1. 「2001年版環境白書」 環境省は「2001年版環境白書」をまとめていたが、政府は5月29日の閣議で同白書を了承した。 同白書の前身は、公害対策基本法に基づいて1969年(昭和44年)5月に厚生省により作成された第1回の報告書「公害白書」である。1971年(昭和46年)に環境庁が発足して、翌年(1972年)に従来の「公害白書」を改題して第1回の「環境白書」が環境庁によりまとめられて発表された。従って、今年の白書は「公害白書」から通して33冊目になる(写真1) <写真1>「2001年版環境白書」の表紙 近年の環境問題は、地球規模の環境破壊から、日常生活における商品の廃棄、リサイクルまで広範囲にわたるが、化学物質に係る環境問題は年ごとに比重が高くなり、同白書も化学物質問題を大きく取り上げている。 環境白書の構成は、従来通り、過去1年間の年次報告「平成12年度 環境の状況及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する年次報告」と向こう1年間の計画を説明する“平成13年度において講じようとする環境の保全に関する施策”から構成されている。 今回の白書は、従来のスタイルから装いを新たにして、総分量は20%程度減っているが、「です・ます調」で書かれていること、「総論」「各論」の2分冊を1冊にまとめてA4判となったこと、「語句説明」が欄外に記載されていること、コラムと事項の索引が新設されたことなどが特徴的である。 1.1 今年のテーマ:“地球と共生する「環の国」” 2001年度の環境白書は、“地球と共生する「環の国」日本を目指して”というサブタイトルを付して発表された。 今回は、特に「環の国」という言葉が特徴的だが、これは“持続可能な簡素で質を重視する循環型社会”をイメージするものとのことである。このような社会を実現し、地球と共生する「環の国」日本を目指して、2001年3月から「21世紀『環の国』づくり会議」が開催されている。 「21世紀『環の国』づくり会議」は全閣僚と有識者の総勢約30名で構成される。同会議は、首相が主催し、環境相が議事進行をおこない、環境共生社会の在り方や実現に向けた施策を検討することになる。 川口順子環境相は、同白書の冒頭に「環の国」について次のような説明を加えている。“本年の環境白書では、「地球と共生する『環の国』日本の実現を目指して」をテーマにしています。『環の国』とは、20世紀型の「大量生産・大量消費・大量廃棄の社会」に代わる「持続可能な簡素で質を重視する循環型社会」をイメージした言葉です。『環』は、わが国の伝統(和)にも通じ、環境や循環の「環」でもあります。また、人が協働する「環」、人を含む生態系の「環」、日本と世界の「環」といった意味を込めています。地球と共生す る『環の国』日本を実現することは21世紀の重要課題です。” 今年の「環境白書」の内容は、表1のような目次の構成から伺える。“第1部 序説 地球と共生する「環の国」日本を目指して”は、今回新たに設けられたもので、本年度のテーマである「環の国」と位置づけた21世紀循環型社会について、その実現に向けた課題、基本戦略、政策方針を解説している。 <表1>「平成13年版環境白書」の構成
以下では、“第1部 序説”の“第1章 21世紀社会の環境政策に与えられた課題とその基本戦略”を紹介する。 1.2 第1章の要約 第1章の冒頭に以下の要約が記されている。 “内外の社会経済の構造変化に伴い、私たちが対処すべき環境問題が大きく変容しており、これを受けて、わが国の環境政策に与えられた課題も変化しています。この章では、21世紀の鍵を握る「環境」の面でわが国の能力と経験を最大限に発揮して、社会経済のあり方を持続可能なものに変えていくこと、地球と共生する「環の国」日本としての実績を世界に示すことが、わが国にふさわしい国際貢献の仕方ではないかという考え方を明らかにしています。その上で、昨年末に閣議決定された新しい環境基本計画から「環の国」日本の実現に向けた基本戦略を明らかにしていきます。” 1.3 環境問題の変容 21世紀初頭の社会経済の構造変化が環境問題の変容をもたらす。わが国の社会経済の構造変化を加速させた2つの世界的な潮流が「情報化」と「グローバル化」であった。同白書では、社会経済の構造について、人口・所帯構成、地域分布、ライフスタイル、産業構造の変化の各項目に考察を加えている。 さらに、これらの要因によるわれわれの経済活動、産業活動、日常生活が環境に与える影響が深刻な地球環境問題を発生させていると指摘し、図1のように地球環境問題に関わる様々な事象を整理している。同図では、“人類存続危機”に至る事象の因果関係を、①われわれの生活や経済活動の維持に伴う諸活動、②地球環境への影響、③直接的に被害を及ぼす事象の順に関係付けている。 <図1> 問題群としての地球環境問題2) 1.4 新環境基本計画に盛られた「環の国」日本の実現 今回の環境白書における環境政策の基本理念は、昨年12月22日に閣議決定された「新環境基本計画」に基づいている3)。 従来の「環境基本計画」(1994年12月閣議決定)に基づいて、毎年の環境白書では、その「各論編」において、過去1年間の“環境の状況に関する年次報告”および“新年度において講じようとする環境省の保全に関する施策”の中で、それぞれ“環境基本計画の効果的実施”の章を設けて、「環境基本計画」を取り上げていた。 本年度は、「新環境基本計画」を特に取り上げ、“第1部 序説 地球と共生する『環の国』日本を目指して:第1章21世紀社会の環境政策に与えられた課題とその基本戦略:第3節 新計画に盛り込まれた『環の国』日本を目指した基本戦略を明らかにする”で、その解説を行っている。(「新環境基本計画」については「産洗協月報,2001年1月号」を参照) 1.5 「新環境基本計画」に基づく基本理念 「新環境基本計画」は、同環境白書で図2のようにその構成が説明されており、「環境基本法」の環境政策の理念を実現し、持続可能な社会を構築するための条件を満たすために、「循環」「共生」「参加」「国際的取組」という4つの長期的目標を掲げている。 <図2> 「新環境基本計画」の構成4) この長期的目標は、当初の「環境基本計画」を踏襲したものであるが、同書では、以下のように説明されている。 “第一に「循環」とは、環境への負荷をできる限り少なくし、循環を基調とする社会経済システムの実現を目指すことです。 第二に「共生」とは、環境の特性に配慮ながら健全な生態系を維持、回復し、自然と人間との共生の確保を目指すことです。 第三に「参加」とは、あらゆる主体が環境への負荷の低減や環境の特性に応じた賢明な利用などに自主的積極的に取り組み、環境保全に関する行動への主体的な参加を目指すものです。 第四に「国際的取組」とは、国際社会の舞台におけるわが国からの積極的な取組により地球環境の保全への着実な寄与を目指すものです。” 「新環境基本計画」に基づいて21世紀初頭における環境政策の重点分野が定められたが、その重点分野に即して、重点的に取り組むべき施策を「11の戦略的プログラム」として同白書に提示している。その中に取り上げられた環境問題(分野別)は、以下の6項目で、「化学物質対策の推進」はその一つである。 ① 地球温暖化対策の推進 ② 物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組 ③ 環境への負荷の少ない交通に向けた対策 ④ 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組 ⑤ 化学物質対策の推進 ⑥ 生物多様性の保全のための取組 <参考資料> 1) 環境省編:「平成13年版環境白書 - 地球と共生する「環の国」日本を目指して -」 2) 前掲1)、p.11 3) 日本政府:「環境基本計画 = 環境の世紀への道しるべ =」(2000.12) 4) 前掲1)、p.29 2.「よくわかる洗浄のPRTR対策」の発行 日本産業洗浄協議会の編集になる日刊工業新聞社発行の「よくわかる洗浄技術シリーズ」の第3巻として、「よくわかる洗浄のPRTR対策 = 排出量、移動量の算出マニュアル =」がこのほど発行された(B6判、178ページ、本体価格1800円)。 以下に、その概要を説明した同書の“はじめに”を紹介する。 ・はじめに 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」が平成11年(1999)7月に制定公布され、平成12年3月には同法の施行令が公布されました。そして、平成13年4月より排出量等の把握が始まり、平成14年4月以降は排出量等の届出が必要になります。 この法律は略して「化学物質管理促進法」あるいは「PRTR法」といいますが、人や生態系への有害性があり、環境中に広く存在すると認められる物質354種を第一種指定化学物質として、これらの化学物質を取り扱う事業者が自主的に有害物質の管理の改善を図り、環境の保全上野支障を未然に防止することを目的にしています。 第一種指定化学物質のなかには洗浄剤として使用されているものや、洗浄剤成分の一部として添加されているものがあり、製造業で生産工程として製造を行っている事業者はPRTR法の対象となる可能性があります。もし第一種指定化学物質と関連する洗浄剤を使用していて、第一種指定化学物質の取扱量が基準数量以上の場合には年間の排出量や移動量を算出して国に届け出ることが義務付けられます。 洗浄工程は製造業では欠くことのできない、そして広く行われている工程で大企業から中小企業までが何らかの洗浄を実施しています。そうした多くの洗浄従事者の方々にPRTR法の要点を紹介し、さらに第一種指定化学物質の排出量等を算出する必要がでてきた洗浄現場の方のために算出の方法を分かり易く解説するマニュアルつくりを日本産業洗浄協議会PRTR委員会で企画しました。 PRTR委員会の約1年の活動により洗浄剤別の標準的工程をモデル化してそれぞれの工程からの対象となる化学物質排出源を明かにし、排出源毎に生ずる廃棄物、大気や水域への排出物や排出物の容積ないし重量と対象物質の濃度の情報が必要になります。これらのうち容積や重量の計量は不可欠ですが、濃度情報としては洗浄剤の対象となる化学物質の含有率(MSDSから入手できる)が役立ちます。 しかし、廃棄物中の汚れ物質量等実測が必要な必要となる場合がでてきます。その合の測定法はもちろん紹介してありますが、類似のケースで過去の実績例から通常認められている値が得られる場合には、排出係数とは異なる洗浄分野独自の「算出係数」として実測値の代わりに用いる簡便法も示しました。 なお、算出式の理解を深めるために算出式に具体化な数値を用いての計算事例が示してあります。 読者の方々には、本書によりPRTR法の対象となる化学物質の使用状況を把握して、対象事業者に該当する時は排出量、移動量の届出を的確に行い、有害物の使用量削減などPRTR対策の促進に役立てていただければ幸いです。 |
環境保護情報(2001年5月)
1. ジクロロメタンの大気環境基準が設定された
環境省は、4月20日に、「ジクロロメタンによる大気の汚染に係る環境基準」を設定したと発表した。
「大気の汚染に係る環境基準」とは、1993年に公布された「環境基本法」の第16条に基づくもので、1997年2月にベンゼン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンについてそれらの基準値が設定されていた。
1.1 概要
環境省は、平成12年12月19日の中央環境審議会答申を受け、ジクロロメタンによる大気の汚染に係る環境基準について、4月20日付けで告示した。
基準値は、1年平均値で0.15mg/m3以下であり、これが今後とも達成されるよう、引き続き、ジクロロメタンに関する事業者の自主管理による取り組みを推進するとともに、大気環境の監視を実施していくこととしている。
1.2 経緯
中央環境審議会は、平成7年9月20日付けで諮問された「今後の大気汚染物質対策のあり方について」に対し、平成12年12月19日に第6次答申を行い、これによりジクロロメタンに係る大気環境基準設定に当たっての指針値が示された。
環境省ではこれを受けて、環境基本法第16条に基づく大気の汚染に係る環境基準を設定した。
1.3 告示の内容
ジクロロメタンと同様の検討経緯を経て設定されている「ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる大気の汚染に係る環境基準について」の一部改正として告示。
改正の内容は以下の通りで、同環境基準は、今般の告示により、計4物質について設定されたこととなる。。
・ ジクロロメタンの環境基準(1年平均値で0.15mg/m3以下)を追加。
・ 題名を「ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について」に変更。
1.4 今後の対応
平成11年度の地方公共団体等による有害大気汚染物質モニタリング調査では、今回設定された基準値を超過してジクロロメタンが検出された例はない。環境省では、本基準が今後とも達成されるよう、引き続き、ジクロロメタンに関する事業者の自主管理による取り組みを推進するとともに、大気環境の監視を実施していくこととしている。
1.5 中央環境審議会の第6次答申
中央環境審議会が今回受けた試問事項は、「有害大気汚染物質に関するこれまでの取組の評価及び今後の対策のあり方について」と「ジクロロメタンに係る環境基準について」の2つであった。
ジクロロメタンに関しては、同審議会の環境基準専門委員会が、1997年6月より有機化合物系作業分科会においてジクロロメタンの健康影響評価に関する作業を開始し、2000年6月にジクロロメタンに係る専門委員会報告書のとりまとめを終了し、その結果に基づく判断が第6次答申に盛り込まれた。
(1) 提案要旨
・ ヒトの発がん性の可能性を完全に除外できないものの、そも可能性は小さいと判断。
・ このため、発がん性以外の毒性に関するデータを基本として、大気環境基準値を定めることが妥当。
・ 発がん性以外の毒性については、労働環境において健康への影響の見られない濃度レベルは300mg/m3程度の濃度域に存在。
・ これに不確実係数2000を除して得た数値0.15mg/m3(年平均値)を指針として提案。
(2) ジクロロメタンの有害性
・ 発がん性
マウスにおいては発がん性が明らかであるが、種差が大きい。ヒトについては、可能性を完全には除外できないが、可能性は小さいとされる。
・ 非発がん影響
中枢神経に対する麻酔作用。高濃度吸収の場合に、ヒトで精巣毒性を発揮する可能性あり。
(3) ジクロロメタンの使用実態等
・ 年間製造量及び使用量
・ 年間排出量と環境モニタリング消費の推移
<参考資料>
1) 環境庁大気保全局:「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第6次答申):「有害大気汚染物質に関するこれまでの取組の評価及び今後の対策のあり方について」並びに「ジクロロメタンに係る環境基準について」」(2000.12)
2) 環境省:「(報道発表資料)中央環境審議会答申「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第6次答申)」について」(2000.12.19)
3) 環境省告示第30号(平成13年4月20日)「ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について」、官報、第3100号(2001.4.20)
2. セイコーエプソン㈱が「第10回地球環境大賞」を受賞
当協議会正会員のセイコーエプソン株式会社は、本年度の「第10回地球環境大賞」(日本工業新聞社主催、財団法人世界自然保護基金日本委員会特別協力)において、経済産業大臣賞を受賞した。
同社の受賞理由は、地域密着型で幅広い環境活動を展開、環境保全活動を最重要事業課題としたこととされ、以下は、その受賞の主な内容である。
「コラボレーションに基づいた環境保全活動を追求すべく、地域や関係する企業と協業した環境活動を実践。近隣企業に対して、無料の省エネ診断や環境活動事例集の配布を行ったり、主要建築会社・地元企業などと協力して、法的規制を先取りする「建築廃材処理ガイドライン」を制定するなどした。また、地域に対しては、次世代を担う若者の環境問題に対する認識を高めるため、信州大学やセイコーエプソン工科大学、エプソン情報科学専門学校へ環境講座の講師を派遣したり、事業所近隣の清掃活動、環境対策に関する積極的な工場見学の受け入れなどを行っている。
企業市民として、地球環境との調和を経営の最重要課題の一つとして位置付け、ゼロエミッション、エネルギー削減、グリーン購入、省エネ商品開発を推進。恵まれた自然環境の中で育まれた社風による事業展開が着実に成果を上げている。
こうした環境保全活動の実績とノウハウを積極的に開示し、近隣地域や事業展開している世界の各地域において意欲的な環境活動を推進している。」
なお同社は、1992年度(第2回)においても、日本工業新聞社賞を受賞している。
<写真> 授賞式における同社安川会長
(提供:セイコーエプソン㈱)
3. 環境省が報告書「地球温暖化の日本への影響2001」を発表
環境省は、わが国における温暖化の影響をとりまとめることを目的として、1999年度より環境省地球温暖化問題検討委員会のもとに「温暖化影響評価ワーキンググループ」(座長:西岡秀三国立環境研究所理事)を設置し、検討を行ってきた。これは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今春に第3次評価報告書を公表したことと並行して行われた作業であった。
環境省は、その報告書がまとまったと4月26日に発表した。その報告書は、「地球温暖化の日本への影響2001」と題し、日本におけるこれまでの気候の変化や将来予測、陸上生態系、農林水産業、水文・水資源、海洋環境、社会基盤施設、健康への地球温暖化による影響評価、影響の経済評価、影響の検出と監視、適応・脆弱性評価を主な内容としている。
地球温暖化問題検討委員会は、1988年に環境庁に設置され、以後気候変動全般についての科学の現状を把握する活動を行っている。
同委員会は、1992年に影響評価委員会を設置し、1994年に「日本への気候変動影響報告書」をまとめ、1995年には影響評価ワーキンググループを設置して、第2回報告書「温暖化の日本への影響1996年」を1996年に発表している。
同報告書の概要は、経済省のホームページで紹介されており、その全文は近々出版される予定であるが、以下はその中で説明されているいくつかのトピクスである。
(1) 日本の異常気象と気候変動
全国の年平均気温は上昇傾向にあり、都市化の影響を除いて、過去100年あたり約1.0℃上昇した。都市部では、2倍以上の上昇が観測されている。
(2) 全球気候モデルによる気候変化予測
今後100年間の全球年平均地上気温の昇温量は+3.6℃であるが、日本付近での年平均地上気温の昇温量は全球平均よりやや大きく、南日本で+4℃、北日本で+5℃であった。
(3) 森林生態系への影響
近年、ニホンジカ、ニホンザル、イノシシなどの大型哺乳動物が生息分布を拡大しているのは、気候変化による積雪量・積雪期間の減少による影響が大きいと考えられる。
(4) 草原への影響
50年後には亜熱帯植生が石狩低地以南から消滅し、冷温帯植生も、九州・四国・紀伊半島から消滅し、亜熱帯植生が九州南端に出現する。100年後には、亜寒帯植生は、北海道の山地を除いて消滅し、冷温帯植生も本州では山地帯に縮小し、暖温帯植生が、本州の大半を占め、亜熱帯植生が九州・四国・本州南部の低平地に拡大する。
(5) 健康への影響
北上するコガタハマダラカによるマラリア、ネッタイシマカによるデング熱など、媒介動物感染症の増加が予想される。
(6) 日本ではすでに温暖化の影響がみられるのだろうか?
比較的長期データが整っている生物季節観測からは、ソメイヨシノ(サクラ)の開花日がここ50年に5日早まっているなどが指摘されている。
常緑広葉樹の分布拡大、チョウ・ガ・トンボ・セミの分布域の北上と南限での絶滅増加、マガンの越冬地が北海道にまで拡大、熱帯産の魚が大阪湾に出現など気候変動と関係するとみられる現象が報告されている。
<参考資料>
1) 環境省:「地球温暖化の日本への影響2001」報告書について(2001.4.26)
2) 環境省地球温暖化問題検討委員会温暖化影響評価ワーキンググループ:「地球温暖化の日本への影響2001(概要)」(2001.4)
4. 「HFC等自主行動計画」の見直し:「産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会」
地球温暖化対策の一環としてHFC等3ガスの利用分野における排出抑制を検討するために、「産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会」が検討を開始した。第1回会合は3月26日、第2回会合は4月26日に開催されている。
4.1 審議事項
(1) 従来行われてきた産業界の「HFC等の排出量抑制に関する自主行動計画」について以下の検討を行う。
・透明性・信頼性の向上
・アウトサイダー対策
・実効性向上のための取組
(2) 京都メカニズムの活用等各政策手法のHFC等の適用の可能性
4.2 「自主行動計画」の経緯
経団連は、産業・エネルギー転換部門の2010年におけるエネルギー起源CO2排出量を1990年レベル以下にするなど、温室効果ガス排出削減のための対策として、1997年に、「環境自主行動計画」を策定した。
政府は、1998年6月に「地球温暖化対策推進大綱」を策定したが、その中でこの自主行動計画がわが国の地球温暖化対策の重要な柱の一つとして位置付けた。
経済産業省は、「地球温暖化対策推進大綱」を受けて、このような経団連・環境自主行動計画などの産業界の自主行動計画について、その進捗状況の点検を行い、実効性を確保することになった。
その活動は、1998年度以降毎年、関係する審議会(産業構造審議会、総合資源エネルギー調査会、産業技術審議会、化学品審議会)において、また、1999年度以降毎年、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議および地球温暖化対策推進本部において、産業界等の行動計画の事後点検が行われている。
4.3 今後の検討事項
HFC等の今後の対策のあり方について、以下のような事項が検討課題として議論されている。
(1) 自主行動計画の透明性や信頼性の向上を支援するための施策の検討
・ 産業界による自主的な情報開示等の充実
・ 第三者機関の活用
・ 目標の設定のあり方の変更
(2) 自主行動計画への参画もしくは計画の策定を促すための施策の検討
・ 産業界による自主的な参画業種の拡充(自主行動計画を策定していないアウトサイダーの業種・企業の確認)
・ 支援措置による対応
(3) 実効性を向上させるための施策の検討
・ 進捗状況の評価による対応
・ 支援措置による対応
・ 自主的な排出量取引による対応
<参考資料>
・ 経済産業省製造産業局:「産業構造審議会化学・バイオ部会第2回地球温暖化防止対策小委員会・配布資料」(2001.4.26)
5. 温室効果ガス削減の目標達成シナリオの策定:「中央環境審議会地球環境部会目標達成シナリオ小委員会」
昨年12月に、中央環境審議会は「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」報告書を発表した。同報告書では、“地球温暖化対策推進大綱に示された6%削減目標を巡る状況は、大綱を策定した時点(1998年)と大きく変わりつつある。”とし、“こうした状況の変化に鑑み、6%目標の達成内容についても、最新の情報を踏まえて総合的に検討することが適当であり、中央環境審議会においてもこうした検討を行うことが必要である”としている。
中央環境審議会地球環境部会は、「目標達成シナリオ小委員会」を設置し、この検討を行うこととなった。同小委員会は、既に3回の会合を開催している(第1回:3月29日、第2回:4月9日、第3回:4月26日)。
・審議事項
(1) 削減目標の達成シナリオ策定のための技術的検討を行い、各種対策の削減ポテンシャル等を詳細に分析し、その結果を地球環境部会に報告する。
(2) 京都議定書の目標達成に向け、2010年時点における対策の在り方を検討する。
<参考資料>
1) 環境省地球環境局:「中央環境審議会地球環境部会目標達成シナリオ小委員会第1回会合」配布資料(2001.3.29)
2) 環境省地球環境局:「同第2回会合」配布資料(2001.4.9)
3) 環境省地球環境局:「同第3回会合」配布資料(2001.4.26)
6. 主な環境問題の動向(2001年3〜4月)
テーマ |
年月日 |
事 項 |
1.オゾン層破壊 |
01.03.01 |
日本・経済省:「産業構造審議会化学・バイオ部会第1回オゾン層保護対策小委員会」 |
01.03.26-27 |
UNEP:「第33回モントリオール議定書多数国間基金執行委員会」(モントリオール、カナダ)CFC管理戦略等検討会第1回会合」:CFC,HCFC,HFCの管理戦略を検討 |
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01.04.19 |
日本・経済省:「産業構造審議会化学・バイオ部会第2回オゾン層保護対策小委員会」 |
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01.04.24 |
WMO:今冬から春にかけてのオゾン層調査結果を発表 |
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2.地球温暖化 |
01.2.28-3.3 |
UNEP:「IPCC第3作業部会第6回会合」(アクラ、ガーナ):第3次評価報告書を採択 |
01.03.02-04 |
「G8環境大臣会合」(トリエステ、イタリア):京都議定書発効等を討議 |
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01.03.14 |
米・ブッシュ大統領:発電所からの大気汚染物質の排出規制対象に |
01.03.14 |
日本・経済省:「産業構造審議会環境部会第1回地球環境小委員会」:(従来の産業構造審議会地球環境部会基本政策小委員会を引き継いだ組織)京都議定書目標達成を目的 |
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01.03.15 |
日本・環境省:「温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会(第4回)」:温室効果ガス排出の予測に関する報告書を発表 |
01.03.19 |
日本・環境省:「中央環境審議会地球環境部会国内制度小委員会」:地球温暖化対策推 |
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01.03.26 |
日本・経済省:「産業構造審議会化学・バイオ部会第1回地球温暖化防止対策小委員会」:HFC等3ガスの排出抑制自主行動計画の再検討 |
01.03.28 |
米:京都議定書不支持を正式に表明 |
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01.03.29 |
日本・環境省:「中央環境新地球環境部会目標達成シナリオ小委員会第1回会合」: |
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01.03. |
ルーマニア:京都議定書を批准:京都議定書の削減目標を持つ国として初めての批准 |
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01.3.31-4.1 |
EU:「環境相理事会」(キルナ、スウェーデン):京都議定書をEUとして堅持する方針を確認 |
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01.04.04-06 |
UNEP:「IPCC総会」(ナイロビ、ケニア):3つの作業部会の第3次評価報告書を採択 |
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01.04.05 |
OECD:「環境アウトルック」を発表:5月15-16日のOECD環境相会議で、「21初頭10のOECD環境戦略」として採択予定。 |
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01.04.09 |
日本・環境省:「中央環境新地球環境部会目標達成シナリオ小委員会第2回会合」: |
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01.4.11 |
ヤン・プロンク(COP&議長・オランダ環境相):京都議定書の具体的ルールについて新提案を提示:森林吸収について二重の上限を設定 |
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01.04.13 |
日本・気象庁:日本付近の温暖化予測を発表 |
テーマ |
年月日 |
事 項 |
01.04.21 |
「地球温暖化問題に関する非公式閣僚級会議」(ニューヨーク):40ヵ国の環境相が参加日本・気象庁:日本付近の温暖化予測を発表 |
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01.04.26 |
日本・環境省:「地球温暖化の日本への影響2001」報告書を発表 |
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01.04.26 |
日本・環境省:「中央環境新地球環境部会目標達成シナリオ小委員会第3回会合」: |
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3.大気汚染 |
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4.水・土壌汚染 |
||
5.廃棄物・リサイクル |
01.04.01 |
日本:各種リサイクル法の施行 |
6.化学物質 |
01.03.30 |
日本:「PRTR法施行規則」公布 |
7.企業環境 |
||
8.環境全般 |
01.03.01 |
日本政府:「21世紀"環の国"づくり会議第1回会合」 |
(2001年4月) |
1. 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会第6回会合」 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会第6回会合が、2月28日(水)から3月3日(土)までガーナ・アクラにおいて開催された。 会合においては、IPCC第3次評価報告書・第3作業部会報告書の政策決定者向け要約(Summary for Policymakers)の審議・採択及び第3作業部会報告書本体の受諾が行われた。 今回採択された報告書は、気候変化の緩和対策について、その科学的、技術的、環境的、経済的、社会的側面についての評価等をとりまとめたものである。報告書では、気候変化の緩和対策について、技術的対策のみならず、京都議定書に基づく対策を講じた場合の社会的経済的な影響等を含め、経済学を始めとしてその他の社会科学を幅広く含めた総合的な評価を行っている。 本報告書の執筆作業は各国政府や専門家の協力の下で進められ、これまでに報告書本体と政策決定者向け要約(SPM:Summary for Policymakers)の2部構成よりなる最終報告書案が作成された。今回の会合では、SPMの審議・採択が行われ、併せて報告書本体が受諾された。 以下に、第3作業部会の第3次評価報告書の内容を、環境省のホームページより紹介する。 1.1 気候変化の緩和への挑戦 (1) 気候変化の緩和は、開発、公平性、持続可能性に関連するような幅広い社会・経済政策とトレンドに影響を受け、また影響を与えている。気候変化の緩和は、より幅広い社会的な目的と相まった場合、持続可能な発展の促進に役立つ可能性がある。 (2) 21世紀中において石油、石炭、天然ガスの枯渇によって炭素排出量が制限されることはない。ただし、既存の石油及び天然ガスの埋蔵量は限定されているため、21世紀中にエネルギー構成の変化が起きる可能性がある。 1.2 温室効果ガスの排出を制限または削減し、吸収を増大させる方策 (1) 技術面では大きな進展がみられており、これらを積み上げると全世界の排出レベルを2010〜2020年において2000年の水準以下にできる潜在的可能性がある。例えば、風力発電や効率的なハイブリッドエンジン車の市場参入、燃料電池技術の進歩、CO2の地下貯蔵実証試験等が実施されている。ただし、これらの削減を実施するためには、実施のためのコスト、支援策、研究・開発の促進が必要である。また、これら結論は、種々の仮定と相当程度の不確実性を含んでいる。 (3) 排出削減のためのオプションとしては、天然ガス、コージェネレーション、バイオマス燃料発電、ゴミ発電、原子力発電などが挙げられている。 (4) 森林、農耕地その他の陸上生態系システムは、大きな緩和ポテンシャルを有している。これは必ずしも永続的なものではないが、炭素ストックの保全及びCO2の吸収により、他の対策をさらに開発し、実施する時間的猶予が得られる。生物的な緩和オプションの可能性は、2050年までにおおむね100GtC(累積)規模と推定され、この期間での化石燃料による排出量予測値の10〜20%に相当する。このオプションは、適切に実施されれば、大気中のCO2削減に加え、生物多様性の保全、持続可能な土地管理、地方における雇用等の社会的・経済的・環境的な便益を併せ持つ可能性がある。一方、実施方法が不適切な場合、生物多様性の喪失、共同体の崩壊、地下水汚染等を引き起こす可能性もある。 (5) 大部分のモデルによると、既知の技術的オプションにより、例えば、おおむね100年後には大気中のCO2濃度を450、550ppmあるいはそれ以下で安定化できる可能性がある。ただし、その実施には関連する社会経済的及び制度的な変革が必要となる。 1.3 緩和行動のコストと補足的便益 (1) ノーリグレット(後悔しない)方策(すなわち、気候変化の緩和を除く、エネルギーコストの削減等の利益が社会的なコストと等しいか上回るような方策)をどの程度活用できるかによって、温室効果ガス排出を、正味の社会的コストをかけずに制限することが可能である。 (2) 京都議定書実施の推計コストは、研究により、また地域により異なっており、京都メカニズムの活用等に関する仮定の置き方に大きく依存する。国際的エネルギー・経済モデルを用いた研究によると、次のようなGDPへの影響が示唆されている。 [附属書II諸国(先進国)] 世界的な研究の大半において、排出量取引が行われない場合、2010年におけるGDPの損失をそれぞれの附属書 II地域で約0.2〜2%と予測している。排出量取引が自由に行われる場合、2010年における損失は、GDPの0.1〜1.1%と予測されている。これらの研究には、広範囲な仮定条件が含まれており、また、個別の国・地域においては、予測値の幅がさらに大きくなる可能性がある。 全地球規模のモデル研究によると、京都議定書の削減目標を達成するための国内での限界削減コストは、排出量取引なしの場合では約20〜600米ドル/tC、附属書B諸国間の排出量取引ありの場合、約15〜150米ドル/tCと報告されている。 [経済移行国] 大部分の国において、GDPへの影響は、無視できる程度から数%の増加までの幅がある。一部の国においては、エネルギー効率が劇的に向上し、また不況が継続するという仮定のもとで、割当量が推定排出量を上回る可能性がある。 (3) 長期的な費用対効果の研究によると、安定化の濃度レベルが750ppmから550ppmまでの間はコストの上昇は緩やかであるが、550ppmから450ppmの間で大幅なコストの上昇が起きる。ただし、上記の研究においては、炭素吸収、CO2以外の温室効果ガス等の影響は考慮されていない。
1.4 気候変化の緩和方策 (1) 温室効果ガスの緩和方策を成功裡に実施するには、多くの技術的、経済的、政治的、文化的、社会的、行動上、制度上の障害を克服する必要がある。 (2) 気候変化に対する各国の総合的政策手法に含まれる可能性のあるものには、排出・炭素・エネルギー税、取引可能または取引不可能な排出枠、助成の供与または廃止、デポジット制度、技術または実施基準、エネルギーミックス、製品の禁止、自主協定、政府の投融資、研究開発援助等がある。 (3) 気候政策をそれ以外の目的の国内政策と統合し、長期的な社会的・技術的変化の達成に向けた、幅広い移行戦略として再構築することによって、気候変化緩和の効果を増すことができる。 (4) 国際的な協調活動は、緩和コストの低減を助け、競争力に関する懸念、国際的な貿易ルールへの抵触の可能性、カーボンリーケージに対応する上で重要である。これには、京都議定書に基づく排出量取引(ET)、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)に加え、協調的な排出・炭素・エネルギー税、技術・製品基準、産業界との自主協定、資金や技術の直接的な移転等が含まれる。 (5) 本報告書は、排出緩和、技術開発、科学的な不確実性の低減などの行動を早期に実施することにより、温室効果ガスの大気濃度安定化へ向けてより柔軟な取組が可能となるという第2次評価報告書の結論を再確認している。 (6) 国際的な枠組みにおける環境上の有効性、気候政策の費用効率性、合意の公平性の3つは相互に密接に関連しており、枠組みの構築に当たっては、効率性と公平性の両方を向上させるように設計することが重要である。国際的な枠組みに関する共同体制の構築に関する文献によると、適切な努力分担とインセンティブの付与を通じて、気候変化に関する枠組みへの参加をより魅力あるものにするかという点を含め、これらの目的を達成するためのいくつかの戦略が提示されている。 1.5 知識のギャップ (1) 前回の評価に比べ、気候変化緩和の科学・技術・環境・経済・社会的側面において進歩がみられた。将来予測を強化し、不確実性を減少させるため、途上国も含め、さらなる研究が必要とされている。現在の知見と政策決定者のニーズのギャップを縮めるために優先的に取り組むべき課題は次のとおりである。 ・技術的・社会的な改革オプションの地域別、国別、部門別ポテンシャルのさらなる探求・すべての国における気候変化の緩和に関係する経済的、社会的、制度的な問題・特に結果の比較可能性に留意した、緩和施策の潜在的可能性とそのコストの分析手法・気候緩和オプションの、開発、持続可能性、公平性の観点からの評価 2. IPCC第3次評価報告書について IPCC第3次評価報告書は、地球温暖化問題全般に関する世界の最新の科学的知見をとりまとめたものであり、気候変動予測を扱う第1作業部会報告書、温暖化の影響・適応を扱う第2作業部会報告書、温暖化への対策・政治経済的側面の評価を扱う第3作業部会報告書及び統合報告書の4部構成となる。 今後は、IPCC第17回総会(4月4日〜6日、ケニア・ナイロビ)において、第1〜第3作業部会の3つの評価報告書が最終的に承認される予定となっている。 さらに、統合報告書については、今後、執筆作業が進められ、IPCC第18回総会(9月24日〜29日、英国・ロンドン)において審議・採択される予定である。 3. PRTR制度の実施開始 PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に基づいて、4月1日よりPRTR制度(特定の化学物質の環境への排出量等の把握・届出制度)が実施されることとなった。 3.1 同法律施行規則の公布 これに先だって、同法律施行規則(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律等及び管理の改善の促進に関する法律施行令)が3月30日付けで公布された。 PRTR制度の体系を、経済産業省は図1(下記)のごとく説明している。 3.2 法律施行規則の概要 施行規則に規定されている事項は以下の通りである(図2参照)。 (1) 排出量及び移動量の算出方法 以下の5つの方法から的確なものを選択して算出する。 ・ 物質収支を用いる方法 ・ 実測値を用いる方法 ・ 排出係数を用いる方法 ・ 蒸気圧、溶解度等の物性値を用いる方法 ・ その他的確な排出量を算出できると認められる方法 (2) 把握すべき事項 ・ 事業所単位で年間取扱量が1トン(当初2年間は5トン)以上の第一種指定化学物質の排出量及び移動量 ・ 事業所単位で年間取扱量が0.5トン以上の特定第一種指定化学物質の排出量及び移動量また、排出量については①大気、②公共用水域、③土壌、④当該事業所における埋立処分の4区分ごとに、移動量については、①下水道への移動、②廃棄物の当該事業所の外への移動の2区分ごとに把握する。 (3) 国への届出事項等 毎年度6月30日までに、指定された様式により次の事項を届け出る。 ・ 事業者名 ・ 事業所名及び所在地 ・ 事業所の常用雇用者数 ・ 事業所において行われる事業が属する業種名 ・ 排出量及び移動量 3.3 同法律施行規則に規定する内容(案)に対する意見募集結果 PRTR制度が2001年4月1日から実施されるにあたり、PRTRの対象事業者が排出量等を算出する方法、国に対し届出すべき事項等は法律施行規則で規定されることになる。 経済産業省を含む関係省庁は、同施行規則案について広く国民から意見を聞くために、去る1月24日より2月20日まで、意見募集(パブリック・コメント手続)を実施した。 その結果、提出された意見は、合計35件(企業18、事業者団体5、個人12)で、意見の延べ数は107件であった。受付意見概要及びそれに対する経済産業省及び環境省の考え方・対応は、経済産業省より4月2日に公表された。 <参考資料> 1) 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則」(2001.3.30) 2) 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則に規定する内容(案)について寄せられた意見に対する考え方・対応」(2001.4.2) 3) 「(パンフレット)PRTRがはじまります」 経済産業省・環境省(2001.2) 4) 「PRTR関係法令集」経済産業省・環境省(2001.3) 5) 「PRTR排出量等算出マニュアル(案)」経済産業省・環境省(2001.3) 6) 「平成13年1月からMSDS制度が実施されました!」経済産業省製造産業局化学物質管理課 7) 「PRTR説明会スライドコピー」経済産業省・環境省(2001.3) 8) 「事業者による化学物質の管理の改善を促進するための融資制度の概要」 4. 環境省のPRTRホームページ 環境省は、PRTRに関する従来のホームページを改訂し、4月2日より公表した(URLは下記を参照)。 同ホームページは、PRTR制度の関連資料を再編集し、一般向けの解説を行っており、その内容の特徴は下記のごとくである(図3)。 <図3>環境省のPRTRホームページ (1) PRTR制度の関連資料を再編集し、問答形式の解説ページを新設。 (2) 2001年4月1日から事業者による排出量等の把握が開始されることにあわせ、排出量等算出マニュアルなどの事業者向けの情報を掲載するページを新設。 (3) 情報開示制度や市民によるPRTR制度の活用方法などを伝えるための市民向けページを新設。 (4) PRTR集計結果を紹介するページを新設。現在、パイロット事業結果(1997〜1999年度)の概要を掲載。 (5) リンク集を拡充。(社)環境情報科学センターにある化学物質の排出量を公表している企業のホームページも参照可能。 <参考資料> ・環境省のPRTRに関するホームページ・アドレス (http://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html) 5. 主要塩素系溶剤統計 当協議会の団体会員であるクロロカーボン衛生協会は、このほど2000年12月までの主要 塩素系溶剤の統計を発表した。 同協会のご好意により、同資料の中の工業洗浄剤に係る製品の1991年からのデータを紹介する。 <表1> 主要塩素系溶剤統計 |
(2001年3月) |
1. 産業構造審議会化学・バイオ部会第1回オゾン層保護対策小委員会 昨年11月より「CFC管理戦略」についての検討が、化学品審議会オゾン層保護対策部会において行われてきたが、本年1月の省庁再編により、同検討は新たに設置された「産業構造審議会化学・バイオ部会オゾン層保護対策小委員会」が引き継ぐこととなった。 その小委員会の第1回会合は、3月1日に開催された。今回は、CFC管理戦略の検討としては、昨年11月24日、12月22日に続いて第3回目となる。 今回は、“CFC管理戦略策定に関する基本的な考え方”が提示され、CFCの使用分野ごとの実態および管理上の課題が討議された。 1.1 CFC管理戦略策定に関する基本的な考え方 事務局(経済産業省製造産業局オゾン層保護等推進室)より以下のような“CFC管理戦略策定に関する基本的な考え方(案)”が提示された。 (1) 審議の進め方 ① CFCの使用分野ごとの検討と横断的検討 ・ CFCの管理については、CFCの使用分野・機器ごとに、また、使用、廃棄等の各段階ごとに実態が異なるので、課題の検討に当たっては個々の分野ごとの検討が必要である。そうした検討を踏まえて各分野に共通する事項があればこれを横断的事項として整理する。 ② HCFC、HFCの扱い ・ 本委員会においては、一義的には、本年7月までに策定・提出するCFCの使用・廃棄等に関する管理戦略を検討することとする。 ・ CFCの管理の在り方の検討の中で、HCFC、HFCに関する取組へのつながりも考慮することとする。 (2) 「CFC管理戦略」における基本的考え方(案) ① CFCを使用する機器ごとに生産、使用、廃棄等の経路や実態が異なり、また、関与する事業者が多岐にわたるという実情に応じた対応が必要である。 ② 機器の生産から廃棄に至るライフサイクルの中で、CFCの機器外への排出の抑制を図り、大気中への排出を防止する。 ③ CFCの存在量を減らしていくため、不要なCFCは破壊する。 ④ サイクルを制度的に行う分野については、リサイクルと一体的な回収システムを構築することが実効的かつ効率的である。 ⑤ 技術開発や代替促進支援策等により、経済的に過度の負担を課すことを避けつつ、機器の代替によるCFCの使用削減を促進する。 ⑥ 関係者がその社会的責任を踏まえ、それぞれの役割分担の下でCFCの処理を推進する。 1.2 CFCの使用分野ごとの実態および管理上の課題 CFCの使用分野ごとの実態および管理上の課題については、5分野(業務用冷凍空調機器、カーエアコン、家庭用冷蔵庫等、建築用断熱材、洗浄)について検討された。 洗浄については、以下のように実態と課題が分析されている。 ① 現状 ・ 工業用洗浄分野(金属加工部品、電気電子部品、精密部品等の洗浄)における洗浄剤の種類等使用動向については、供給サイドである主要洗浄剤メーカーからの聴取結果からは、塩素系洗浄剤が全体の約半分を占め、次いで炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤が多い。フッ素系洗浄剤は2〜3%程度で洗浄剤のうちで最も少ない。フッ素系洗浄剤の太宗はHCFC-225、HCFC-141bであり、CFC洗浄剤の新規供給はない。 ・ 工業洗浄剤分野でのCFCの消費量は大手企業が多かったが、企業数では中小企業が多かった。大手企業は、早期にCFC全廃対策を講じ、既に代替品への転換が完了していると考えられる。また、中小企業の場合、CFC洗浄剤の新規供給が全廃されることが予定されていたこと、水系洗浄等代替洗浄技術・物質が早期に普及したことから、CFCの使用に固執する例は少なかったと思われ、さらに、現在すでにCFCの生産全廃から5年以上経過しており、仮にCFC洗浄剤を自らストックしていたとしても現存ストックの量は少なくなっていると推測されることなどから、総じてこれら事業者が現時点で使用するCFC洗浄剤は量的には相当程度限られていると考えられる。 ② 取組 ・ 国は、昭和63年度から、CFC等に代えて代替物質を使用した洗浄設備の取得に対して、税制、財政投融資等の制度で転換を支援している。 ・ 環境省は、中小規模のユーザー企業のCFC洗浄剤の使用状況に関する調査を現在行っているところ。 <参考資料> ・ 経済産業省製造産業局化学物質管理課オゾン層保護等推進室:「産業構造審議会化学・バイオ部会第1回オゾン層保護対策小委員会・配布資料」(2001.3.1) 2. 国際協力事業団の集団研修「オゾン層保護対策・代替技術セミナー」に協力 国際協力事業団(JICA)の集団研修「オゾン層保護対策・代替技術セミナー」は、オゾン層保護対策産業協議会と(財)日本環境衛生センターが事務局となって、1月22日から3月2日まで開催された。同セミナーは1990年度より開始され、今回は11回目となり、開発途上国15ヵ国から16名が参加した。 洗浄分野の研修には日本産業洗浄協議会が講義と工場見学の実施に全面的に協力した。日本において(特に中小企業における)洗浄分野のオゾン層破壊物質全廃をいかに組織的に達成したかを小田切事務局長が、オゾン層破壊物質代替のための最新技術についてを岸本宏司氏(ユシロ化学㈱)が講義した。工場見学は、森合副会長のご好意で、森合精機㈱本社工場(兵庫県明石市)および森合企画委員の紹介で川崎重工㈱川崎工場(兵庫県明石市)を訪問した。 <写真1> 森合精機㈱での岸本氏の講義を終わって
3. 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC第2作業部会第6回会合」 首記会合が、さる2月13日〜16日にジュネーブにおいて開催され、IPCC第3次評価報告書の審議、採択が行われた。第1作業部会の第3次評価報告書については、本月報1月号に紹介した通りであり、さらに第3作業部会の報告書が間もなく発表される予定である。これら全ての第3次評価報告書は、4月4日からナイロビ(ケニア)で開催される「IPCC第17回総会で承認されることとなる。 以下に、第2作業部会の第3次評価報告書の内容を紹介する。 3.1 気候変化の影響の確信 数多くの証拠により、近年の地域的な気温の変化が多くの物理・生物システムに対して影響を及ぼしていることについて高い確信がある。 多くの途上国では、地球規模の平均気温の上昇により、実質的な経済的損失が生まれ、温暖化の程度が大きいほど損失も大きいことが示唆されている。 一方、先進国においては、数℃の平均気温上昇では、経済的利益・損失両方が予想され、より大きな温暖化では経済的損失が予測される。このため、温暖化は先進国と途上国の福利の差を拡大させる。 3.2 水資源への影響 水利用が圧迫されている人工は、現在の約17億人から2025年には約50億人になると予測される。 3.3 食料への影響 多くの研究によると、地球規模の平均気温が数℃上昇した場合、世界の食料需要の増加に食料供給能力の拡大が追いつかず、食料価格が上昇すると予測されている。 3.4 健康への影響 多くの生物媒介性・食物媒介性および水系伝染病は気候変化に敏感に反応する。予測モデルによれば、気候変化によりマラリアおよびデング熱に感染する恐れのある地域が増加することが予測される。 気候変化に伴って増加する熱波は、都市居住者、特に老人や病人、空調設備のない人々の死亡率や罹病率の増加をもたらす。 3.5 居住への影響 低地沿岸域の急速な都市化により、熱帯低気圧などによる気象災害に曝される人口および財産価値が増大している。予測モデルによると、2080年代までに海面水位が40センチ上昇する場合、海面上昇がない場合に比べ、高潮により浸水を受ける年平均人口が7千5百万〜2億人増大すると推計される。 <参考資料> ・環境省:「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会第6回会合の結果について」(2001.2.19) 4. 主な環境問題の動向(2001年1〜2月)
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(2001年2月) |
1. 化学品審議会第17回オゾン層保護対策部会 化学品審議会第17回オゾン層保護対策部会が、去る12月22日に開催された。前回の状況説明の追加として、“CFC使用の管理・削減に関する取組”、“フロンの回収・破壊等に関する取組”について事務局から説明があった。“CFC管理戦略”については、その策定に向けて検討すべき課題の抽出を行うに当たっての事務局案が以下のように提出された。 1.1 CFC管理戦略策定に向けて検討すべき課題の抽出(事務局案) (1) 使用の管理・削減 ① CFC使用機器の使用抑制等 ・ CFC使用機器の使用抑制やCFCの補充(再利用)の取扱いについては、どのように考えて行くべきか。 ② 使用機器の代替や代替物質・技術の利用 ・ 機器の代替をさらに促進するためには、どのような方策が考えられるか。 ・ レトロフィット(現在使われているCFC機器の部品の一部を取り替えることでCFC以外の代替物質を使用できるようにすること)が一部行われているが、この促進を図るべきかどうか。また、ドロップイン冷媒(現在使われているCFC機器にそのまま使用できるCFC以外の代替物質)については、どうか。 ③ 使用の全廃に向かう際の無用の混乱の回避 ・ 冷凍空調機器の冷媒としての使用が全廃に向かう際には、無用の混乱を避けるには、適切な情報提供等の方策が必要ではないか。 (2) 回収・破壊等 ① 実効的・効率的なフロン回収制度の整備 ・ フロン回収の実効性・効率性を向上させていくために、どのような取組が必要か。 ② 今後、回収・処理を検討していくべき分野 ・ 建築用断熱材中のフロンの回収・処理については、断熱材の使用期間が長く、その間の漏洩量の明確化と技術的検討が必要ではないか。 ③ 破壊処理体制の整備 ・ 破壊処理施設については、回収事業者の利便性確保と適切な破壊促進という観点を踏まえつつ、整備を促進するべきではないか。 ④ ユーザー等への啓発 ・ 従来から行われている、国、地方自治体、関係業界などからのユーザー等に対する回収・破壊等に関する啓発を更に強化することが必要ではないか。 (3) 輸出入・国際協力 ・ モントリオール議定書によるCFC等の輸出入規制を補完するものとして、先進国からの中古機器(CFCを含む機器)の輸出等に対する輸入国側の措置に輸出国側として協力すべきことは何か。 (4) 排出量の把握と管理の改善 ・ CFCについては、国による排出量推計に負うところが大きいと考えられるが、排出量の把握や自主管理の促進を、どのように考えていくべきか。 1.2 今後の予定 今後は省庁の再編に伴い、審議会の整理合理化が行われこととなった。すなわち、平成13年度1月以降の審議会等は以下の2つに分類した上で整理合理化が行われる。 ① 基本的政策型審議会:立法過程における法案作成等の基本的な政策を審議事項に含む ② 法施行型審議会:行政の執行過程における計画や基準の作成、不服審査、行政処分等について、法律または政令により当該審議会への必要的付議が定められている 従来のオゾン層保護対策部会は、基本的政策型であり、今後は産業構造審議会オゾン層保護対策小委員会となり、第3回会合が2月末に予定されている。 <参考資料> 1) 通商産業省基礎産業局:「化学品審議会第17回オゾン層保護対策部会・配布資料」(2000.12.22) 2) 経済産業省:「化学品審議会の再編について」 2. 第1回CFC管理戦略等検討会 環境省は、日本における“CFC管理戦略”策定を“オゾン層保護対策推進会議(18省庁会議)”で検討するに先だって、環境保全の観点からフロン管理の在り方について検討するため、「第1回CFC管理戦略等検討会」を去る1月24日に開催した。 今後、関係工業団体に対して、CFCばかりでなくその代替物質等についても併せて調査を行い、5月下旬までに“CFC等管理の在り方について”の取りまとめを行う計画である。 3. PRTR法関連の情報 3.1 施行規則の制定に関する意見の募集 経済産業省は、このほど環境省他関係省庁と共同で、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則」(PRTR法施行規則)の案を発表した。同施行規則は、本年4月1日から予定されているPRTR制度の実施に向けて、対象事業者が排出量等を算出する方法、国に対し届出すべき事項等を定めるものである。 同施行規則は、本年3月に交付の予定であり、経済産業省は、今回それに先立って広く国民からの意見を求めることとし、パブリックコメント手続(意見募集)を開始した。募集期間は1月24日より2月20日まで。 3.2 「よくわかる洗浄現場のPRTR対策」の発行を企画 工業洗浄に使用されている化学物質の中で化学物質管理促進法により第一種指定化学物質に指定されているものは、単一組成の場合は明瞭であるが、処方された洗浄剤の場合は、その成分を見極めなければいけない。その対象となる洗浄剤の一例を表1に紹介する。 <表1>洗浄剤に含まれる指定化学物質の例
環境省および経済産業省は、平成12年度PRTRパイロット事業にあたって排出量等を算出するためのマニュアルを準備したが、その中で代表的な工程での算出方法を解説している。 日本産業洗浄協議会は、PRTR制度が中小企業の洗浄現場で支障なく定着するよう、関連諸問題を検討するために、「PRTR委員会」を2000年6月に設立した。産業界の各分野で、PRTR指定化学物質排出量の簡易算出法の必要性が取り上げられており、現在、(社)日本化学工業協会と(社)化学工学会が経済産業省の委託を受けてその横断的なとりまとめを行っている。日本産業洗浄協議会は、PRTR制度に係わる各種洗浄剤、工業洗浄現場における簡易算出法を担当しているがこのほどその作業を終了した。この検討の成果は、「よくわかる洗浄現場のPRTR対策」として4月に日刊工業新聞社より出版される予定である。 ちなみに、その内容は以下の通り。 第1章 化学物質管理促進法(PRTR法)の概要 1.1 化学物質の規制に関する法的背景 1.2 化学物質管理促進法の目的 1.3 産業洗浄で対象となる指定化学物質 1.4 対象の事業者の要件 1.5 対象製品の要件 1.6 化学物質管理指針 1.7 事業者の責務 第2章 洗浄における排出量、移動量の算出法 2.1 「化学物質管理促進法施行規則」に規定する内容 2.2 脱脂・洗浄工程の概要と排出源 2.3 排出量・移動量算出マニュアル上の共通事項 (1) MSDSの活用の仕方 (2) 算出量の単位 (3) 取扱量の算出 (4) 算出方法の種類 第3章 洗浄剤の種類別算出マニュアル及び算出事例 3.1 水系洗浄剤 3.2 準水系洗浄剤 3.3 塩素系洗浄剤 3.4 フッ素系洗浄剤 (1) HCFC (2) HFE、HFC 3.5 炭化水素系洗浄剤 第4章 算出に役立つ参考データ 4.1 水系洗浄剤 4.2 準水系洗浄剤 4.3 塩素系洗浄剤 4.4 フッ素系洗浄剤 4.5 炭化水素系洗浄剤 4.6 算出係数等一覧表 4.7 その他の参考データ 第5章 付録 5.1 化学物質管理促進法(PRTR法) 5.2 第一種指定化学物質のリスト 5.3 MSDSのJIS項目 5.4 融資制度 <参考資料> 1) 経済産業省:「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則」の制定に関する意見の募集について(2001.1.24) 2) 日本産業洗浄協議会編集:「よくわかる洗浄現場のPRTR対策 - 排出量、移動量の算出マニュアル - 」日刊工業新聞社(近刊) 4.「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第8回会合」 首記会合が、さる1月17日〜20日に上海(中国)において開催され、IPCC第3次評価報告書の審議、採択が行われた。以下に、IPCCの活動内容と今回の会合に関する環境省の報道発表資料の一部を紹介する。 4.1 IPCCの組織と活動概要 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化問題に対応するために、1988年に、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が設立した組織である。地球温暖化問題について、科学的な調査、検討を行うために、研究者や政府関係者を組織し、公的な討議を行っている。同組織は、約1500人の科学者によって5年ごとに、以下の3つのグループごとに報告書をまとめている。 ① 第1作業部会:温室効果ガスの濃度変化、温度上昇の予測 ② 第2作業部会:気候変動の社会、経済への影響の研究 ③ 第3作業部会:温室効果ガスの削減、気候変動の影響緩和 4.2 要 旨 今回の報告書は、気候系についての理解の現状と、将来の気候予測についてまとめたもので、過去50年間に観測された温暖化の大部分が人間活動に起因しているという、新たな、かつより確実な証拠が得られたと指摘している。21世紀中に全球平均表面気温は、1.4〜5.8℃上昇すると予測している(1990年の第1次報告書では1〜3℃、1995年の第2次報告書では、1.0〜3.5℃という予測であった)。 4.3 クロロカーボン オゾン層を破壊し、温室効果ガスでもある多くのクロロカーボンガスの大気中濃度は、1995年以降、モントリオール議定書の規制のもとでの排出削減の効果により、微増又は減少している。一方で、これらの代替物質や一部の化合物(例えば、パーフルオロカーボン(PFC)や六フッ化硫黄(SF6))もまた温室効果ガスであり、それらの濃度は現在増加している。 4.4 温暖化の長期的継続 CO2等の残留性が高い温室効果ガスの排出は、大気成分、放射強制力及び気候に長期的な影響を与える。例えば、CO2排出から数世紀後においても、排出に伴う濃度上昇の約4分の1が大気中に残存する。 CO2濃度が安定した後も、全地球平均表面温度の上昇と、海水の熱膨張による海面水位の上昇は、数百年間継続すると予測される。 氷床は、気候が安定した後数千年にわたって、温暖化に反応し続け、海面上昇に寄与する。気候モデルによると、グリーンランドにおける温暖化は全地球平均の1〜3倍であり、5.5℃の局所的な温暖化が1000年間継続した場合、グリーンランドの氷床溶解による海面上昇への寄与は約3mに及ぶ可能性が高い。 現在の氷力学モデルによると、今後1000年間に南極西部の氷床の溶解は、最大3m海面上昇に寄与する可能性がある。ただし、この結果はモデルに用いられた仮定条件に大きく左右される。 4.5 今後の予定 今後、第2作業部会第6回会合(2月13日〜16日、ジュネーブ)、第3作業部会第6回会合(2月28日〜3月3日、ガーナ・アクラ)においてそれぞれ、第2、第3作業部会報告書SPM(政策決定者用要旨)の審議・採択及び報告書本体の受諾が行われた後、IPCC第17回総会(4月4日〜6日、ナイロビ)において、これら3つの報告書が最終的に承認される予定。 さらに、統合報告書については、今後、執筆作業が進められ、IPCC第18回総会(9月24日〜29日、ロンドン)において審議・採択される予定。 <参考資料> ・ 環境省:「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第8回会合の結果について」(2001.22) 5. 第12回モントリオール議定書締約国会合 第12回モントリオール議定書締約国会合は、2000年12月11日〜14日に、ブルギナ・ファソ(西アフリカ)の首都ワガドウグで開催された。当協議会からは、大川章氏(当協議会企画委員、オゾン層保護対策産業協議会技術部長)および永里善彦氏(当協議会途上国支援準備委員会委員長、㈱旭リサーチセンター副社長)が参加した。以下にその概要を経済産業省および両氏の報告書より紹介する。 <写真1>締約国会合(提供:大川章)5.1 概 要 ・ 途上国のHCFC規制強化が提案されたが、合意に至らず。 ・ CFC非含有定量噴霧吸入剤(MDI)への転換促進策を決定。 ・ オゾン層破壊物質の破壊タスクフォース設置を決定。 ・ 不法貿易の防止等のため、議定書事務局によるラベリング等の対応策の検討を決定 5.2 途上国問題 途上国におけるHCFC規制スケジュールに関する前倒し等の検討が行われたが、開始したばかりの途上国におけるCFC規制の実施に悪影響を及ぼす恐れがあり時期尚早との理由から途上国の合意が得られず、今後、引き続き検討が行われる。 5.3 MDI用途 不可欠用途として例外的に使用が認められているCFC含有MDIについて、転換戦略未策定の先進国は、事務局に戦略を2002年1月末までに提出すること等が決定された。 5.4 破壊問題 オゾン層破壊物質の破壊基準等を改訂するため、技術経済アセスメント・パネル(TEAP)にタスクフォースを設置し、また、TEAPが汚染された規制物質に関する長期的な管理戦略の技術的、経済的可能性を検討し、2002年の第14回締約国会合に報告する。 5.5 不法貿易 不法貿易の防止のため、事務局がオゾン層破壊物質等(これを含有する製品を含む)に関する各国共通のラベリング・製品分類システムの必要性・コスト等の検討を行い、次年度の作業部会に報告する。 5.6 ブルギナ・ファソとは ブルキナ・ファソ(Burkina Faso)は、西アフリカに位置し、マリ、ニジェール、コトジボアール、ガーナ、トーゴ、ベニンの6ヵ国に囲まれた内陸国で、人口は約1千万人、首都ワガドウグは百万都市である。国民はモシ族(約60%)等62の部族から成り立ち、公用語はフランス語で、外交的にはフランスを初めとするEUとの結びつきが強い。産業は農業が75%であるが、首都ワガドウグは砂漠化の傾向がみられる。 日本人は常駐しており、国際協力事業団(JICA)から青年海外協力隊として20名が派遣されている。 <写真2>締約国会合会議場(提供:大川章)<参考資料> 1) 通商産業省オゾン層保護対策室:「モントリオール議定書第12回締約国会合結果概要」(2000.12) 2) 大川章、永里善彦:“第12回モントリオール議定書締約国会合”、「(会報)さんせんきょう」No.18(2001年冬号) 6. 中国におけるオゾン層保護対策洗浄技術セミナー オゾン層保護対策産業協議会は、環境事業団の助成により、中国環境保護局とオゾン層保護対策のセミナーを企画していたが、日本産業洗浄協議会が全面的に協力して、以下のセミナーを開催することが確定した。 ・ 名称:日中・オゾン層破壊洗浄剤代替技術セミナー ・ 期日:2000年12月18日〜20日 ・ 場所:西安市(中国) ・ プログラム: (1) 水系、準水系洗浄剤による金属部品洗浄:山下進(荒川化学工業) (2) 電子部品の洗浄 - フロン、エタン洗浄から代替洗浄へ:岩本英敏(カイジョー) (3) 光学レンズの代替洗浄について:土橋義知(島田理化工業) (4) 炭化水素系洗浄剤について:貝原耕太郎(日鉱石油化学) (5) 炭化水素系溶剤洗浄装置 - 防爆システムと安全:北村裕夫(ジャパンフィールド) 12月17日に、講師団が成田を出発したが、現地の西安空港では濃霧のため着陸が困難となり、上空旋回待機と強行着陸の試みの上、最終的に着陸不可能とのことで、福岡空港経由で10数時間後に成田に引き返した。 講師団の作成した100ページを超すテキストは、中国語に翻訳、製本され、今後教材として活用されるとのことである。 <写真3> 中国でのセミナーのテキスト<参考資料> ・ オゾン層保護対策産業協議会・日本産業洗浄協議会:「日中、オゾン層破壊洗浄剤代替技術セミナー資料」(2000.12) |
環境保護情報(2001年 1月)
1. 経済産業省の誕生 1.1 関係組織の名称変更 2001年1月6日の中央省庁再編によって、通商産業省が経済産業省へ移行する。当協議会の関係する組織は、それに伴って以下のように名称が変更となる。 ・ オゾン層保護対策室(基礎産業局化学物質管理課)→オゾン層保護等推進室(製造産業局素材産業ユニット化学物質管理課) ・ 化学課(基礎産業局化学課)→化学課(製造産業局素材産業ユニット) ・ 産業機械課(機械情報産業局)→産業機械課(製造産業局機械・生活産業ユニット) 1.2 経済産業省の全体組織 経済産業省(通称・経済省、Ministry of Economy, Trade and Industry = METI)には、新しく「ユニット制」が導入され、117の課が26のユニットに組織される(図1:経済産業省の組織)。1.3 化学品審議会の再編 従来の化学品審議会は、<図2:化学品審議会構成図>のように構成されていた。今回の中央省庁再編により、この化学品審議会は、 ① 行政の企画・立法過程における法案作成等の基本的な政策を審議事項に含む「基本的政策型審議会」と ② 行政の執行過程における計画や基準の作成、不服審査、行政処分等について、法律又は政令により当該審議会への必要的付議が定められている「法施行型審議会」 に分類した上で整理合理化が行われることとなった。例えば、オゾン層保護対策部会、地球温暖化防止対策部会などは基本政策型であり、安全対策部会の一部は法施行型である。 本年1月以降の化学品審議会の体制については、法施行型審議会として「化学物質審議会」を設置し、基本政策事項については産業構造審議会において審議を行うとのことである。 <図2> 2. 化学品審議会オゾン層保護対策部会 化学品審議会オゾン層保護対策部会は、その第16回会合を2000年11月24日に開催した。今回より、その委員として、当協議会橋本会長が参加することとなった。 2.1 オゾン層保護対策部会とは 通商産業大臣の諮問機関の一つに“化学品審議会”があるが、その審議会に“オゾン層保護対策部会”が設置されたのは1987年10月であり、以来国際的なオゾン層保護にかかわる動向に対応して各種の答申書を発表してきた。たとえば、1995年12月の「第7回モントリオール議定書締約国会合」におけるモントリオール議定書改正を受けて、「今後のオゾン層保護対策の在り方について(中間報告)」を1996年3月に発表した。また、1997年4月には「特定フロンの回収等に関する今後の取組の在り方について(中間報告)」を発表している。 2.2 今回の部会の趣旨 1999年12月の「第11回モントリオール議定書締約国会合」において、オゾン層破壊物質であるCFCについて、各先進国は「CFC管理戦略」を2001年7月までに策定すべきことが決定された。 先進国においては、モントリオール議定書に基づいて1995年末までにCFCの新規製造等は全廃済みであるが、全廃以前に製造されたCFCは依然冷凍空調機器内に冷媒等として使用されており、その使用時、廃棄時の排出抑制の取組の促進が今後のCFC対策として重要である。このような観点からCFCの管理の一層の促進を求めるため、今回CFC管理戦略の策定が求められることになった。 日本におけるCFC管理戦略策定については、関係省庁からなる「オゾン層保護対策推進会議(18省庁会議)」で検討を進めていくこととされており、同会議において、2000年3月に、今後の戦略検討の進め方について以下のように決定された。 ① 戦略案の検討は、18省庁会議及びその下に設けられた主要関係省庁検討会で進める。 ② CFC使用機器の使用実態、回収状況等の実態把握調査を早急に開始する。 ③ 戦略案の検討を主要関係省庁検討会を中心に調査と平行して進めていく。 こうした政府全体の検討の進行に合わせて、通商産業省の対応を検討するに当たり、CFC管理戦略がCFCの使用、回収等の管理全般に関わる取組みを対象とするものであり、産業界及び国民各層に密接に関係するものであることから、オゾン層保護対策の施策のあり方につきこれまで検討を行ってきた同部会を開催し、「CFC管理戦略」に盛り込むべき施策の具体的なあり方について審議することとなった。 2.3 第16回部会 化学品審議会第16回オゾン層保護対策部会は、2000年11月24日の生産等の規制に関する取り組み、回収・破壊等に関する取り組み、輸出入規制および国際協力の取り組み、排出量の把握と管理の改善などに関する説明が行われ、CFC管理戦略策定に向けた今後の課題の抽出に当たっての留意項目が事務局案として示された。 <参考資料> ・ 通商産業省基礎産業局「化学品審議会第16回オゾン層保護対策部会・関係資料」 (2000.11.24) 3. 第12回モントリオール議定書締約国会合 「第12回モントリオール議定書締約国会合」は、12月11〜14日に、ブルギナ・ファソの首都ワガドウグで開催された。その概要は、通商産業省の発表によると以下の通りである。 (1) 概要 ・ 途上国のHCFC規制強化が提案されたが、合意に至らず。 ・ CFC非含有定量噴霧吸入剤(MDI)への転換促進策を決定。 ・ オゾン層破壊物質の破壊タスクフォース設置を決定。 ・ 不法貿易の防止等のため、議定書事務局によるラベリング等の対応策の検討を決定 (2) 途上国問題 途上国におけるHCFC規制スケジュールに関する前倒し等の検討が行われたが、開始したばかりの途上国におけるCFC規制の実施に悪影響を及ぼす恐れがあり時期尚早との理由から途上国の合意が得られず、今後、引き続き検討が行われる。 (3) MDI用途 不可欠用途として例外的に使用が認められているCFC含有MDIについて、転換戦略未策定の先進国は、事務局に戦略を2002年1月末までに提出すること等が決定された。 (4) 破壊問題 オゾン層破壊物質の破壊基準等を改訂するため、技術経済アセスメント・パネル(TEAP)にタスクフォースを設置し、また、TEAPが汚染された規制物質に関する長期的な管理戦略の技術的、経済的可能性を検討し、2002年の第14回締約国会合に報告する。 (5) 不法貿易 不法貿易の防止のため、事務局がオゾン層破壊物質等(これを含有する製品を含む)に関する各国共通のラベリング・製品分類システムの必要性・コスト等の検討を行い、次年度の作業部会に報告する。 (6) 次回会合 「第13回モントリオール議定書締約国会合」は、2001年10月15〜19日に、スリランカにおいて開催される。 <参考資料> 1) 2) オゾン層保護対策産業協議会:「第12回モントリオール議定書締約国会合概要」(2000.12.19) 4. 「新環境基本計画」が閣議決定された 「環境基本計画」の見直しは、1999年より開始されたが、最終的な「新環境基本計画案」が中央環境審議会より12月13日に森首相に答申された。同答申書は12月22日に「新環境基本計画 = 環境の世紀への道しるべ =」として閣議決定された。4.1 環境基本計画とは 1992年6月にリオデジャネイロで開催された「地球サミット」で、先進国は、環境基本法とそれに基づく環境基本計画の策定を約束した。 今までの「環境基本計画」は、その環境基本法(1993年11月)に基づくもので、1994年12月に閣議決定されたものである。同計画には、環境に負荷の少ない持続可能な社会を構築するために、“循環を基調とする経済システム”“自然と人間の共生”“公平な役割分担での参加”“国際的取組の推進”という4つの長期的目標を提示している。 4.2 見直し作業 環境基本計画の見直しについて、計画では、内外の経済社会の変化に柔軟かつ適切に対応して、計画策定後5年程度を目途として、計画の見直しを行うこととされている。 これを受けて、1995年11月より学識経験者からなる検討会において総合的環境指標の在り方についての検討を行い、1999年度からは、首相の諮問機関である中央環境審議会において見直しの審議を開始した。 審議にあたっては、国、地方公共団体、事業者、国民等に広くヒアリングを行うことになった。 各種団体からのヒアリングは、中央環境審議会の企画政策部会が5つの分野に担当委員を配して、主要工業団体が対応した。5つの分野は、“地球環境関連”“大気・水・土壌環境関連”“廃棄物リサイクル・ダイオキシン等規制物質関連”“自然環境関連”“経済社会のグリーン化関連”であった。 「新環境基本計画中間とりまとめ」は、2000年9月14日に公表され、10月16日までの期間に意見公募が行われ、郵送・ファックス・電子メールによって合計399名の意見提出があったとのことである。 4.3 新環境基本計画の概要 同計画の内容は以下の4部から構成されている。 ・第1部: 環境の現状と環境政策の課題 ・第2部: 21世紀初頭のにおける環境政策の展開の方向 ・第3部: 各種環境保全施策の具体的な展開 ・第4部: 計画の効果的な実施 また、基本的方向や目標を掲げた戦略的プログラムとして下記の11分野の政策を第3部に掲げている。 (環境問題・分野別) ① 地球温暖化対策の推進 ② 物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組 ③ 環境負荷の少ない交通体系の整備に向けた地域レベルの総合計画 ④ 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組 ⑤ 規制物質対策の推進 ⑥ 生物多様性の保全のための取組 (政策手段) ⑦ 環境教育・環境学習の推進 ⑧ 社会経済の環境配慮のための仕組みの構築に向けた取組 ⑨ 環境投資の推進 (あらゆる手段の取組) ⑩ 地域づくりにおける取組の推進 ⑪ 国際的寄与・参加の推進 <参考資料> 1) 環境庁:「平成12年版環境白書」(2000.6) 2) 環境庁:「“環境基本計画ー環境の世紀への道しるべ”(平成12年12月22日閣議決定)について」(2000.12.22) |