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環境保護情報

2002年6月号)

1.「土壌汚染対策法」が成立

 土壌汚染問題は、工場跡地の再開発で大きな問題となっているが、かねて検討中のその法律による規制がこのほど決定された。

 新しい法律は、「土壌汚染対策法」といい、5月22日の参議院本会議で全会一致で可決、成立した。施行は2003年1月1日の予定である。

 同法により、規制対象の有害物質を取り扱った工場の跡地について、その土地所有者に調査が義務付けられ、汚染が判明した土壌は、都道府県が指定区域として登録、公開する。また、その汚染により健康被害が生じる危険があると判明した場合、汚染原因者が分かっている場合を除き、原則として土地所有者が汚染土壌の浄化等の対策をとることになる。

 規制対象の有害物質については、「特定有害物質」として、“鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものとして政令で定めるもの”と定義されている(法第2条)。

 特定有害物質については、その他の詳細事項と共に施行日までに政省令で定められる。現在、「土壌の汚染に係る環境基準」が環境基本法に基づいて設定されており、27種の物質が指定されている。

 この基準は、1991年8月23日に環境庁告示第46号「土壌の汚染に係る環境基準について」で設定され、その後数度の改正が行われ、最終の改正は2001年3月28日(環境省告示第16回公開作業部会第16号)でなされている。

 これらの物質はいずれも特定有害物質に定められるとのことである。この環境基準が定められている産業洗浄剤は、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレンである。

2.「地球温暖化対策推進大綱」決定後の地球温暖化問題の動き

(1) 6%削減約束の達成に向けた地球温暖化対策の工程

新しい地球温暖化対策推進大綱は、6%の削減約束に達成に向けた地球温暖化対策の工程を表にして紹介している(表)。これは、2002年から2012年までの期間に3つのステップを設け、それぞれのステップ期間に施策の実行、その評価、見直しを繰り返すという計画を示している。

 地球温暖化対策の当面の目標は、2008年から2012年までの第1約束期間においてあり、それが終わると2013年より更に厳しい対策を迫られる第2約束期間が開始される。

 この第1約束期間(08年~12年の4年間)を第3ステップとして、4年間で地球温暖化対策の具体的な施策実行の評価・見直しを最終的に行うが、その前の2002年から2007年の6年間を3年づつの2つのステップに分けて、施策実行の評価・見直しを細かに行い軌道修正しようとするものである。

(2) 京都議定書の批准

これまで進められてきた京都議定書の批准については、5月21日に衆議院、同31日に参議院で承認され、日本政府は6月4日の閣議で、京都議定書の受諾を正式に決定した。批准書は国連本部に5日(現地時間の4日)寄託され、批准手続きは終了した。

京都議定書の発効は、①55ヵ国以上の批准、②批准先進国の1990年温室効果ガス排出量が先進国全体の55%以上、という条件がそろって90日後である。ちなみに、先進国の温室効果ガス排出量の割合(90年)は、米国36.1%、EU24.2%、ロシア17.4%、日本8.5%、カナダ3.3%、中・東欧6.6%等である。

 批准国は、6月10日時点で74ヵ国で、日本は74ヵ国目となる。また、温室効果ガス排出量55%をクリアするためには、ロシアの批准が必須であり、現在ロシアの批准作業が遅れていることが今後大きな問題となる。京都議定書発効については、8月下旬にヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)で開催される「環境開発サミット」までに行われることが期待されているが、現状ではロシアを含めた先進国の未批准国の動向によるものとして注目されている。

 米国に関しては、ブッシュ大統領が6月4日に記者団の質問に応じて、京都議定書の不支持を改めて表明した。また、オーストラリアは、米国抜きの議定書批准に一貫して反対している。

(3) 「地球温暖化対策推進法」の改正

「地球温暖化対策推進法」は、京都議定書の批准・実施に向けて、改正の準備が進められている。法律の目的には、“議定書の的確かつ円滑な実施を確保する”という語句が追加され、温室効果ガスを90年比6%削減するための目標達成計画の策定を義務づける予定である(「京都議定書目標達成計画」)。

(4) 「京都議定書目標達成計画」

温室効果ガスそれぞれの排出目標や対策の全体像を具体的に示すよう、“京都議定書目標達成計画”の策定が、地球温暖化対策推進法の改正で、同法によって義務づけられる。同計画は、新大綱を基にして対策の具体化を図るものである。

 現在排出量の増加が目立っているのは、民生部門であって、その地域単位の対策が重視されているのが特徴の一つである。そのために、家庭、オフィス、店舗などを対象とした“地球温暖化対策診断”、地域の住民や、企業、行政の協力組織である“地球温暖化対策地域協議会”の設置などが規定される予定である。

(5) HFC等3ガスの議論

 地球温暖化ガスとして規制の対象となっている物質は、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6の6種類のガスであり、その中のHFC、PFC、SF6の3ガスは、従来の地球温暖化対策推進大綱では“HFC、PFC、SF6の3ガスの排出量については、基準年(1990年)に対して、2008年から2012年の目標期間における排出量を+2%程度の影響に止める(すなわち、基準時の48百万GWPトンに対して73百万GWPトン)”とされていた。 

今回の地球温暖化対策法の改正にあたって、産業構造審議会では、温室効果ガスに共通する基本的考え方として、①過度な負担の回避、②負担の公平性、③経済合理性と柔軟性の確保が確認され、新大綱においては、旧大綱の目標値が踏襲された。

 産業界では、3ガスの使用に対する自主行動計画を実施中であり、経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会で毎年フォローアップが行われている。本年は、第4回フォローアップとしての作業が約30の関係工業団体が参加して開始されている。

<参考文献>

1) 地球温暖化対策推進本部:「地球温暖化対策推進 大綱」(2002.3.19)

2) 地球温暖化対策推進本部:「新たな地球温暖化大 綱(概要版)」(2002.3.19)

3) 経産省オゾン層保護等推進室:「HFC等排出抑 制対策に係る産業界の行動計画の第4回フォローアップについて」(2002.4.10)

3.6月は環境月間、6月5日は環境の日です

6月5日は、国際連合が定めた国連デーの一つで「世界環境デー」である。これは、1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められた。国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めており、日本では「環境基本法」(1993年)が「環境の日」を定めている。

 「環境基本法」は、事業者および国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるという「環境の日」の趣旨を明らかにし、国、地方公共団体等において、この趣旨にふさわしい各種の行事等を実施することとしている。

 わが国では、環境庁(現環境省)の主唱により、1991年度から6月の1ヵ月間を「環境月間」(1973年度~1990年度までは、6月5日を初日とする「環境週間」)とし、全国各地で様々な行事が行われる。


<写真>本年の環境月間ポスター

 


環境保護情報(2002年5月号)

1. 化学物質管理に関する審議会審議

 化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)に基づいて、第一種指定化学物質に関する排出量等の届出が、いよいよこの4月から6月までに行われる。化学物質の管理の新しい時代が到来したことになるが、さらに化学物質管理に関する討議が、経済産業省の審議会で開始されている。それは、産業構造審議会化学・バイオ部会の化学物質管理企画小委員会であり、その第1回会合が昨年12月11日に開催された。

<図1>産業構造審議会化学・バイオ部会の

    組織構成図

1.1 化学物質管理企画小委員会の位置付け

 2001年5月に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」がストックホルム外交会議で採択され、92ヵ国が署名した。わが国で同条約を批准するに当たって、化学物質管理政策の基本的事項を審議する必要から「化学物質管理企画小委員会」が産業構造審議会化学・バイオ部会に新しく設置された。従来からの小委員会との関係は図1の如くである。

1.2 化学物質管理分野における今後の人材育成

 同小委員会での中心的なテーマは、化学物質管理分野における今後の人材育成に関するものである。

 化学物質は、産業活動や国民生活に幅広く利用されるが、その有害性の管理が重要である。その有害性を把握し、そのライフサイクルにわたってリスクを評価し、そのリスク評価に応じた適切なリスク管理を行うことが必要である。こうしたリスク評価・管理を行うためには、それを支える広範な人材が以下のように必要となる。

・ 高度な専門的知識を有する者

・ 化学物質のリスク評価・管理を実施する専門家

・ 化学物質のリスクに関し一定程度の専門的知識を有する者(化学産業等)

・ 化学物質のリスクを適切に分かりやすく関係者に伝達する能力を有する者

・ 化学物質のリスクに関し基礎的な知識を有する者(国民一般)

 同小委員会では、このような人材育成についての議論を重ねており、それらをまとめた答申案を6月に発表する予定である。

<参考文献>

・経済産業省:「産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質管理企画小委員会・配付資料」(第1回(01.12.11)、第2回(02.3.1)、第3回(02.4.4)、第4回(02.4.18))

2. 「化学物質と環境円卓会議」

政府はこのほど「化学物質と環境円卓会議」を組織化し、公開の第1回会議が2001年12月3日に開催された。この5月16日には第3回が予定されている。

 以下に、その設立に至る経緯と、会議の概要を紹介する。

2.1 「21世紀『環の国』づくり会議」の提言

日本政府は、環境共生社会の実現を目指して、「21世紀『環の国』づくり会議」を設置、第1回会合を2001年3月1日に開催した。

 同会議は、川口環境相の提案によるもので、首相が主宰し、環境相が議事進行を行い、全閣僚18名、学識経験者・経済人10名で構成される。その第5回会議が2001年7月10日に開催され、報告書が取りまとめられた。その中で提示された新しい政策の一つに“化学物質の管理のための円卓会議”がある。

 同報告書は、持続可能で地球と共生できる社会の実現のために5つの分野での具体策を提言した。それは、「地球」(地球との共生を目指す地球の環)、「環境と経済」(環境産業革命を目指す環境と経済の環)、「物質循環」(環境への負荷の少ない循環型社会を目指す物質循環の環)、「生態系」(自然との共生を目指す生態系の環)、「人と人(パートナーシップ)」(市民産業行政のパートナーシップの構築を目指す人と人との輪)の各分野である。

 「物質循環」の分野で、“化学物質による国民の不安解消には、行政、産業、国民が合理的な行動ができる枠組み作りが必要”であるとして、循環に伴う化学物質の管理を強化するために、市民、産業、学識経験者、行政の各代表が集まる円卓会議の設置を提案している。(図2参照)

<図2>「21世紀『環の国』づくり会議」

    (川口環境相の講演より)

2.2 「化学物質と環境円卓会議」の設置

 以上の経緯を踏まえて、化学物質と環境円卓会議が12月に設置された。

 その背景と趣旨は、前述の「「21世紀『環の国』づくり会議報告書」によると、以下のように説明されている。

 “化学物質は、私たちの生活を豊かにし、また生活の質の維持向上に欠かせないものとなっている一方で、日常生活の様々な場面、製造から廃棄に至る事業活動の各段階において、環境を経由して人の健康や生態系に悪影響を及ぼす恐れがあり、こうした環境リスクに対する国民の不安も大きくなっています。このため、化学物質による環境汚染に関して安全で安心な社会を実現するためには、市民、産業、行政が情報を共有し、可能な限り共通認識の上に立って環境リスク低減のための合理的な行動が出来るようにすることが必要です。このため、行政、産業、国民の代表による協議の場を設けるなどにより、化学物質による環境リスク低減のための国民的参加による取り組みを促進することが望まれます。”

2.3 「化学物質と環境円卓会議」の概要

 同会議は、上記の提言を踏まえて、化学物質の環境リスクについて、国民的参加による取り組みを促進することを目的として、市民、産業、行政の代表による化学物質の環境リスクに関する情報の共有および相互理解を促進する場として設置された(図3参照)。

<図3>「化学物質と環境円卓会議」の仕組み

 その構成メンバーは、市民代表7名、産業代表7名、学識経験者3名、行政代表5名からなる22名で、行政代表は、経済産業省、環境省、農林水産省、厚生労働省、および神奈川県から選ばれている。

2.4 「第1回化学物質と環境円卓会議」

 同会議の第1回会合は、2001年12月3日に、川口環境相の挨拶から始まった。同氏は、この会議の目的について、“化学物質の問題について、情報の共有と共通認識の枠組みとして、市民、産業、行政の代表による対話の場を設けること”と説明した。

 同会議出席者の発言の一部を以下に紹介する。

・有田芳子(全国消費者団体連絡会事務局):“円卓会議では「対立」ではなく、透明性を確保し、信頼を持って「対話」により市民も努力し行動したい。”

・崎田裕子(ジャーナリスト、環境カウンセラー):“化学物質対策ではリスクコミュニケーションが重

要。市民が学習を積むことも重要。行政はそれを支援、コーディネートする必要がある。”

・角田季美枝(バルディーズ研究会副運営委員長):“企業の環境に対する社会的責任を根付かせるため、告発型でなく対話型で「市民と企業の協働作業」をスローガンとしたい。”

・中下裕子(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長):“被害者の参加、予防原則の法制化、負の遺産の処理、分かりやすい情報提供等10項目を提案したい。”

・村田幸雄((財)世界自然保護基金ジャパンシニア・オフィサー):“化学物質問題に関する早急な包括的見直しが必要。「環の国・化学物質憲章」のまとめができると良い。”

・瀬田重敏((社)日本化学工業協会広報委員長):“化学工業の努力が社会に充分理解されていない。「化学品」を説明することが難しいこともあげられるが、社会に対して分かりやすい形できちんと説明してきたかという反省がある。この機会に「環境・健康・安全」に最大限の努力をしたい。“

・田中康夫(日本レスポンシブル・ケア協議会企画運営委員):“分かりやすい情報の提供を行い、倫理的な行動を継続し、化学物質の安全にさらに強くなるよう研究者の養成に努めながら、研究活動をより一層推進し、持続可能な発展に貢献したい。”

・出光保夫(日本石鹸洗剤工業会環境保全委員長):“都市の人口動態、ライフスタイルの変化、降雨による河川の変化などモニタリングを続け、洗剤成分のリスクアセスメントも推進する。”

・仲村巌((社)日本自動車工業会環境委員会副委員長):“産官学による科学的なリスクアセスメントの実施、科学的データの蓄積、その情報開示が必要である。”

・橋本伸太郎((社)日本電機工業会環境政策委員会委員長):“化学品メーカーとの情報交換が重要。環境に適した代替品の開発が望まれる。”

・小林珠江(日本チェーンストア協会環境問題小委員会委員):“流通業はメーカーと消費者をつなぐ役割をもつ。氾濫している情報をいかに分かりやすい表現にして伝える役割もある。円卓会議を通じて各行政の縦割り的でない情報を通じて消費者へ混乱のない情報を伝えたい。”

・岩尾総一郎(環境省環境保健部長):“リスクコミュニケーションが重要。環境省では経産省との協力によりリスクコミュニケーション手法ガイドを作成した。それによると、リスクコミュニケーションには10の誤解があるとされるが、今後その誤解に気をつけて会議を進めて行きたい。”

・大森昭彦(農林水産省大臣官房技術総括審議官):“環境リスクの評価、管理の徹底が必要。リスクコミュニケーションの一層の推進を期待してこの会議に取り組みたい。”

・片桐佳典(神奈川県環境科学センター所長):“化学物質問題は、科学的実証には時間がかかるが、汚染が顕在化する前の未然防止が重要である。事業者における適正管理が求められ。NGOは市民への情報提供を行うとともに、協働での取り組みが必要。”

・鶴田康則(厚生労働省大臣官房審議官):“2000年12月に、国民の健康確保のための化学物質安全対策行政の課題をまとめ、情報公開とコミュニケーション、弱者対応、予防原則等15の課題を掲げた。NPOとの意見交換会を毎月行い、参加型手法に基づき化学物質安全対策に関する合意形成を試みている。”

・増田優(経済産業省製造産業局次長):“科学的方法論に基づくリスクコミュニケーションの時代に当たり、日本はレギュラトリーサイエンスが弱い。また問題指摘型でなく、問題解決提案ができる専門家を産業界にも労働界、学会そして市民の輪の中にも育てることが必要である。”

・原科幸彦(東京工業大学工学部教授):“意思決定過程の透明化が重要。環境アセスメントはコミュニケーションの一つの段階である。地域の環境資産を活かした活性化を図ることが重要となっている。”

・安井至(東京大学生産技術研究所教授):“化学物質については、社会全体の知識が不足している。市民はリスクに関する知識も必要である。これにはメディアの特性が影響している。メディアは問題指摘するのに有効であるが、解決する過程や解決後は報道しない。関係者相互のリスクコミュニケーションが重要になってくる。”

<参考資料>

1) 環境省:「「21世紀『環の国』づくり会議」報告書」(2001.7.10)

2) 環境省:「化学物質と環境円卓会議(第1回)・配布資料」(2002.12.3)

3) 「化学物質と環境円卓会議」ホームページ:

http://www.env.go.jp/chemi/entaku/index.html

3.「第11回地球環境大賞」

フジサンケイグループ・日本工業新聞社が財団法人自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の特別協力を得て行う「第11回地球環境大賞」の授賞式が、4月18日に明治記念館で行われた。

今回の受賞者は以下の通りである。

・ 大賞:松下電器産業

・ 経済産業大臣賞:ホンダ

・ 環境大臣賞:アサヒビール

・ 文部科学大臣賞:資生堂

・ 経団連会長賞:シャープ

・ フジサンケイグループ賞:花王

・ 日本工業新聞社賞:ダイキン工業、鈴幸製作所

・ 地球環境会議が選ぶ優秀企業賞:東京電力、コスモ石油

・ 優秀環境自治体賞:埼玉県、岡山県、神奈川県横須賀市

 当協議会正会員の花王㈱は、「積極投資でCO2排出量10%削減」を評価されてフジサンケイグループ賞を受賞されたが、その受賞理由は以下のように説明されている。

 “コージェネレーション(熱電供給)システムの導入拡大やLNG(液化天然ガス)への燃料転換を進めたことで、2000年度の二酸化炭素(CO2)の排出量を10%削減した。

 また商品設計の段階から3R(リデュース、リユース、リサイクル)を考慮。特に力を入れているリユース(再使用)対応の一環としてシャンプー・リンス、住居用洗剤などの詰め替え用製品を拡充している(2001年5月現在で56品目)。化学物質の管理では、PRTR対象物質の目標(1工場当たり排出量が年間1トン以下)をほぼ達成している。”


環境保護情報(2002年4月号)

1. 「地球白書」におけるオゾン層問題の指摘

 ワールドウオッチ研究所編集の「State of the World 2002」(日本語訳:「地球白書 2002-03」)がこのほど発表された。

 同書は、地球環境問題の年代記として著名であるが、その第1冊目が発行されたのは1983年であり、今回の新版は20冊目となる。

 今回のトピクスは、ヨハネスブルグ・サミット、地球温暖化、有害化学物質、人口問題等であり、特に来る8月26日~9月4日にヨハネスブルグで開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット、リオ+10)を冒頭で取り上げて、現在の地球環境問題を総括している。

 オゾン層保護対策に関しては、現在までの成果と今後の問題点について各所で触れている。以下にその概要を紹介する。

<写真>2002年版「地球白書」の原書の表紙

(1) 国際的取り組みの成果

落胆するような地球環境問題の動向が多い中で、成層圏オゾン層の破壊については、数年以内に回復の回復の兆しが見えそうな進展が得られている。今後一層排出量が減ると、数年の遅れで、成層圏オゾン濃度は上昇し、オゾンホールは徐々に小さくなるはずである。この経験は励みであると同時に警告でもある。すなわち、国際的協力(1980年代における議定書の素早い作成と署名)は可能であり、偉大な成果をもたらすということを示している。一方、地球環境への挑戦は、ほとんどの場合、オゾン層破壊よりも複雑である。オゾン層破壊は、限られた物質に依るもので、その物質の大部分には、手近に経済的に見合う代替品が存在していたのである。

(2) モントリオール議定書の柔軟性

 モントリオール議定書の成功した理由は、初期の目標にあるのではなく、最初の目的を産業界および政府が受け入れ可能であるよう柔軟性に富んでいたからであり、世界が共通の方向に進むことを可能にしたからである。

(3) 有害化学物質の削減

溶剤業界では、多くの関係者が、塩素系溶剤のための安全性のより高い代替品を開発し、実用化してきた。

 典型的な例では、CFCがモントリオール議定書により、1988年~1997年の間に、生産量を87%削減させた。CFCメーカーによる技術的な工夫と革新とが、この国際的な成功物語で大きな役割を果たしたのである。

 溶剤は(すべての化学物質の場合でいえることだが)、適正に使用し廃棄するために経費がかかる。したがって、安全性がより高い代替品にによってそれらを段階的に廃止することは、経済的にも意味がある。

(4) 環境条約の食い違い

 国際環境統治の現行制度が分裂しているため、異なる環境条約の諸条項が食い違っている。たとえば、モントリオール議定書の交渉は、オゾン層破壊と気候変動のあいだの複雑な相互関係にほとんど注意を払わなかった。CFCの代替品として開発されたHFCが温室効果ガスであることは、予想もつかなかった一事例である。

<参考文献>

1) The Worldwatch Institute (Christopher Flavin): 「 State of the World 2002 」 W.W.Norton & Company (2002)

2) 編著者:クリストファー・フレイヴィン、

日本語版監修:エコ・フォーラム21世紀

「地球白書 2002-03」(社)家の光協会

(2002.4)

2. 新しい「地球温暖化対策推進大綱」の決定

 先月号で紹介した「地球温暖化対策推進大綱改正案」は、その後検討が進み、3月19日に開催された地球温暖化対策推進本部において決定された。以下にその概要を政府関係資料より紹介する。

2.1 決定までの経緯

 わが国は、1990年10月に「地球温暖化防止行動計画」を「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において策定し、二酸化炭素の排出量を2000年以降1990年レベルで安定化することなどを目標にして、各種の対策を講じてきた。この目標値は、気候変動枠組条約においても言及されているが、2000年においてこれは達成されていないとみられる。

 一方、1997年12月の京都議定書の採択を受けて、1998年6月に、地球温暖化対策推進本部において、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策をとりまとめた「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。

 また「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)の制定、およびそれに基づき基本方針を策定することなどを通じて、わが国における温暖化防止対策推進の基本的な枠組みを構築するとともに、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号)の改正等の各種の国内対策を実施した。

 しかしながら、温室効果ガスの排出量は依然として増加しており、1999年度のわが国の温室効果ガスの排出量は、基準年(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素については1990年、HFC、PFC、SF6については1995年)比で約6.9%の増加となっている。また、現行の対策・施策だけでは、2010年の温室効果ガスの排出量は基準年比約7%程度増加になると予測され、京都議定書の約束を達成するためには、今後一層の対策を奨めていくことが必要となっている。

 わが国は、京都議定書締結について国会の承認が得られ次第、京都議定書を締結する方針であるが、エネルギー効率が既に世界最高水準にあるわが国にとって、京都議定書におけるわが国の6%の削減約束を達成していくことは、決して容易なことではなく国、地方公共団体、事業者および国民が一体となって、約束達成に挑戦していく必要がある。

 「地球温暖化対策推進大綱」の見直しは、こうした状況を踏まえ、国、地方公共団体、事業者、国民の総力を挙げた取り組みを強力に推し進めるため、京都議定書締結に先立ち、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策の全体像を示すとともに、温室効果ガスの種類その他の区分ごとに目標並びに対策およびその実施スケジュールを記述することとし、併せて個々の対策についてのわが国全体における導入目標量、排出削減見込み量および対策を推進するための施策を定めたものである。

2.2 基本的考え方

・環境と経済の両立:

 温暖化対策への取組が、経済活性化や雇用創出などにもつながるよう、技術革新や経済界の創意工夫を活かし、環境と経済の両立に資するような仕組みの整備・構築を図る。

・ステップ・バイ・ステップのアプローチ:

 節目節目(2004年,2007年)に対策の進捗状況について評価・見直しを行い、段階的に必要な対策を講じていく。

・各界各層が一体となった取組の推進:

 京都議定書の目標達成は決して容易ではなく、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠である。かかる観点から、引き続き事業者の自主的取組の推進を図るとともに、特に、民生・運輸部門の対策を強力に進める。

・地球温暖化対策の国際的連携の確保:

 米国や開発途上国を含む全ての国が参加する共通のルールが構築されるよう、引き続き最大限の努力を傾けていく。

2.3 新大綱のポイント

(1) わが国における京都議定書の約束(1990年比▲6%削減)を履行するための具体的裏付けのある対策の全体像を明らかにする。政府を挙げて100種類を越える個々の対策・施策のパッケージをとりまとめたもの。地球温暖化対策推進法改正案(今国会提出予定)に規定する京都議定書目標達成計画は、新大綱を基礎として策定することとしている。

(2) ▲6%削減約束については、当面、下記の①~⑤の目標により達成していく。その際、①~⑤の目標のうち、第1約束期間において、目標の達成が十分に見込まれる場合については、こうした見込みに甘んじることなく、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進めるものとする。なお、国としての京都議定書上の約束達成義務および京都メカニズムが国内対策に対して、補足的であるとする原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、京都メカニズムの活用について検討する。

(3) 地球温暖化対策推進本部は、2004年、2007年に本大綱の内容の評価・見直しを行う。この際、本大綱の前提とした各種経済フレーム等についても必要に応じて総合的に評価・見直しを行った上で、柔軟に対策・施策の見直しを行う。

(4) 本大綱については、これまでの関係審議会等におけるパブリックコメントや審議の結果等を踏まえつつ、「関係審議会合同会議」での意見聴取を踏まえ、その策定作業を行ったところであるが、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、本大綱を基礎としつつ、さらに国民各界各層の意見を幅広く聴くものとする。

 

2.4 温室効果ガスその他区分ごとの対策(例)

添付資料を参照。

<参考資料>

・ 経済産業省:「産業構造審議会環境部会第10回地球環境小委員会・配付資料」(2002.4.3)


環境保護情報(2002年3月号)

    

1. 京都議定書批准に向けた日本政府の動き

地球温暖化防止の基本的な取り決めは、1992年に採択された気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書(1997年採択)で定められた。現在の世界的な議論の中心は、京都議定書の早期批准によって地球温暖化対策を具体的な実行に移すことである。

 2000年3月に、米国は京都議定書から離脱することを表明し、その後数カ国が京都議定書に批判的な意見を発表しているが、主要先進国は2002年10月の第8回気候変動枠組条約締約国会議(COP8)までに批准することを目標に諸般の準備を進めている。日本政府は、現在開催中の第154次通常国会で京都議定書の批准を行うべく各種施策を準備中であり、3月15日時点での状況について紹介する。

1.1 COP6以降の国内準備

 京都議定書で規定された温暖化ガスの削減目標を達成するための詳細な制度やルールを決める会議として、第6回気候変動枠組条約締約国会議(COP6)が、世界の注目を浴びながら2000年11月にハーグ(オランダ)で開催された。しかし同会議では、基本的な取り決めについて最終合意が得られずに中断され、再開会合に結論が委ねられた。

 同会議を受けたCOP6再開会合は、2001年7月にボン(ドイツ)で開催された。同会議で、京都議定書の詳細ルール等に関する政治的合意が得られたが、京都メカニズム、遵守問題については合意に至らなかった。

 第7回気候変動枠組条約締約国会議(C0P7)が2001年10月28日~11月10日にマラケシュ(モロッコ)で開催され、“マラケシュ合意”が採択された。これにより京都議定書の実施に係わるルールが決定したことになり、同議定書の発効を待つまでになった。

1.2 国内対応の経緯

日本政府は、COP3における京都議定書締結直後、1997年12月に、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部を設置し、同本部は翌年6月に、「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。

 また、1998年10月には「地球温暖化対策推進法」が成立し、1999年4月には「地球温暖化対策に関する基本方針」が閣議決定された。

 日本政府は、これを受けて、地球温暖化対策推進本部で京都議定書の目標を達成するために、現行の「地球温暖化対策推進大綱」の見直しを開始した。次いで、地球温暖化対策推進法で京都議定書目標達成計画を策定し、日本の目標である6%削減を裏付ける対策を示すことになる。

1.3 各種審議会での討議

 京都議定書の締結に向けた諸問題を討議するための会議が、経済産業省および環境省で開始された。

 環境大臣の諮問機関である中央環境審議会では、地球環境部会が、同部会の下部機構として「国内制度小委員会」を2001年3月に設置し国内制度のあり方等の討議を開始した。また、同時期に削減目標達成のための技術の再検討、各種対策の削減ポテンシャル等の分析を行う「目標達成小委員会」も発足した。

 経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会では、京都議定書の目標達成を目的として、現行の排出抑制対策の評価、実効的かつ効果的な対策のあり方、産業界の自主行動計画の見直しを検討するために、地球環境小委員会を2001年3月に設置した。

 地球温暖化対策の一環であるHFC、PFC、SF6の3ガスの利用分野における排出抑制については、産業構造審議会化学・バイオ部会の下部機構として「地球温暖化防止対策小委員会」を2001年3月に設置し検討を開始した。

1.4 「地球温暖化対策推進大綱」の改正

 「地球温暖化対策推進大綱」(図1)は、京都議定書の達成計画の基礎となると位置づけられており、京都議定書批准を担保するために、後に述べる「地球温暖化対策の推進に関する法律」とともに、現在その見直しが進められている。

 新大綱は、削減目標の達成を保障するための「改正地球温暖化対策推進法」に明記される“京都議定書目標達成計画”の下敷きになるものである。新大綱をこの計画に作り替える作業は、推進法の施行を受けて開始され、年内に完成する予定である。

 大綱の改正内容は、3月13日に開催された地球温暖化対策関係審議会合同会議において、政府から紹介されたが、その要点は以下の通り。

(1) ガス別排出量

・ エネルギー起源のCO2排出量:2008年~2012年(第1約束期間)の年平均値で90年水準に抑える。

・ HFC、PFC、SF6排出量:第1約束期間に95年比2%増。

・ 非エネルギー起源のCO2、メタン排出量:90年比0.5%減。

(2) 対策手法別の削減量

・ 革新的技術開発、国民の温暖化防止活動:2%削減

・ 森林吸収:3.9%削減

・ 京都メカニズムの活用:1.6%削減

(3) 排出源別削減量

・ 産業部門:7%削減

・ 家庭、オフィス等民生部門:2%削減

・ 運輸部門:17%増加

(4) 目標達成のための具体策

(約100項目の一例)

・ 省エネ性能の高い製品への代替:白熱灯から電球型蛍光灯へ、省エネ型電子レンジ

・ 脱温暖化型ライフスタイルの実践:風呂の残り湯の洗濯への利用、節水シャワー、暖房・照明の2割節約、同じ部屋での家族団らん、サマータイムの導入

・ 職場での取り組み:昼休みの消灯、むだなコピーの節約

(5) 国民的取組の組織化

・ 「環の国くらし会議」を通じたライフスタイル変革

・ 「温暖化対策地域協議会」による商工会、自治体、市民、NPOが協力する取組推進

1.5 「地球温暖化対策推法」の改正

「地球温暖化対策の推進に関する法律」は、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るために、国、地方公共団体、事業者および国民それぞれの責務と取組等を定めたもので、1998年10月に成立し、温室効果ガスの排出量の算定法法等を定めた施行令とともに1999年4月8日に全面施行された。

 また、その翌日には本法律に基づき、各主体が講ずべき措置に関する基本的事項等を定めた「地球温暖化対策に関する基本方針」が閣議決定された。

 現在、京都議定書の批准・実施に向けて、同法の改正の準備が進められている。法律の目的には、“議定書の的確かつ円滑な実施を確保する”という語句が追加され、温室効果ガスを90年比6%削減するための目標達成計画の策定を義務づける予定である(「京都議定書目標達成計画」)。

1.6 「京都議定書目標達成計画」

 温室効果ガスそれぞれの排出目標や対策の全体像を具体的に示すよう、“京都議定書目標達成計画”の策定が、地球温暖化対策推進法の改正で、同法によって義務づけられる。

 現在排出量の増加が目立っているのは、民生部門であって、その地域単位の対策が重視されているのが特徴の一つである。そのために、家庭、オフィス、店舗などを対象とした“地球温暖化対策診断”、地域の住民や、企業、行政の協力組織である“地球温暖化対策地域協議会”の設置などが規定される予定である。

1.7 の議論の推移

 地球温暖化ガスとして規制の対象となっている物質は、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6の6種類のガスであり、その中のHFC、PFC、SF6の3ガスは、日本政府の地球温暖化対策推進大綱では“HFC、PFC、SF6の3ガスの排出量については、基準年(1990年)に対して、2008年から2012年の目標期間における排出量を+2%程度の影響に止める(すなわち、基準時の48百万GWPトンに対して73百万GWPトン)”とされていた(表)。

 産業界では、3ガスの使用に対する自主行動計画を実施中であり、経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会で毎年フォローアップが行われている。

 今回の地球温暖化対策法の改正にあたって、産業構造審議会では、温室効果ガスに共通する基本的考え方として、①過度な負担の回避、②負担の公平性、③経済合理性と柔軟性の確保が確認された。

 新大綱においては、現行大綱の目標値が踏襲されるようである。

2.米国の京都議定書代案

米政府はさる2月14日に、「温室効果ガス削減計画」を発表した。目標としては、“温室効果ガスの排出量を、2002年現在の国内総生産(GDP)100万ドルあたり183トンから、10年後の2012年に151トンと18%削減する”というものである。

 その具体的な内容は、経済成長率を年率3%で計算すると、2012年には排出総量が現在より12%も増え、1990年比では30%近く増加することになるといわれている。

 米国の発表に対して、すでにその京都議定書よりも後退した姿勢に批判の声もあがっており、C0P8に向かって議論が続くと思われる。

3.国際協力事業団の集団研修「オゾン層保護

対策・代替技術セミナー」に協力

 国際協力事業団(JICA)の集団研修「オゾン層保護対策・代替技術セミナー」は、オゾン層保護対策産業協議会と(財)日本環境衛生センターが事務局となって、1月22日から3月2日まで開催された。同セミナーは1990年度より開始されているが、今回は12回目となり、開発途上国15ヵ国から16名が参加した。

洗浄分野の研修には日本産業洗浄協議会が講義と工場見学の実施に全面的に協力した。日本において(特に中小企業における)洗浄分野のオゾン層破壊物質全廃をいかに組織的に達成したかについては、小田切事務局長が講義を行った。産業洗浄に係わる企業訪問は、2月6日に、産洗協会員である荒川化学工業㈱中央研究所(大阪市鶴見区鶴見)および㈱三社電機製作所(大阪市東淀川区西淡路)で行われた(その詳細報告は次号に紹介の予定)。

 

4.ノーベル賞100周年記念国際フォーラムでローランド博士が講演

ノーベル賞が1901年に創設されて100周年を迎えたことを記念して、日本学術会議は、このほど「ノーベル賞100周年記念国際フォーラム」を開催した。3月16日に東京大学安田講堂で行われたフォーラムでは、1995年ノーベル化学賞受賞者のF・シャーウッド・ローランド博士が、“成層圏オゾン層の破壊、温室効果およびグローバルスモッグ”と題する講演を行った。以下はその要旨である。

(1)地球大気の変動

21世紀が始まり、地球の大気の化学組成については、いくつかの重大な変動がかなり進行中であり、その変化は今後数十年の間に著しくなると考えられる。その多くは以下のように3項目に分類される:①成層圏オゾン層の破壊、②地球温暖化、③特に都市環境における地表の汚染レベルの上昇。

これらはいずれも、地球全住民の活動によって大気中に放出された付加的なガスに起因している。

(2)人類起源ガスの放出

相当量の炭素が水素化されたメタン、酸化された二酸化炭素の形で存在することは、大気が非常に不安定であることを示している。これら二つの分子は、生物過程と密接に関わっており、何百万年も大気中に存在してきた。しかし、過去2世紀の間に、石炭、ガス、石油の燃焼が、二酸化炭素濃度を著しく増大させた。同時に、米の生産、家畜の飼育などの農業活動がメタン濃度を2倍以上も引き上げることとなった。また大気は、生物過程によって大気中の窒素循環が支配されていることを示している。

(3)合成された分子

20世紀がそれまでの世紀と異なる点は、新しく合成された化合物が数多く大気中に加えられたことである。大気中の有機ハロゲンのほとんどは、合成された分子であり、それらはクロロフルオロカーボン(例えば、CCl3F、CCl2F2)、ハロン(例えば、CBrF3)、パーフルオロ化合物(例えば、CF4)、溶剤(例えば、CCl4、CH3FCCl3)である。完全にハロゲン化された化合物は、多くは化学的に不活性であり、大気中から化学的に除去することが難しい。大気中の寿命が長いため、成層圏まで運ばれ、そこで太陽の紫外線に照射されて分解し、非常に活性のある原子状態の塩素および臭素を放出するために、地球のオゾン層が破壊されるのである。

(4)温室効果と地球温暖化

3つ以上の原子から構成される分子は、地上からの赤外線放射を吸収するため、温室効果ガスと呼ばれる。温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、水、オゾン、二酸化窒素、CFCなどが含まれ、2世紀前にすでに32℃の自然発生的な温室効果を生んでいたことが知られている。21世紀に考えなければいけないことは、これらのガスの大気中濃度が増加して、地上からの赤外線放射がさらに強く吸収され、自然状態よりも気温が数度上昇するような温室効果が生まれることである。

(5)成層圏オゾン層の破壊

成層圏のオゾンが失われると、地表は、より一層破壊的な高エネルギーをもつ紫外線に曝される。成層圏オゾン層の大規模な破壊の原因は、ClOXによる触媒連鎖反応であり、成層圏にあるただ一個の塩素原子が100,000個のオゾン分子を消失させる。モントリオール議定書により、先進国では、CFCは1996年より、ハロンは1994年より製造禁止となった。現在、下層大気圏中の有機塩素濃度は減少しつつあることが実際に観測され、議定書が非常に有効であることが証明された。成層圏における減少は6年から8年遅れるとみられる。

(6)地表付近のオゾン

オゾンの生成には、一酸化炭素や反応性炭化水素などの可燃性炭素化合物、酸化窒素および太陽の紫外線照射が必要である。オゾン生成のメカニズムの解明が進む一方で、世界人口の爆発的な増加が、世界中の都市における深刻なオゾンスモッグ問題を引き起こしている。これらの原因物質は、発生源の都市内部への影響だけではなく、何千マイルの遠方にまで広がり、地域的なオゾン問題を引き起こしている。さらに、農業廃棄物や森林の焼却(バイオマス焼却)も下層大気中にオゾンを生成する。このような対流圏中のオゾン生成の増加が温室効果ガスの追加となっている。

(7)気候の重要性

温室効果ガスが地球規模で増加し続けると、2100年までに地球の温度は1.5~5.8℃上昇するとみられている。しかし温度の上昇は均一に起こるわけではなく、北極圏地域でより大きな温度変化が起こると考えられている。このような変化を伴う細部の気候構造は、現在の状況を様々に変動させるであろう。温室効果ガスの排出管理は、今後50年の中心的な環境問題なのである。

<参考資料>

・日本学術会議:「ノーベル賞100周年記念国際フォーラム・アブストラクト集」(2002.3)

5.PRTR啓発普及のポスター

PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に基づき、PRTR制度の対象となる事業者は、来る4月から対象化学物質の排出量等を把握し、第1回目の届出を行うこととなった。

 経済産業省および環境省は、このほど本制度の啓発普及を狙ったポスターを作成した。

日本産業洗浄協議会では、同ポスターを会員に幅広く配付し、PRTR制度の普及に努めている。


環境保護情報(2002年2月号)

1. 日本産業洗浄協議会平成14年度賀詞交歓会における経済産業省掛江オゾン層保護等推進室長のご挨拶

 さる1月18日に日本産業洗浄協議会平成14年度賀詞交歓会が、メルパルク東京(東京都芝公園)で開催され、約百数十名が参加した。

 来賓を代表して経済産業省の掛江浩一郎オゾン層保護等推進室長がご挨拶されました。

『皆様あけましておめでとうございます。

 ただ今、ご紹介にあづかりました経済産業省オゾン層保護等推進室の掛江でございます。

 日本産業洗浄協議会の皆様におかれましては、日頃から経済産業行政、なかんずく化学物質の管理という面から非常にお世話になっておりますことをこの場をお借りしまして御礼申し上げます。

 昨年を化学物質管理の面から振り返ってみますと、非常に大きな動きがございました。1月からMSDS制度が開始されましたし、4月からPRTR制度、6月からはオゾン層保護の関係でフロン回収破壊法が成立しました。また、秋には地球温暖化の関係で、COP7が11月に開催され、京都議定書に関係する京都メカニズムの詳細が決まり、いよいよ京都議定書の批准に向けて動き出すということで、非常に多忙な1年でした。

 このような状況を受けて、本年は、京都議定書の批准に備えての作業がいよいよ通常国会に向けて始まり、「地球温暖化防止大綱」の見直し、京都議定書の批准をどう担保するかという担保法案の作成が現在検討されています。

 同じく通常国会では、オゾン層保護の関係で、モントリオール議定書の1997年、1999年の改正の批准を国会にかけるという作業もあります。また4月には、フロン回収破壊法での業務用の冷凍空調に関する回収の義務化が始まり、PRTR法の関係では、届出の制度がいよいよ開始され、さらに10月には、カーエアコンの関係のフロン回収破壊法の制度が開始されます。

 このように、化学物質が関係する環境問題はますますクローズアップされておりますが、日本産業洗浄協議会は、まさにこれらの問題に取り組んでおられますので、その役割の重要性はますます高まるものと考えます。

 まず第一に、従来から大きな成果を挙げておられる特定フロンの代替品への転換につきましては、HCFC(141b)の2010年の全廃に向けて最後の詰めをお願いしたいところです。

 第二に、温暖化の関係では、HFC、PFC、SF6という温室効果ガスの排出抑制対策について取り組んでいただきたいし、また第三にPRTRやMSDSに関する制度の円滑な実施にもお力添え願いたいところであります。

 第四に、いよいよ途上国がオゾン層破壊物質の段階的削減を開始することになりましたので、これまで協議会の皆様が、大きな成果を挙げてこられました経験を踏まえて、途上国支援も進めて頂きたいと思います。

 先ほど、京都議定書の批准の動きについて触れましたように、その批准の担保措置について現在政府部内で検討が行われていますが、産業界の自主的な取り組みを中心とする方向で固まりつつあります。中には、もっと厳しい規制措置を講じるべしとか課税すべしという意見もありますが、それにも拘わらず、こういう自主的取り組みが認められる方向にあるのは、皆様方産業界が今まで環境問題に地道に取り組んでこられた努力が実績として評価されたことであろうと思います。したがいまして、皆様が行っている環境保全のための業界活動をいかに世の中に知らしめて行くかは重要なことです。

 そのような観点から考えますと貴協議会のホームページは、模範になるものと評価申し上げます。

 産業洗浄の業界は、日本の製造業の土台として必要不可欠でありますところ。日本産業洗浄協議会の皆様におかれては昨今のIT不況、製造業の空洞化の中で、ぜひ元気を出していただきたく、会員の皆様のますますのご繁栄をお祈り申し上げ、挨拶とさせていただきます。』

2. 2001年の南極オゾンホール

 気象庁は、昨年12月27日に、2001年の南極オゾンホールが12月20日に消滅したが、これは1999年に次いで過去2番目に遅い消滅だったことを発表した。また、オゾンホールのピーク時の規模は、過去最大だった2000年よりも小さかったが、それに匹敵するもので、その面積と破壊量では、過去第3位のものであるとのことであった。

 以下は、気象庁の発表の概要である。

2.1 第42次南極地域観測隊の観測結果

第42次南極地域観測隊(本吉洋一隊長)から報告されたオゾン観測の結果によれば、昭和基地上空でのオゾン全量は、8月下旬にオゾンホールの目安である220m atm-cmを下回った後、少ない値を継続して観測し、9月30日には今年の最低値134m atm-cm(過去3位。これまでの最低値は1995年の128m atm-cm)を記録した。(図1)。また、オゾン分圧の高度分布を見ると、9月中旬以降、高度14~21kmで著しく低い状態が続いていた(図2)。

2.2 米国航空宇宙局の資料の解析

米国航空宇宙局(NASA)から入手した人工衛星による観測資料を解析したところ、オゾンホールは8月下旬に急速に拡大し、9月17日に今年最大の面積(2,647万km2、過去3位)を記録した(図3)。その後も2,300万~2,500万 km2で推移し、10月中旬以降次第に縮小に向かったが、10、11月の月平均のオゾンホールの面積は過去最大を記録した。11月中旬以降、さらに急激に縮小し、12月20日に今年のオゾンホールは消滅した。これは、これまで最も遅くまで続いた1999年12月27日に次いで過去2番目に遅い消滅だった(図4、但し、衛星データが得られなかった1998年を除く)。

<参考資料>

・気象庁:「(南極のオゾンホールに関する速報 2001-3)2001年のオゾンホール、過去2番目に遅い消滅、規模は第3位」(2001.12.27)

 


図1 南極昭和基地におけるオゾン全量の変化

細線で1961年の観測開始以降の最大値及び最小値を示し、2001年の値を点で示してある。オゾンホールの目安である220m atm-cmを点線で示す。

 


図2 南極昭和基地におけるオゾンの高度分布

昭和基地におけるオゾンゾンデ観測によって得られたオゾンの高度分布を示す。破線はオゾンホールが現れるようになる以前(1968~1980年)の9月の平均オゾン高度分布、実線は2001年9月29日の観測結果である。高度14km~21km付近のオゾンはほぼ完全に破壊されている。

 


図3 オゾンホールの面積の推移

オゾンホールの面積の日変化(左図)と面積の最大値の経年変化(右図)を示す。左図の細線は1979~2000年までの極地、赤線は2001年の値を示す。2001年のオゾンホールの最大面積は2,647万km2(9月17日、過去3位)であった。オゾンホールの面積と同様にオゾンホールの規模の指標である最低オゾン全量は99m atm-cm(9月26日、過去6位)、オゾン破壊量の最大値は8,841万トン(9月24日、過去3位)である。なお、南極大陸の面積は約1,400万km2である。NASA提供のT0MSデータを基に気象庁が作成。

 


図4 オゾンホール消滅日の推移

1979年から2001年について220m atm-cm以下の領域が見られなくなった日を示す。NASA提供のT0MSデータ等を基に気象庁が作成。なお1998年は12月16日以降、衛星のデータが得られなかったため、正確な期日は不明である。

 


環境保護情報(2002年1月分)

1. 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)

 国連環境開発会議(地球サミット)は、前回、1992年にリオデジャネイロで開催され、持続可能な開発を実現するための行動計画である“アジェンダ21”が採択された。本年はそれから10年経過した節目の年であり、アジェンダ21策定後の成果やその後の新しい課題を議論するために、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルク・サミット)が開催される。「リオ+10」とも呼ばれる同会議について、環境省の資料を中心として以下にその概要を紹介する。

1.1 開催計画

・期日:2002年8月26日~9月4日

    (首脳級会合は9月2日~4日)

・場所:ヨハネスブルク(南アフリカ共和国)

1.2 地球サミット以降の経緯

・1992年6月:

 リオデジャネイロ(ブラジル)において国連環境開発会議(UNCED、いわゆる「地球サミット」)を開催。環境分野における国際的取り組みの指針となる「アジェンダ21」を採択。

・1997年6月:

 アジェンダ21の実施状況を点検、評価することを目的として、国連環境開発特別総会(UNGASS)を開催。“アジェンダ21の実施状況は必ずしも十分ではない”とされ、“2002年に国連総会による包括的レビュー(リオ+10)でより大きな目立った進展を示すべし”との決意表明を採択。

・2000年12月:

 国連総会において「持続可能な開発に関する世界首脳会議」を2002年9月に南アフリカ共和国で開催することを決定。

1.3 今回のサミットの目標

 今回のサミットは、協議の“環境保全”だけではなく、“途上国の持続可能な開発のあり方”を議論する場としての色彩が強い。

 このような中で、環境保全・自然資源管理は“持続可能な開発”のための必要不可欠な基盤であり、貧困問題解決のためには環境劣化との悪循環を解消する必要があること、さらには、環境政策を重視したうえで経済・社会政策との統合を目指すことが極めて重要であることを世界的に共有することが大きな目標である。

1.4 同サミットの準備のプロセス

 本サミットの準備プロセスは、地域からの積み上げを重視していることが特徴である。アジア太平洋地域にあっては、2001年11月27日~29日に準備会合がプノンペン(カンボディア)で開催され、地域綱領を取りまとめた。

・2002年1月28日~2月8日:

 第2回サミット準備委員会(ニューヨーク)→各地域・国際機関・主要グループからのインプットを基に「アジェンダ21」の履行状況を検討。・・2002年3月25日~4月5日:

 第3回サミット準備委員会(ニューヨーク)→「アジェンダ21」の履行を更に進めるための提言の作成やサミットの議題案・主要テーマを提案。

・2002年5月27日~6月7日:

 第4回サミット準備委員会(インドネシア)→閣僚級会合が6月5日~7日に開かれ、サミットで採択される政治的文書を準備。

・2002年8月26日~9月4日:

 ヨハネスブルク・サミット(ヨハネスブルク、南アフリカ共和国)→閣僚級会合は9月2日~4日。

2. JICOPのHFC、PFCに関する意見書(第2報)

 環境省の中央環境審議会地球環境部会は、京都議定書の締結に向けた国内制度のあり方について討議するために、同部会の下部機構として「国内制度小委員会」を2001年3月に設置し、討議を重ねてきた。

 同小委員会の報告書は、12月14日に開催された第13回会合においてまとめられ、12月20日に開催された中央環境審議会地球環境部会第4回会合に提出された。

 この「京都議定書の締結に向けた国内制度に関する答申案」は、パブリックコメント(国民の意見募集)(2001年12月20日~2002年1月9日)と公聴会(2002年1月16日)を経て完成される予定である。

 オゾン層保護対策産業協議会(JICOP)は、「国内制度に関する答申案」における、温室効果ガス排出量の事業者による把握・公表と自主取組の第三者による評価の仕組みの提案に対して、意見書を中央環境審議会地球環境部会国内制度小委員会に提出した。以下はその全文である。(なお、10月12日に同地球環境部会に提出した意見書「HFC等3ガスについての排出量の見通しについて」は、本月報2001年11月号に紹介)。

中環審国内制度小委員会「京都議定書に向けた国内制度に関する中間答申の項目・要素(案)」に対する意見

 12月14日の中環審国内制度小委員会の中間とりまとめにおいて、温室効果ガスの排出量の事業者による把握・公表、自主取組の第三者評価の仕組みが提案されている。

エネルギー起源のCO2排出量については、既に、事業者に対して省エネルギー法による国への報告の義務付けや事業所・機器に対する規制的措置が課せられ、その上でさらに業界毎の自主的な取組みによる削減努力も行われている。従って、中環審の提案はこうした現状に対する二重規制に他ならず、産業界としては到底受け入れられないという主張がなされていると承知している。

 一方、HFC等3ガスについては、省エネルギー法によって排出削減が達成されるCO2とは異なり、対象となるガスの種類が多い事、使われ方も多岐にわたる事などの特有の事情が有るため、一律の規制的手法では排出抑制が困難であるので、有効な方法としてこれらのガスを取扱っている業界毎の、木目細かい自主的な取組による削減努力が行われている。そして、実際にこれまでの自主的な取組が十分な効果をあげてきていることは産業構造審議会に報告されている。

 これまで、HFC等3ガスの排出抑制に最大限の努力を払ってきた当協議会としては、個別企業ベースでのHFC等3ガス排出量の報告・公表制度について、制度の公平性、妥当性、実効性、現実性等の面で導入は不適切または著しく困難であると考える。

 下記において、その具体的理由を示すとともに、より実効性が高く現実的に実施が可能な対策を掲げ、当協議会に属する関係業界が一丸となってこれらの対策の推進に向け最大限の努力を払い、可能な限りの排出抑制対策を講じていく決意であるので、是非ご理解の上、ご配慮を賜りたい。

(1) 産業界のHFC等3ガスに関する自主行動計画は成果を上げている

 中環審の「地球温暖化対策のための基盤整備」(11月15日国内制度小委資料2-1)でも、「各主体の取組の進捗状況のフォローアップに基づき、必要な施策を打ち出していく」としているが、HFC等3ガスについては、産業界の自主行動計画等の既往施策により、大綱目標の達成に向け、現在のところ順調な成果をあげつつあり、自主行動計画は正に対策としての有効な機能を有するものと位置づけられる。このような状況に鑑みれば、負担の公平性を逸脱して産業界に新たな規制等を課するよりも、自主行動計画等に基づく既往施策の実施を一層着実に進めることが適切である。

 同時に、産業界としても、代替物質・代替技術の開発状況等を踏まえ、可能な限り、より高い目標を設定することを目指して自主行動計画の充実のための検討を行っていく所存である。

(2) 産構審化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会との整合性

 3ガスの自主行動計画については、学識経験者や消費者等の委員も参加した産業構造審議会で毎年フォローアップを行っており、透明性や客観性は十分確保されている。

 当協議会としても、今後、業界毎の照会窓口の設置、有識者によるデータの精査、排出量の推計手順の公開等、透明性・客観性を向上させるための様々な施策を検討してまいる所存である。こうした取組に加え、中環審資料にあるような施策を実施することについては、その必要性を見いだすことはできない。

 また、産業界への過大な管理コスト面での負担を避けるために、地方公共団体の取組との整合性を十分にとった制度として欲しい。

(3) 製品使用段階の排出量把握は困難。法に基づく回収破壊の徹底が重要

 HFC等3ガスは、製造段階より使用・廃棄段階に多く排出される場合が多い。中環審は「製造した製品の使用段階の排出量も把握する」こととしているが、製品の使用段階での排出源はほぼ全ての事業者・国民にわたり、これらに報告義務を課すことは非現実的である。また、販売先における整備や廃棄段階での漏洩を防ぐ手段を持たないので、機器メーカー・ガスメーカーは責任を負えない。さらに、HFCが使われた断熱材のビルのオーナーのように、排出主体が排出量を把握することが不可能な場合も少なくない。

 以上のような実態を踏まえ、当協議会としては、製品使用・廃棄段階の対策として、フロン回収破壊法・家電リサイクル法の周知・遵守を徹底し、これら法令上の義務に基づき回収・破壊の徹底と回収量の着実な記録等を進めることとする。

(4) 代替ガス・代替技術のない分野では公表は効果がない。研究開発が重要。

 冷媒・発泡の主要分野のHFC、半導体のPFC、電力のSF6などは、代替物質・技術が確立しておらず、そのような分野で個別排出量を公表させられても、そのことが使用抑制を後押しすることは期待できない(単位排出量の削減はあり得るが、既にほぼ限界まで実施済み)。

 当協議会としては、このような状況においては、公表制度の意義はなく、代替ガス・代替技術の研究開発が何よりも先決であると認識しており、政府の支援措置を活用しつつ、積極的に研究開発を進めてまいる所存である。

(5) 短絡的な批判を招くおそれ

 例えば、ガス製造段階についてのみ考えても、企業努力により単位排出量を縮減しても、需要が拡大すれば、総排出量は増加せざるを得ず、また、大口向けのタンクローリ出荷が多い事業所と比べ、小口向けのボンベ詰め出荷が多い事業所は単位排出量が多くならざるを得ないが、事業所別に排出量の公表が義務づけられると、こうした事情が斟酌されず、短絡的な批判を招くおそれがある。

 HFC等3ガスは、省エネルギーや火災防止などの安全対策として多用され、間接的なCO2排出抑制に多大な貢献をしている。従って、HFC等3ガス単独の排出量公表は、別の意味で誤解を生じ、適正な競争を阻害して経済の活力に悪影響をもたらすものと考えられる。

(6) 大口事業者を対象とした報告・公表制度は無意味

 いわゆる裾切りにより、大口事業者に限定した排出量把握の仕組みを構築するとすると、ガス製造時、冷蔵庫・空調機製造時、半導体製造時、電力絶縁機器使用時等に対象が限定されることとなるが、これらは自主行動計画で大きな成果をあげている分野であり、業界別に対策をとっているため(半導体は世界的に共通対策)、個別事業者別の報告・公表制度を設けてもさらなる抑制につながることは期待できない。また、これら排出量の増加が見込まれる冷媒や発泡分野での使用・廃棄段階がカバーされず、歪な制度になることは避けられない。

3. 主要塩素系溶剤統計

当協議会の団体会員であるクロロカーボン衛生協会のご好意により、主要塩素系溶剤の統計資料をご提供いただいたので以下にご紹介する。

 同資料は、4種類の塩素系溶剤(1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化メチレン)について、1981から2000年までは年間、2001年は月間のデータとなっている。

(注)

・生産量等: 経済産業省経済産業政策局調査統計部編、化学工業統計月報・年報

・消費: 自工場で他の製品の原材料用、加工用、燃料用として消費されたもの。

・販売: 販売を目的として消費者、販売業者等に出荷したもの。

・その他: ①同一企業内他工場へ出荷したもの、②委託生産の原材料として出荷したもの、③受託生産品を生産業者である委託者に出荷したもの、④自家使用したもの。

・輸出入量: 大蔵省貿易統計



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