを記念して、1995年より国際デー「オゾン層保護のための国際デー」としたことに因んでいる(現在、国際デーは42)。

 本年は、写真1のポスターのごとく、“地球の生命は、やさしい光に育まれています”をスローガンとして、以下の行事が計画されている。

<写真1>平成12年度オゾン層保護対策推進月
     
間のポスター

(1)   する協力要請会議」(9月1日)

(2)「第3回オゾン層保護大賞表彰式」(9月1日)

(3)「オゾン層保護パネル展示」(9月中、於:通 商産業省本館1Fロビー)

    (4)「オゾン層保護対策月間講習会」(各地方通商産業局主催、9月中、全10回)

4.第20回モントリオール議定書公開作業部会

同会合は、7月11日?13日にジュネーブで開催された。通商産業省オゾン層保護対策室作成の結果概要よりトピクスを以下に抜粋する。

(1)n-プロピルブロマイド(n-PB)

技術・経済アセスメントパネルより、積極的なマーケティングにより予想以上に売り上げが伸びていること、新たな潜在マーケットの推計や排出の地理的分布を科学アセスメントパネルに提供することが報告された。また、科学アセスメントパネルより、n-PBのような大気寿命の短い物質のオゾン破壊係数は単一でなく、地域、季節により異なること、技術・経済アセスメントパネルからの情報提供を得て影響を推計することが報告された。各国からは、n-PBの生産の最小化及び代替物質開発の努力、技術・経済アセスメントパネルによる検討の促進の必要性について言及があった。

(2)HCFCの規制強化に関するEC提案の検討

HCFCの規制強化に関するEC提案(表1)について検討が行われた。極めて多数の途上国が、コペンハーゲン改正の際の合意を覆すものであること、北京介意の際の合意とも反すること(注:途上国のHCFCの生産規制が2016年とされたことを指すと考えられる。)、頻繁な規制強化は信頼を損なうこと、代替物質・技術の利用可能性が不明確であること、多数国間基金の援助でこれまでHCFCへの転換を進めてきていること等を理由に強く反対した。一方、EC提案を支持する発言は、英、スイス、チェコに限られた。

 日本は、提案の趣旨は理解するものの、CFC全廃前にHCFCの規制を強化することになりCFCの全廃に影響を及ぼさないか、代替技術・物質の利用可能性の見通しはどうかについて明確にすることが必要との主張を行った。米国は、途上国の懸念、規制強化の環境上の効果等を含めた検討が必要であるとの意見であった。

 最終的には、EC提案の内容を条文化した案と途上国側の改正不要との案の双方を用意し、締約国会合で議論することとなった。

表1 途上国でのHCFC規制案
コントロール 非5条国 5条国
凍結 (Cap 2.8%) 2007
-35% 2004 2014
-65% 2010 2020
-90% 2015 2025
-100% 2020 2030
フェーズアウト 2030 2040
           *2006年を基準年
※ 現在のところは
    2006年にそうとうするのが2015年
    2007年にそうとうするのが2016年
  となっている。

(3)次回締約国会合

第12回締約国会合は、ブルキナ・ファソにおいて12月11日から18日まで開催される予定。

<参考資料>

・通産省オゾン層保護対策室:「第20回モント リオール議定書締約国会合作業部会結果概要」 (2000.7.26)


環境保護情報(2000年7月)

1.「平成12年版環境白書」

 環境庁の編集になる「平成12年版環境白書」が6月に発表された1)。同白書は、1990年版から「総説」と「各論」の2分冊が出版されており、本年の「総説」のサブタイトルは“「環境の世紀」に向けた足下からの変革を目指して”とされている。

 同書は、大量生産・大量消費・大量廃棄というこれまでの経済社会システムに根ざした地球環境問題の根本的な解決のために、社会全体のあり方の見直しを求め、環境への負荷が少ない循環型社会を築くことが必要であるとしている。

 同白書には現在日本で問題となる環境問題を総合的に取り上げられており、工業洗浄現場に関係する課題はこれらの問題を無視して検討することはできない。同書で取り上げられているトピクスで工業洗浄に関係するものを拾い上げると表1のごとく整理することができよう(表1:工業洗浄に関係する環境問題 = 平成12年版環境白書を中心に =)。

 次号より同白書で取り上げられているトピクスのいくつかを紹介する予定である。

<参考資料>

・環境庁編:「平成12年版環境白書(総説)、(各 論)」㈱ぎょうせい (2000.6)

表1 工業洗浄に関係する環境問題 = 平成12年版環境白書を中心に =

項目

テーマ

大気環境

地球規模の大気環境

成層圏オゾン層破壊

地球温暖化

広域的大気環境

光化学大気汚染

炭化水素排出

有害大気汚染物質

水環境

水質汚濁

化学物質による地下水汚染

土壌汚染

塩素系溶剤による土壌汚染

産業廃棄物

廃棄物処理

リサイクル問題

ダイオキシン問題

化学物質の環境リスク

環境影響評価(環境アセスメント)

MSDS(製品安全データシート)

PRTR(環境汚染物質排出・移動登録

ライフサイクルアセスメント(LCA)

生物の汚染:内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)

環境問題に係る事業活動

ゼロエミッション

環境負荷の低い製品開発

環境マネジメントシステム

ISOー14000シリーズ

レスポンシブル・ケア(RC)

リスク・コミュニケーション

環境報告書

環境ラベル

グリーン調達

2.循環型社会形成推進基本法

 日本政府は、従来から緊急課題である廃棄物・リサイクル対策について検討を重ねていたが、昨年10月4日の与党政策合意において、「平成12年度を“循環型社会元年”と位置づけ、基本的枠組みとしての法制定を図る」こととした。この合意を受けた検討作業により「循環型社会形成推進基本法案」が作成され、先の国会で環境問題に関連する他の5つの新法案及び改正法案と共に成立した(表2:循環型社会形成推進基本法とそれに関係する法律)。

(1) 同法公布の経緯

 廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物処理法の改正、各種リサイクル法の制定などによって拡充・整備が図られてきているが、わが国では次のような課題が残されている。

 ・廃棄物の発生量が多くなりつつある。

 ・廃棄物処理施設の立地が困難である。

 ・不法投棄が増大しつつある。

これらの問題の解決のためには、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することが急務であるとして本法の成立をみた。

(2) 同法の概要

 本法は、このような状況を踏まえ、循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みをつくるためのもので、

・廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進するための基盤の確立

   ・個別の廃棄物・リサイクル関係法律の整備

と相まって、循環型社会の形成に向け実効ある取組の推進を図るものとされている。

 今国会で本法と一体的に整備された法律は以下の通りである。

 ・廃棄物処理関係

   ①廃棄物処理法の改正

 ・リサイクル関係

   ②再生資源利用促進法の改正

   ③建設資材リサイクル法

   ④食品リサイクル法

   ⑤グリーン購入法

(3) 同法の概要

・循環型社会の定義

同法では、循環型社会を定義して、“製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう”とうたわれている。

・“循環資源”の定義

 ここで、“循環資源”という言葉があるが、法の対象となる物が有価でも無価でも“廃棄物等”と呼ぶのに対して、その廃棄物等の中で有用なものを“循環資源”と位置づけて、その循環的な利用を促進するものである。

・廃棄物処理の優先順位

 本法では、廃棄物等の処理の“優先順位”を以下のように初めて法定化している。

 ①発生抑制、②再使用、③再生利用、

 ④熱回収、⑤適正処分

・役割分担

 循環型社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者及び国民が全体で取り組んでいくため、これらの主体の責務を明確にしている。特に、事業者・国民の「排出者責任」を明確にし、生産者が自ら生産する製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う“拡大生産者責任”の一般原則を確立した。

・「循環型社会形成推進基本計画」

 政府は、循環型社会の形成を総合的・計画的に進めるために、“循環型社会形成推進基本計画”を次のような仕組みで策定する。

  ①原案は、中央環境審議会が意見を述べる指針に即して、環境大臣が策定。

  ②計画の策定に当たっては、中央環境審議会の意見を聴取。

  ③計画は、政府一丸となった取組を確保するため、関係大臣と協議し、閣議決定により策定。

  ④計画の閣議決定があったときは、これを国会に報告。

  ⑤計画の策定期限、5年ごとの見直しを明記

  ⑥国の他の計画は、循環型社会形成推進基本計画を基本とする。

・國の施策の明示

 循環型社会の形成のための以下の国の施策を明示している。

  ①廃棄物等の発生抑制のための措置

  ②“排出者責任”の徹底のための規制等の措置

  ③“拡大生産者責任”を踏まえた措置(製品等の引き取り・循環的な利用の実施、製品等に関する事前評価)

  ④再生品の使用の促進

  ⑤環境の保全上の支障が生じる場合、原因事業者にその原状回復等の費用を負担させる措置 

<参考資料>

・環境庁:「循環型社会形成推進基本法案につい て」(2000.6.2) 


ページのトップへ戻る