1.洗浄現場のPRTR対応のテレビ紹介 金属加工メーカーが、環境保全に取り組み、新しい洗浄システムを導入した事例がテレビ番組で放映されたが、その中で当協議会会員の技術が活躍していることが紹介された。 中小企業庁と中小企業総合事業団は、週1回15分の番組「ビジネスズームアップ」で、中小企業の諸問題を取り上げ、TBS(東京放送)をキー局にして、TBS系列31局による全国ネットで放映している(関東地区では、TBSが毎日曜日の午前6時より15分間)。 今回の取材番組は、「PRTR制度」特集で、経済産業省化学物質管理課の担当になるもので、その取材先の選定に当たり、当協議会に協力依頼があった。 「産洗協事務局通信第611号」での案内により、会員4社からテレビ取材受け入れの申し出があり、最終的に選ばれたのは、小泉工業株式会社(岐阜県大垣市)であって、その番組は、「新たな洗浄システムの導入!環境保全に取り組む金属加工メーカー」として、TBSでは、12月2日(日)午前6時として紹介された。 トリクロロエチレンによる地下水汚染など環境問題の高まりの中で、周辺環境や地域住民への配慮および職場環境の改善のためその全廃に着手した企業リポートで、洗浄機メーカー、洗浄剤メーカーと一体となり、試行錯誤のうえ新たな洗浄システムの開発に成功した事例である。 同社は、1968年設立以来、TVブラウン管の電子銃部品、レーザープリンターや自動車関連の精密部品の製造を手がけ、特にステンレスの深絞りプレス加工を得意としており、洗浄作業は、高度な精密仕上げに不可欠な工程である。 同社清水末雄社長は、1995年よりトリクロロエチレン全廃の検討を開始、十分な洗浄効果を得るために努力を重ね、炭化水素系溶剤を使用する脱フロン・脱エタン金属部品用脱脂洗浄システムの第1号機の導入を1997年に完了した。更に、第2号機として、2000年に短時間で乾燥工程も処理可能な1トル以下の真空状況を付帯することに成功した。洗浄装置は、株式会社アマダ、洗浄剤は日鉱石油化学株式会社の協力によるものである。 清水社長は、最後に“環境問題こそ中小企業が勝ち残るテーマである”と締めくくっている。 番組の最後には、ワンポイント情報として、PRTR制度の解説が付されている。
2.ノニルフェノールエトキシレートに関する日本界面活性剤工業会の方針 日本界面活性剤工業会はノニルフェノールエトキシレートの環境に対する影響に関する見解を取りまとめるとともに、対応策を発表し、関係業界に対して協力を要請した。 (以下日本界面活性剤工業会作成の原文の通り) |
環境保護情報(2001年11月)
1.第13回モントリオール議定書締約国会合 第13回モントリオール議定書締約国会合は、さる10月16日~19日の4日間にわたり、コロンボ(スリランカ)において開催された。 以下はその概要である。 1.1 会期、会場等 ・ 場所:コロンボ(スリランカ) バンダラナイケ記念国際会議場(Bandaranaike Memorial International Conference Hall) ・ 日程:10月16~17日=議定書締約国会合 (準備セグメント)、10月18~19日=議定 書締約国会合(ハイレベルセグメント) ・ 日本政府からの出席者:環境省、外務省、農林水産省、経済産業省から関係者が出席 ・ オブザーバー:JICOPより石井国際部長、藤本シニアアドバイザーが出席 1.2 主な合意事項 (1) n-プロピルブロマイド(nPB)についてn-PBは、現在積極的に拡販されており、その放出量は2010年に4万トンになると推定されることから、以下の事項が決議された。 ・ 締約国は、その使用と放出についての懸念を産業界や使用者に伝えることを求める。 ・ 締約国には、産業界や使用者がもっと経済的で環境にやさしい代替物質がない場合を除きその使用を制限することを求める。 ・ TEAPに年度ごとのn-PBの使用量と放出量を報告することを求める。 (2) オゾン層破壊の可能性ある新規物質 自国の領土内で生産される同物質について、オゾン事務局に報告することを求めるとともに、アセスメントパネルには、オゾン破壊係数の評価基準を作成することを求める。 (3) 途上国のHCFC規制前倒し 反対意見が多く、決議にまでは至らなかった。 (4)リオ+10 「2002年持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルグ・サミット、2002年9月、南アフリカ共和国)に向けて、多数国で取り決められた各種の環境合意間の適切な連携への支援を決定。 (5) コロンボ宣言 オゾン層保護に関するこれまでの取組や今後の各国の取組姿勢等を述べたコロンボ宣言が、会合最終日に採択された。 1.3 次回の開催予定 ウィーン条約第6回締約国会議及びモントリオール議定書第14回締約国会合は、2002年11月にケニアのナイロビで開催。 <参考資料> 1) 環境省:「モントリオール議定書第13回締約国会合の結果について」(2001.10.22) 2) JICOP石井:「モントリオール議定書締約国会合報告およびスリランカ国との二国間支援打合せ」 2.JICOPのHFC、PFCに関する意見書 環境大臣の諮問機関である中央環境審議会 は、その地球環境部会において、2002年までの京都議定書発効を目指し、①ポリシーミックスによる政策パッケージ、②モニタリング等の基盤メカニズムの構築、③6%削減目標の達成シナリオについて検討を行っている。これらの検討は、具体的には地球環境部会の下に2つの小委員会を設け検討がなされてきた(「目標達成シナリオ小委員会」、「国内制度小委員会」)。 オゾン層保護対策のために現在代替フロンとして使用されているHFC、PFC、SF6の3ガスは、地球温暖化対策推進大綱によって、2010年における排出量を、95年比で+2%に抑制することとされている。 しかしながら、目標達成シナリオ小委員会は、これまでこの3ガス排出量について、最大-3%の削減が可能との試算を発表している。 これに対し、オゾン層保護対策産業協議会は、会員の関係工業会を代表して、中央環境審議会地球環境部会長宛の意見書「HFC等3ガスについての排出量の見通しについて」を10月12日環境省に提出した。 以下はその全文である。 2.1 提出先 ・ 中央環境審議会地球環境部会部会長(浅野直人) ・ (写)経済産業省製造産業局局長(岡本巖) ・ (写)環境省地球環境局局長(炭谷茂) 2.2 意見書全文 政府の地球温暖化対策推進大綱では、「HFC等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出量については、プラス2%程度(基準時48→73百万GWPトン)の影響に止める」こととされているが、中央環境審議会は、現状の対策でマイナス1%(40百万GWPトン)、技術的観点からはマイナス3%(16百万GWPトン)の達成が可能であるとの見通しを発表し、HFC等3ガスの目標値の深堀を誘導しているように見受けられる。 HFC等3ガスに係わる産業界としては、3ガスの排出を自然体ベース(107百万GWPトン)から大綱の水準に抑えるべく、自主行動計画を策定し、最大限の排出抑制努力を行っているが、同時に、オゾン層破壊物質であるCFC、HCFCからの転換が義務づけられているため、代替物質であるHFCの使用増加は不可避であり、中央環境審議会の見通しは、全く非現実的であるといわざるを得ない。 また、これまでの業界の必死の努力により一定の成果が上がりつつあるからといって、その目標を厳しくすることは、「努力した者に鞭打つ」ものであり、到底受け入れられない。政府は、全ての分野において、関係者が大綱目標を達成するよう努力すれば、マイナス6%は達成できると表明してきたのであるから、環境省は、これまで対策の進んでいない民生分野や対策の具体化を怠ってきた「国民各層のさらなる努力」分野など、「努力を怠っている者に努力させる」ことにまず責任を持って取り組むべきであり、そのような責任を放棄して、努力を重ねてきた産業界に安易にツケを回すことは許されない。 (1) 関係業界は既に二重の意味で地球温暖化防止に努力 オゾン層を保護するため、モントリオール議定書に基づき、CFC、HCFC等フロンについては段階的に生産を削減し、全廃することが義務づけられており、関係業界は、既に多大なコストをかけてオゾン層を破壊しないHFC等代替フロンへの転換を進めている。フロンから代替フロンへの転換は、オゾン層保護のみならず、温暖化防止上も大きな効果を有する。 その代替フロンが京都議定書において削減目標の対象となり、地球温暖化対策推進大綱が策定されたことを受け、自主行動計画による代替フロンの排出抑制にも取り組んでおり、関係業界は、二重の意味で最大限の努力を行っている。 (2) HFCの排出量増加は不可避 2000年までのHFC等3ガス排出量が漸減したのは、HFCへの転換に伴う排出が現実化していないためであり、HFCの排出は将来確実に増加せざるを得ない。また、モントリオール議定書を遵守するためにはHFC等の増加は不可避である。 2000年までの3ガス排出量が漸減した主原因は、ガスの製造過程等主要排出源からの漏洩防止が進んだ一方、冷媒、発泡等の分野でのHFCへの転換および転換に伴う排出が現実化していないためである。 例えば、カーエアコンや冷蔵庫の冷媒がHFCに転換したのは90年代半ばであり、これらの機器の廃棄に伴う排出はまだ生じていない。また、エアコンのHFC転換は今秋から本格化するがその廃棄時排出は10年後であり、断熱材についてみれば未だHCFCを使用中でHFCへの転換は今後の課題となっている。 いずれにせよ、HCFCは段階的に生産を削減し、2019年末には生産全廃予定であり、HFC以外にその太宗を代替できる物質はないので、非フロン系への転換に最大限努力してもHFCへの転換は不可避であり、また、漏洩対策等排出削減に最大限努力しても、使用量の増加に従い排出量は増加せざるを得ない。しかも、排出量が最も多くなるのは機器廃棄時であり、生産から10~15年後である。 こうした状況の下で無理にHFCの増加を回避しようとすれば、オゾン層を破壊するHCFCの全廃や、エアコン、冷蔵庫、断熱材の生産・使用に支障を来すことになる。 その他、電気絶縁用としてのSF6等についても、現状では代替物質が開発されていない状況であり、回収率の向上によりある程度の排出削減は見込まれるものの、将来的には使用量自体の増加により排出量が増加する可能性は否定できない。 (3) 中央環境審議会の見通しは、非現実的である 貴部会小委員会の中間とりまとめに当たって、関係業界は調査を受けていないので、どのような根拠に基づいて見通しを立て数字がまとめられたのか理解に苦しむ。疑問点が多く含まれているが、以下に2、3の例を示した。 ・ 2010年におけるHFCの代替化率が、実現の可能性がないと思われるレベルに設定されていること。また、需要予測が不適切である。(ウレタン、カーエアコン、エアゾールなど) ・ 半導体業界は国際競争力の維持を無視しては成り立たないが、国際半導体会議での合意事項(1995年を基準として2010年までに炭酸ガス換算総排出量を10%以上削減)を無視した仮定を置いている ・ HFC等の代替化による機器性能および断熱性能の低下、安全性維持に要するエネルギー消費量の増加など、総合的な温室効果ガス排出に関する視点が全く配慮されていない なお、2会員から中間とりまとめに対する質問が当方に届けられたので、添付した。 (4) 地球温暖化対策推進大綱運用上の不公平 HFC等3ガスについて目標を深堀した上で「国民各層のさらなる努力」等の分野における目標を放棄することは「努力した者に鞭打ち、努力しない者に楽をさせる」ことであり、安易に地球温暖化対策推進大綱の目標を変えるのではなく、その目標を達成できるよう、努力の足りない分野での取り組みを促進すべきである。 関係業界は、HFC等3ガスの排出削減のため、これまで必死の努力を行ってきており、これにより一定の成果があがりつつあるところである。しかし、だからといって、その目標を厳しくすることは、「努力した者に鞭打つ」ものであり、到底受け入れられない。政府は、全ての分野において、関係者が地球温暖化対策推進大綱の目標を達成するよう努力すれば、マイナス6%は達成できると表明してきたのであり、かつ、本年7月には関係閣僚会議において、大綱に盛り込まれた諸対策の強力な推進を通じて、目標の達成を図っていくと申し合わせたばかりと承知している。環境省は、これまでの対策の進んでいない民生分野や対策の具体化を怠ってきた「国民各層のさらなる努力」分野等、「努力を怠っている者に努力させる」ことにまず責任を持って取り組むべきであり、そのような責任を放棄して、努力を重ねてきた産業界に安易にツケを回すことは許されない。 <参考資料> 1) オゾン層保護対策産業協議会:「地球温暖化対策推進大綱に示されたHFC等3ガス排出目標に関する意見交換会」配布資料 2) 化学工業日報:「中環審見通し非現実的、HFCなど3ガス排出削減、JICOPが反論」(2001.10.22) 2) 日経産業新聞:「フロン抑制強化困難、関連業界、中環審に反論書」(2001.10.23) 3) 日本工業新聞:「オゾン対策協、代替フロンの温暖化予測に反発、中環審の見通しは非現実的、具体策の明示を、産業界へのツケ許せぬ、使用抑制重視を懸念、産業界、環境省に対し不信感」(2001.10.24) 4) 日刊工業新聞:「オゾン層保護対策産業協議会事務局長原穆氏に聞く:フロン3種排出抑制強化策、産業界が猛反発!、双方で異なる算定根拠、業界にツケ見直しへ意見書」(2001.11.2)
3.国民生活における地球温暖化対策 前章で触れた「中央環境審議会地球環境部会国内制度小委員会」は、その第10回会合をさる10月31日に開催し、“国民生活における地球温暖化対策”についての検討を行った。 同席上で、内閣府が先頃行った「地球温暖化防止とライフスタイルに関する世論調査」(9月29日発表)について説明、討議が行われた。地球温暖化問題に対する国民の認識については、具体的な対策を実行するための問題点を多く含んでいることが話題となった。 しかし、環境省は家庭での取り組みについて、日常生活での10種類の実行の効果を試算し、それらの我が国全体での効果として、1990年基準の温室効果ガス排出量全体を2.8%削減できることを説明した(表参照)。 <参考資料> ・環境省:「中央環境審議会地球環境部会国内制度小委員会第10回会合・配付資料」(2001.10.31)
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環境保護情報(2001年10月)
1.今年の南極オゾンホール 気象庁は、本年の南極オゾンホールについて去る9月7日に発表を行った。 今年の南極オゾンホールは、8月上旬から観測データに現れ始め、8月下旬から急速に面積を拡大しつつある。気象庁が行ったオゾン破壊量の予測では、過去最大となった昨年に匹敵する規模に発達するとみられる。 以下は、気象庁の発表の概要である。 1.1 今年の南極オゾンホールの状況 (1) 日本観測隊の観測第42次南極極地域観測隊(本末洋一隊長)から報告されたオゾン観測の結果によれば、昭和基地上空のオゾン全量は、8月下旬以降、オゾンホールの目安である220m atm-cm以下の値が継続して現れるようになった。 図1は、南極昭和基地におけるオゾン全量の変化を示す。細線は、1961年の観測開始以降の最大値および最小値で●印が2001年の値である。点線は、オゾンホールの目安である220m atm-cmの値である。 オゾンの高度分布を見ると、高度 12~25kmで著しいオゾン減少が見られ、高度17km付近ではオゾンホール出現前に比べて70%以上減少していた。図2は、南極昭和基地におけるオゾンゾンデ観測によって得られたオゾンのの高度分布である。破線は、オゾンホールが現れるようになる以前(1968年~1980年)の8月の平均オゾン高度分布、実線は、2001年8月26日の観測結果である。 (2) 人工衛星の観測データ米国航空宇宙局(NASA)から入手した人工衛星による観測データを解析したところ、9月初めには南極大陸の約2倍の面積にオゾンホールが広がっている。 図3は、米国のアースプローブ衛星に搭載されたオゾン全量マッピング分光計(TOMS)から得られたオゾンデータ(米国航空宇宙局、(NASA)提供)をもとにして作成した、2001年9月4日の南半球オゾン全量分布である。オゾンホール(220m atm-cm以下の領域)は、南極大陸のほぼ全域を覆っている。 (3) オゾンホールの規模の推移今年のオゾンホールは、8月下旬から急速に発達を始め、9月初めには過去最大を記録した昨年に迫る規模に拡大しつつある。図4は、オゾンホールの規模を示すオゾンホールの面積、最低オゾン全量、オゾン破壊量の日別の推移を示す。細線は1979年~2000年までの極値、太線は2001年値を示す(NASA提供のTOMSデータを基に気象庁が作成)。 1.2 今後の見通し 今後、南極の気象条件に大きな変化がなければ、オゾン破壊量からみた今年のオゾンホールは、8月の南極域の成層圏気温等を用いた推定(図5)から、過去最大となった昨年に匹敵する規模に発達することが予想される。 図5の●印は、1979年~2000年までのオゾン破壊量の年極値の実測値。また○しるしは、1979年~2000年までの規模推定の関係 で求めた推定値。2001年の値の上下の棒は予測の推定誤差を示す。今年のオゾン破壊量の推定値は、9,278±557万トンである。なお、これまでのオゾン破壊量の最大値(実測値)は2000年9月12日の9,622万トンである。 <参考資料> ・ 気象庁:「(報道発表資料)オゾンホール今年も大規模に発達か」(2001.9.7) 2.アンダーセン博士(米国EPA)の来日 スチーブ・アンダーセン博士(米国EPA)は、このほどサリー・ランド女史(米国EPA)と来日、9月26日に当協議会正会員のセイコーエプソン㈱本社を訪問した。同博士は、地球環境問題に取り組む世界の企業の活動を紹介する出版物を企画中で、セイコーエプソン㈱はその先駆的企業の一社に選定されたとのことである。 9月27日には、両博士を囲む懇親会がJICOP主催で、虎の門パストラルにおいて開催され、当協議会からも森合会長を含む7名が参加した。 森合会長とアンダーセン博士とは、1996年に、産洗協が米国EPA「オゾン層保護・団体賞」を受賞したときに、アンダーセン博士宅のホームパーティでも歓談した間柄であり、今回は5年振りの再会で、お互いの最近の活躍振りにエールを交換することができた。
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環境保護情報(2001年9月)
1.「第4回オゾン層保護大賞」 当協議会正会員の荒川化学工業株式会社は、このほど、日刊工業新聞社の「第4回オゾン層保護大賞・優秀賞」を受賞した。 1.1 荒川化学工業㈱の受賞理由 荒川化学工業は日本における最大のロジン誘導体メーカーであり、長年蓄積したロジン化学を駆使してオゾン層破壊物質(ODS)に代わるフラックス洗浄剤を開発した。また、ODS洗浄と仕組みが全く異なる代替洗浄用に専用の洗浄装置を開発するとともに、排水処理用の周辺装置や管理測定器を開発、一貫洗浄システムの技術を確立した。さらに洗浄自体を省略できる無洗浄タイプのフラックスも開発、ODS全廃の推進に大きく貢献した。 ・ トータル洗浄システムの代替技術を確立 ODSの削減計画は、モントリオール議定書の90年、92年の相次ぐ改正で大幅に前倒し強化され、CFC-113および1,1,1-トリクロロエタンの両物質が95年末全廃と決定した当時、日本ではODSの大半が洗浄用に消費され、ODS全廃には洗浄分野の代替が大きな課題であった。同社は代替洗浄に先進的に取り組んでいたセイコーエプソンと提携、代替洗浄に適した液中噴流式洗浄機を開発、また水処理メーカーや測定器メーカーと共同で代替洗浄のための純水再生装置や排水濃縮装置などの周辺機器・洗浄剤水分計、リンス水の洗浄剤濃度計など管理計器を開発、トータル洗浄システムの代替技術を確立した。 <図1>実装技術に密着した商品イメージ さらに代替洗浄剤の短所を補うべく洗浄方法を工夫し、超音波、シャワー、液中噴流といった従来の洗浄方式とは全く異なる直通式洗浄装置を開発。 近年、フリップチップ実装という狭間隙をもつ半導体搭載技術やBGA、CSPといった小型高密度な半導体パッケージが急速に増加しているが、これらの洗浄はHCFCや塩素系溶剤を用いて一つづつ洗浄するしかないといわれていた。しかし、同装置によって準水系洗浄剤で効率よく洗浄、乾燥できるようになり、HCFC削減を推進すると期待されている。また、パソコン、通信、計測器、医療、軍事用の実装基板の製造工程やハードディスクドライブ、カメラ用のフレキシブル基板の製造工程などに同社の洗浄システムが約240台導入され、ODS代替に寄与した。 ・ 発展途上国のODS削減・全廃に向け積極的に活動 同社は、オゾン層保護対策産業協議会や日本産業洗浄協議会が中心になって実施してきた発展途上国における洗浄現場のODS削減と全廃にむけての指導、啓蒙等の組織的活動に積極的に参加してきた。 <写真>授賞式の荒川化学工業の皆さんと日刊工業新聞菅野社長(左端) 1.2 受賞者一覧と審査概評 今回の受賞者は表の通りで、28件の応募から選ばれた7件であった。 以下は審査委員長の中井武氏(東京工業大学名誉教授)の審査概評である。 先ごろドイツのボンで開かれた気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)の再開会合の報道が連日伝えられ、今まであまり興味を示さなかった国民の間にまで環境問題が浸透したことは、今後の環境保全問題解決にこれほど心強いものはなく、大変喜ばしいことだ。 第4回オゾン層保護大賞への応募は28件、延べ業績数45件で応募主体も企業、団体と幅広い応募を頂いた。保護対策に取り組まれる熱意とともに、取り組みの広がりを心強く感じた。 内容は先進的かつ積極的な取り組みが伺われ、いずれも高く評価できるものだ。審査委員一同感心するとともに、選考にあたっては大変な苦労をした。 応募いただいた全ての業績について、総合評価と分野別評価を行い、その採点結果に基づいて、委員会で慎重審議の結果、経済産業大臣賞1件、環境大臣賞1件、優秀賞3件、審査委員会特別賞2件を選考した。 経済産業大臣賞に選ばれた前川製作所はオゾン破壊係数ゼロ、地球温暖化係数もゼロの自然冷媒アンモニア冷凍機を開発し、国や自治体そして業界などにアンモニア冷凍設備の採用指針の提言をし、後に実施に至るなど自然冷媒アンモニア冷凍機の普及の弾みとなったことを評価した。98年の長野オリンピックで、これらの冷凍設備が活躍したのは記憶に新しい。また、同社は自然冷媒二酸化炭素(CO2)冷凍機も開発したので、こちらも今後大いに期待している。 環境大臣賞に決まったストップ・フロン全国連絡会は、設立以来8年にわたり、フロン回収の法制化早期実現を目指して幅広い活動を続けてきた。今回「フロン回収・破壊法」が成立したが、これまで一貫してオゾン層保護を訴えてきた働きかけが一端を担ったものと評価した。 優秀賞は次の3件とした。ダイキン工業は日本で初めてオゾン破壊係数がゼロの新代替物質HFCを量産化した。また業界の自主行動計画を1年前倒しで業務用エアコンのHFCへの転換を完了し、さらに各団体と協力し、フロンの回収・再生・破壊の推進に取り組んできたこと。荒川化学工業は洗浄剤の分野でオゾン層破壊物質全廃の推進に取り組んできたこと、また発展途上国のオゾン層破壊物質の削減・全廃に向け積極的に活動してきたこと。アサダはCFC・HFC・HCFCを一台で同時に回収可能な装置と可搬式のフルオロカーボン分解装置を開発したことを評価した。 出光興産はカーエアコンに使用する潤滑油を世界に先駆けて実用化し、CFCをHFCへの転換を可能にしたこと。東洋ゴム工業は発泡剤の分野で特定フロンを全廃し、さらに代替フロン全廃に向けての水発泡技術を確立したことがそれぞれ審査委員会特別賞にふさわしいと考え、選考した。 このほかにも受賞業績に勝るとも劣らない業績が数多くみられた。今回、賞を逃されたといっても、決して落胆されるようなものではないと考えている。今後は温暖化対策を視野にいれた応募が多く出てくると予想されるが、地球環境保全に向けた取り組みをさらに強化されていくことを期待している。 <参考資料> ・ 日刊工業新聞社:「第4回オゾン層保護大賞受賞業績一覧」(2001.9)
<表>「第4回オゾン層保護大賞」受賞者 2.「2001地球環境保護・国際洗浄産業展」への各組織の協力 今回の展示会における当協議会のブースは、各方面のご協力を頂き、洗浄技術に関係する地球環境問題を解説する最新のパネルと資料を展示、配布することができた。ブースの広さも6小間となり、間口18メートルの壁面をパネルでかざることができた。 経済産業省および環境省からは、PRTR制度およびフロンの回収・破壊問題について、気象庁からは、1979年から2000年までの22年間にわたるオゾンホールの出現と拡大の推移について、宇宙開発事業団からは、人工衛星による地球環境測定について、オゾン層保護対策産業協議会からは、オゾン層保護対策推進月間について、それぞれ最新のパネル、ポスター、パンフレット等をご提供頂いた。 宇宙開発事業団提供によるパネル5枚からオゾン層問題および地球温暖化問題に関係する3枚を図2~4に紹介する。 <図2>オゾン層の破壊と回復を観測する
<図3>1997年春の北極圏オゾン減少 <図4>地球温暖化現象の解明のための長期衛星観測 |
環境保護情報(2001年8月)
1. 産業構造審議会化学・バイオ部会第3回オゾン層保護対策小委員会昨年11月より「CFC管理戦略」についての検討が首記の委員会で行われてきたが、去る6月22日にその最終会合が開催された。 同会合で、「CFC管理のあり方」の報告書案内が審議され、委員の意見を踏まえて、最終報告書が6月25日に発表された。 以下には、その一部を紹介する。 1. 「国家CFC管理戦略」 昨年11月より検討が開始された「CFC管理戦略」については、関係12省庁から構成される「オゾン層保護対策推進会議」(事務局:環境省、経済産業省)での検討を経て、日本としての報告書がこのほどまとまった。同報告書は「国家CFC管理戦略」として、7月末日に国連環境計画オゾン事務局に提出された。 同文書より、洗浄分野に関係する部分“Ⅳ.分野ごとの現状及び取組 4.洗浄分野”を以下に抜粋して紹介する。 1.1 現状及び転換の取組 CFC洗浄剤は、工業用洗浄分野(金属加工部品、電気電子部品、精密部品等の洗浄)やドライクリーニング等で広く使用されていたが、CFCの製造全廃に伴い、1995年頃までにほとんどの用途で、CFCから、塩素系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤、フッ素系洗浄剤や無洗浄への転換が行われた。現在、CFC洗浄剤の出荷はほとんど行われておらず、CFC洗浄剤を使用しているのは、ごく少数のクリーニング所等で、ドライクリーニング溶剤等として在庫のCFC洗浄剤を使用している。 環境省が行ったアンケート調査の結果等に基づき、推計した2000年度におけるドライクリーニング分野のCFC洗浄剤の消費量は、概算で年間トン、機器における消費量及び在庫量の合計は2000年度末時点で約240トンである。 国は、1988年度から、CFC等に代えて代替物質を使用した洗浄設備の取得に対して、税制、融資制度で転換を支援している。 洗浄装置の使用時における漏洩は、「排出抑制・使用合理化指針」に基づき、洗浄装置メーカー等の関係業界における取組により、例えばCFC洗浄剤を使用するドライクリーニング機は、他の洗浄剤を使用する機械に比べて気密性がかなり高い構造であるなど、ほとんどの装置で密閉化等の対策が講じられている。 また、CFC洗浄剤の廃液については、廃油(産業廃棄物)として処理される場合が多いが、今後、これら適正処理の徹底を図る。 <参考資料> ・ 経済産業省:「『国家CFC管理戦略』の策定・提出について」(2001年7月27日) 2. 2000年度のオゾン層監視結果の報告 環境省は、2000年度のオゾン層監視結果を中心とした報告書「平成12年度・オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」をさる7月13日の発表した。 同報告書の概要を以下に紹介する。 2.1 オゾン層の破壊の状況 2000年の南極域上空のオゾンホールは、例年よりも早い時期に急速に発達し、オゾンホールの面積、オゾン破壊量で過去最大となった(図1)。また、1992年以降では最も早くオゾンホールが消滅した。 日本上空のオゾン全量は、平年と比べて、札幌では1年を通して同じか少なく、つくば、鹿児島では、1~9月までは同じか多く、10~12月は同じか少なく、那覇では1年を通して同じか多かった。特に札幌では11月にその月としては観測開始以来最小の月平均値を記録し、那覇では7、9月にその月として最大の月平均値を記録した。 オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた領域では減少傾向が卓越しており、高緯度ほどその傾向が強く、減少は春先に顕著である。日本上空でも、那覇を除く国内3地点で減少傾向がみられ、その傾向は札幌において最も大きい(図2)。 このような全球的な減少傾向は、既知の自然現象では説明できず、CFC等の大気中濃度が増加したことが主要因であると考えられる。特に、1980年代以降の南極オゾンホールの発達は、大気中のCFC等の濃度増加によると考えることが最も妥当である。 なお、モントリオール議定書のアセスメントパネル(1998年WMO/UNEP科学アセスメントパネル報告書)によると、1997年の改正モントリオール議定書によるスケジュールに基づく規制をすべての締約国が遵守した場合、 (1) 成層圏中の塩素及び臭素濃度の合計(オゾン層破壊物質が分解してできるこれら元素がオゾン層を破壊する)は、2000年前にピークに達する. (2) オゾン層破壊のピークは、2020年までに訪れる. (3) 成層圏中のオゾン層破壊物質濃度は2050年までに1980年以前のレベルに戻る。 (4) オゾン層破壊にとって重要なその他の気体(一酸化二窒素、メタン、水蒸気等)の将来の増加又は減少及び気候変動がオゾン層の回復に影響を及ぼすと予測されている。 2.2 特定物質の大気中濃度 特定物質の大気中濃度については、北半球中緯度の平均的な状況を代表するとみなせる北海道の観測点において、CFC-11、12、113の濃度は1990年代後半以降はほぼ横ばい、CFC-11については減少してきている。また、大気中寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンについては、すでに減少傾向を示している(図3)。 都市域の状況の一つとして川崎市で測定したCFC-11、12、113、1,1,1-トリクロロエタン及び四塩化炭素の大気中の濃度については、次第に北海道におけるこれらの物質の大気中濃度のレベルに近づきつつある。これらは1989年7月から開始されたモントリオール議定書に基づく規制の効果と考えられる。 一方、ハロン1211及び1301については、今なお、増加の傾向が続いている。また、CFCの代替物質であるHCFC-22、141b、142b並びにHFC-134aの北海道における大気中濃度については増加の傾向にある(図4、図5)。 現在の特定物質の大気中濃度は、例えば南極域でオゾンホールが観測される以前の1970年代に比べてかなり高い状況にあるので、成層圏オゾン層の状況が改善されるためには、これら物質の濃度が大幅に低下することが必要である。 2.3 太陽紫外光の状況 成層圏オゾン層の破壊に伴い、有害な紫外光(UV-B)の地上への照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸生、水生生態系への影響や大気汚染の増加が懸念されるので、UV-B量の変化の傾向を把握する必要がある。 日本においては、なお一層のデータの蓄積を必要とするが、1991年(つくばは1990年)の観測開始以来、国内4ヶ所におけるUV-B量の観測値は、累年平均値に対して著しく大きな変化は見られない(図6)。 またオゾン全量の変化に敏感な波長300nmの紫外光についても、明らかな増加の傾向は見られていない。しかしながら、UV-B量の観測値はオゾン全量のほか、天候(雲量)や大気混濁度等の影響を受けることに留意する必要がある。 なお、これまでの国内4ヶ所における晴れた日のオゾン全量とUV-B量の観測結果に基づく気象庁の解析によると、太陽高度角が同じであれば、オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されている。したがって、1970年代に比べて、オゾン全量が明らかに減少している地域においては、UV-B量は増加しているものと考えられる。 (注:当協議会のホームページに転載する、本情報にはこれらの図のカラー版を紹介するが、それに加えて、人工衛星観測による22年間(1979~2000)のオゾンホールの推移をカラーで紹介する。) <参考資料> 1) 環境省:「(報道発表資料)平成12年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について」(2001.7.13) 2) 環境省:「平成12年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について」(2001.7) 3. ローランド博士の来日 人工化学物質による成層圏オゾン層破壊を予測してノーベル化学賞を受賞されたローランド博士は、このほど宇宙開発事業団の招聘で来日、講演会「オゾン層破壊~メカニズムの解明・観測の重要性~」(8月1日、主催:日本経済新聞/宇宙開発事業団)で“オゾン層の破壊と宇宙からの観測”と題して講演を行った。 この機会にローランド博士にインタビューを申し入れ、日刊工業新聞社とともに、同博士よりオゾン層保護の今後の問題点や地球温暖化問題についての見解を伺うことができた。同インタビューには、宇宙開発事業団地球観測利用研究センター研究ディレクターの小川利紘博士も同席されたが、の内容は8月7日付けの日刊工業新聞に掲載されており、その概要は以下の通りである。 3.1 成層圏オゾン層の現状 行き着くところまではいったようだが、回復の方向に進むかということには完ぺきなデータはない。回復の時期に入るまでには最終的には12、3年はかかるだろう。今後注意深くオゾン層を観測する必要がある。 3.2 オゾン層がオゾンホールのない状態に戻る可能性 今後の30年間は成層圏の塩素量が減るが、一方成層圏気温は低くなり塩素化合物のオゾン破壊力が増加する。 2030年で1980年レベルへ戻るかどうかには疑問があるが、2070年~2080年には1970年レベルと同等になるであろう。 3.3 地球温暖化問題 京都議定書から離脱を表明した米は、この問題で非常に紛糾している。米でも温室効果ガス抑制のため議定書批准をとの声もあり、温室効果ガス削減に熱心に取り組むが、京都議定書を批准するのは今の大統領ではないだろう。 ローランド博士とは、1997年より過去3回面談する機会があり、その都度日刊工業新聞社のご協力で同紙の紙面に紹介することができた。その1回には、産官学の座談会を企画し、当協議会の木下顧問(当時の会長)も出席されている。 オゾン層保護対策は息の長い地球環境問題であり、メディアが継続してフォローアップする意義についても同博士の高い評価を頂いた。次回の面談の機会を伺ったところ、来年の3月に来日されるとのことであり、引き続き同博士のコメントが期待される。 <写真>インタビューに応ずるローランド博士(左端)、右端は小川利紘博士) |
環境保護情報(2001年7月)
1. 産業構造審議会化学・バイオ部会第3回オゾン層保護対策小委員会昨年11月より「CFC管理戦略」についての検討が首記の委員会で行われてきたが、去る6月22日にその最終会合が開催された。 同会合で、「CFC管理のあり方」の報告書案内が審議され、委員の意見を踏まえて、最終報告書が6月25日に発表された。 以下には、その一部を紹介する。 1.1 はじめに1999年12月に開催されたモントリオール議定書第11回締約国会合で、先進国は2001年7月までに「CFC管理戦略」を策定・提出することが決定された。 このため、我が国においては、「国家CFC管理戦略」の策定する必要があるが、これに際しては、経済産業省をはじめ関係省庁によって「オゾン層保護対策推進会議」(オゾン層保護対策を関係省庁が協力して円滑かつ総合的、積極的に推進していくため、1994年に設置。)で検討を進めて行くこととしている。 「CFC管理戦略」は、産業界及び国民各層に密接に関係するものであることから、このような政府全体の検討の進行に合わせて、当該戦略に盛り込むべき施策の具体的な在り方につき、本小委員会において審議を進め、今般、「CFC管理のあり方について」として取りまとめたものである。 1.2 趣旨(省略) 1.3 CFC管理についての基本的考え方 冷媒分野及び発泡分野において、現に使用されている機器・製品内にCFCが相当程度残存していることから、なお、一層の取組の促進を図ることが不可欠であるという観点に立ち、2001年6月に成立した「フロン回収破壊法」を早期かつ適切に実施していく。 1.4 全体概況・横断的取組(省略) 1.5 分野ごとの取組(省略) (1) CFC製造・輸入分野 (省略) (2) 冷媒分野 (省略) (3) 発泡分野 (省略) (4) 洗浄分野 (4.1) 現状 ・ 工業用洗浄分野(金属加工部品、電気電子部品、精密部品等の洗浄)における洗浄剤は、CFCの製造全廃に伴い、1995年頃までにほとんどの用途でCFCから塩素系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤、フッ素系洗浄剤又は無洗浄への転換が行われた。現在ではCFCの新規供給はなく、塩素系洗浄剤が全体の約半分を占め、次いで炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤が多い。フッ素系洗浄剤(太宗はHCFC-225、HCFC-141b)は2~3%程度で洗浄剤のうちで最も少ない。 ・ 工業洗浄分野でのCFCについては、消費量は大手企業が多かったが、企業数では中小企業が多かった。大手企業の場合は、早期にCFC全廃対策を講じ、既に代替品への転換が完了しており、中小企業の場合は、CFC洗浄剤の新規供給の全廃や、水系洗浄等代替洗浄技術・物質が早期に普及したことから、CFCの使用に固執する例は少なかったと推測される。また、既にCFCの製造全廃から5年以上経過しており、仮にCFC洗浄剤を自らストックしていたとしても現存ストックの量は少なくなっていると推測される。したがって、総じてみると、これら事業者が現時点で使用するCFC洗浄剤は量的には相当程度限られていると考えられる。 (4.2) 取組 ・ オゾン層保護法第20条に基づき、機器メーカー等が排出抑制及び使用の合理化に関する措置を行うために必要な事項を定めた「排出抑制・使用合理化指針」が策定されている。事業者に自主的な取組を促す具体的な事項として、既存の特定フロン使用設備につき気密性の向上等必要な改良を行うこと、代替物質の使用その他の特定フロンを使用しない又は使用量を減少させる方式の導入を進めること等が示されている。 ・ 同指針に基づき、洗浄装置メーカー等の関係業界における取組として、装置の密閉化対策等の措置を実施している。 ・ 国は、昭和63年度から、CFC等に代えて代替物質を使用した洗浄設備の取得に対して、税制、財政投融資等の制度で転換を支援している。 ・ 今後ともこれまでの取組を継続していく。 (5) エアゾール分野 (省略) (6) 破壊処理分野 (省略) 1.6 その他の取組 (省略) 1.7 経済産業省においては、CFC管理について、各関係者の取組状況を一定期間ごとに調査・把握し、フォローアップを行うとともに、CFCの管理のあり方については、今後も、本小委員会において定期的なレビューを行い、必要に応じ、取組内容等の見直しを行う。 <参考資料> ・ 産業構造審議会化学・バイオ部会オゾン層保護対策小委員会:「CFCの管理のあり方について」(2001年6月) 2. CFC管理戦略等検討会 環境省における「CFC管理戦略」の検討は、同省地球環境局環境保全対策課が窓口となって「CFC管理戦略等検討会」で行われていたが、その第3回会合(6月22日)において報告書(案)が公表された。 以下に、その報告書の洗浄分野に関係する部分を紹介する。 2.1 はじめに 本報告書は、我が国における「国家CFC管理戦略」の取りまとめに先立ち、CFCの管理の現状とこれまでの取組を整理し、課題を明らかにするとともに、これらを踏まえ、環境保全の観点から、今後の、望ましいCFCの管理の在り方についてまとめたものである。 なお、CFCの代替物質であり、その管理の在り方においてCFCと共通するところが多いHCFC及びHFCについても併せて検討を行った。 2.2 現状とこれまでの取組 (1) 取組の経緯 (省略) (2) 分野別の現状とこれまでの取組 (a) 冷媒分野 (省略) (b) 発泡分野 (省略) (c) 洗浄分野 (i) 使用・廃棄後の現状 CFC洗浄剤は、工業用洗浄分野(金属加工部品、電気電子部品、精密部品等の洗浄)やドライクリーニング等で広く使用され、ピーク時の1989年には、国内で洗浄分野として年間約84,000トンのCFCが出荷されており、洗浄分野だけで全出荷量の半分程度を占めていたが、CFCの生産全廃に伴い、1995年頃までに、ほとんどの用途でCFC(CFC-113)から水系、炭化水素系洗浄剤や無洗浄への転換が行われた。基板等の洗浄用途においては、無洗浄技術の開発により、洗浄コストを抑制する経済的インセンティブが働いたことが転換促進の一因となった。なお、CFC洗浄剤からフッ素系洗浄剤(HCFC-225、HCFC-141b等)への転換は数%程度で、1999年のHCFCの洗浄用出荷量は、7,000トンである。 現在、CFC洗浄剤を使用しているのは、一部のドライクリーニングなど、洗浄装置からの漏洩が少なく、被洗浄物の品質管理の問題等から代替が困難な特殊用途のみであり、使用事業者はごく少数である。現在の主な使用用途であるドライクリーニング用途において、厚生省(現 厚生労働省)の調査及び環境省が実施した洗浄剤ユーザーを対象としたアンケート調査の結果に基づき推計した1999年度におけるCFC洗浄剤の消費量は概算で年間約120トン、ストック量は1999年度末時点で約290トンである。 洗浄装置の使用時における漏洩は、「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」に基づき、ほとんどの装置で密閉化等の対策が講じられているため、例えば、ドライクリーニング機の場合、古いタイプの装置で1~2%、最近の装置でメンテナンスを行っている場合で1%未満とわずかであるが、被洗浄物の投入及び取り出し時の漏出もある。 CFC洗浄剤の廃液については、廃油として産廃処理施設で処理されている場合が多いが、HCFC洗浄剤は、高価なため、再生処理業者が有償で引き取り、再生して流通されていることが多い。 (ii) 代替・回収・処理等の取組 国では、1989年に「オゾン層保護法」に基づく「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」を策定し、使用量や漏洩量の削減、代替物質/技術への転換を促進するとともに、1988年度から、CFC等に代えて水系、炭化水素系等の代替物質を使用した洗浄設備の取得に対する融資制度や税制上の優遇措置など経済的対策を通して、転換等を支援している。 (d) エアゾール分野 (省略) (e) 破壊処理 (省略) 2.3 CFC管理等の課題(洗浄分野のみ紹介) 前述のとおり、CFC洗浄剤は、一部のクリーニング業者等において使用されており、その量は少ないものの、これら事業者には中小企業者が多いことから、洗浄剤の廃棄時における適正処理を推進する方策について検討する必要がある。 また、一部の金属加工や精密機械等の洗浄剤として使用されているHCFC、HFCについても、使用時における漏洩防止を図るとともに、洗浄剤の廃棄時における適正処理を推進する方策についても検討する必要がある。 さらに、フロンに代わる洗浄剤やフロンを使用しない洗浄技術の開発を行い、それらへの代替を促進する必要がある。 2.4 今後のCFC管理の在り方 (1) CFC管理の基本的考え方 (省略) (2) 具体的取組(洗浄分野のみ紹介) ○ フロン使用洗浄剤の廃棄における適正な処理ルート等を確立し、関係事業者に周知を図ることにより、洗浄剤フロンの適正処理の推進を図る。 ○ フロンの排出抑制の観点から、フロンを使用しない洗浄剤又は洗浄技術の開発を支援するとともに、これら製品の代替を促進する。 ○ これらの取組を円滑に進めるため、国民各層に対する普及啓蒙活動を推進するとともに、税財政上の措置等経済的な支援を行う。 <参考資料> ・ CFC管理戦略等検討会:「CFC管理の在り方について(案)」(2001年6月) |